今後成長予想の米中堅企業向け投融資ビジネスに着目 三井住友アセットマネジメント「米国ハイ・インカムBDCファンド(毎月決算型)/(年1回決算型)」

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米にも事例のない先駆的ファンド

シュリー氏

シュリー氏

運用担当のアドバイザリー・リサーチ・インク
マネージングディレクター シュリー氏に聞く

三井住友アセットマネジメントは29日、「米国ハイ・インカムBDCファンド(毎月決算型)/(年1回決算型)」を設定する。投資対象となる米国の「BDC」とは何か。金融株の一種だが、一般にはまだあまり知られていない存在だ。BDCのみを組み入れた投資信託は日本初どころか、米ミューチュアルファンドでも事例がなく、非常に先駆的なファンドだという。今回のBDCファンドの設定は、今後のBDCの成長を見込んだ、先取りの動きともいえる。今後マーケット規模の拡大が予想されるBDCの現状や今後の展望、この初物ファンドの魅力などについて、同ファンドの実質的な運用会社である米国のアドバイザリー・リサーチ・インク(拠点はシカゴ)のマネージングディレクターのシュリー氏に聞いた。

■BDCとは

BDCは、ビジネス・ディベロップメント・カンパニーの略で、銀行のような業務を行っている。銀行との違いは、主に未上場の中堅企業への融資や一部投資を行っている点だ。上場している場合もあるが、上場企業でも時価総額が2.5億ドル(約250億円)以下の企業で、大手の銀行があまりカバーしていない中堅企業に対する投融資を主なビジネスとしている。また、預金業務ができないため、株式発行と借り入れでファイナンスした資金をもとに中堅企業へ投融資を行っているのがBDCだ。上場している金融株の一種と考えていただきたい。BDCの仕組みについては、米国政府が10年以上前に中堅企業をより厚くサポートするために作ったものだ。銀行のような業務をしているが、政府にサポートされているため、銀行との主な違いが2つある。1つ目は、REIT(不動産投資信託)と似ており、多くのBDCが収益の90%以上を投資家に配当することにより法人税がほぼ免除されているという仕組みが適用されている点。2つ目は、BDCは株式発行と借り入れで資金調達を行うが、資本と負債の比率が1対1以下になるようにレバレッジの規制が厳しく敷かれている点だ。この2つの特徴が米国のほかの金融機関と比べると大きな違いとなっており、リスクが非常に少なくなるように設計されている。BDCの資本と負債の比率上限は1対1だが、米国の銀行セクターの同比率は平均すると1対8、REITは1対5となっており、BDCの資本と負債の比率がいかに低くコントロールされているか、金融危機などで影響がないように設計されているかお分かりになると思う。

■米BDCマーケットの現状と展望

現在、上場しているBDCは47社、上場していないBDCは24社ある。上場数は確実に伸びており、今後も伸びていくことが期待されている。その背景には、金融危機がトリガーとなった規制強化がBDCの成長を支えているという構造がある。リーマン・ショックを経て、グローバルに大手の金融機関に対するさまざまな規制が強化されている。バーゼルⅢや、ドッド・フランク法に始まる規制だが、こうした規制をきっかけに銀行はローンポートフォリオのさまざまな見直しをしており、バランスシート上のリスクを減らしている。中堅企業に対して、これまで行っていたローンの貸し控えのようなことも行っている。そこにBDCが参入できる余地が生まれている。BDCは、銀行とは違った規制の下で管理されているため、現在、グローバルに行われているような銀行の規制は適用されない。むしろ、こうした銀行への規制がBDCの業務をよりサポートするような形となっており、金融危機以降、特にBDCのビジネスチャンスは広がっているといえる。

上場BDCで見ると、その投融資額は足元で400億ドル(約4兆円)と、規模はまだ小さいが、BDC全体として投融資額は今後は大きな勢いで伸びるのではないかと考えている。その理由は主に2つ。1つ目は、中堅企業が抱えているローンで、今後5年から7年の間に借り換えを行わなくてはならないものが4,500億ドル(約45兆円)に上っている点。このローンは一部BDCによるものもあるが、大半は銀行により行われているローンだ。現在強化されている規制によって、おそらく銀行は借り換えのすべてに応じることはできないと予想され、その資金の代わりの提供者となるのがBDCとなっていくと考えており、BDCにとっては非常に大きな投資機会となると考えている。2つ目はプライベートエクイティのマーケットを見てみると、現状、資金は集めてもまだ投資されていない、いわゆる待機資金が1,000億ドル(約10兆円)ある点。プライベートエクイティがこの1,000億ドルを投資する際に、BDCがそこにメザニン(注)、ローンを提供して投資を行うのがビジネスの慣例となっており、これもプライベートエクイティがまた投資をスタートする際にもBDCにとっても大きなチャンスとなっていくとみている。

また、上場BDCの数も今後大きく増えていくと考えている。非上場のBDC24社のうち3社は既に来年中に上場する準備に入っている。その3社とは、ゴールドマン・サックス、カーライル、パシフィック・テキサス・グループである。非常にネームバリューのある大きな金融機関がマーケットに参入してくるので、より注目度が高まり、投資の機会やユニバース自体も広がると考えている。

(注)メザニンは、ローンや普通社債による資金調達(デットファイナンス)と、株式による資金調達(エクイティファイナンス)の中間に位置するファイナンス手法で、劣後ローンやハイブリッド証券(劣後債、永久債、優先出資証券、優先株など)の発行による資金調達。

■BDCファンドの現状

アメリカでもBDCだけを投資対象にしたミューチュアルファンドはまだない。これまでは、ミューチュアルファンドの中でBDCをいくつか組み入れるケースや、日本でも米国高配当株ファンドの中にBDCを一部組み入れているケースにとどまる。しかし、来年の段階では大型の上場も予定されており、今後ともBDCの投資機会が広がるとともに、時価総額も拡大していくと考えられ、より流動性が高まってくれば、米国でもBDC特化のミューチュアルファンドの設定の動きが出てくると予想している。

■ファンドの銘柄選定の基準

銘柄の選定の基準は主に4点ある。1つ目は、BDCが融資する際のネットインタレストマージン(利差)をまずチェックする。2つ目は、当社は経営陣の考え方がどのようなものであるかを重視している立場から一つ一つBDCの経営陣にお会いして、今後のBDCの経営や金利の環境、ポートフォリオのリスクの考え方などを常にモニタリングしている。3つ目の重要な点として、割安な銘柄をポートフォリオに組み入れるように心掛けている。割安な判断の基準としているのはPBR(株価純資産倍率)で、好ましいのは1倍以下だが、1倍以下でなくとも、そのほか経営陣の考え方などを勘案してポートフォリオの組み入れを行っている。4つ目は、BDCの流動性を勘案して個別銘柄ベースで注意を払っている。

■BDCファンドの魅力

当ファンドは、3点の理由から安定的な運用が可能だと考えている。1つ目は、今後投融資機会が安定して拡大すると見込まれるため、BDCも安定して成長していくと予想される点だ。2つ目は、BDC自身、負債サイドでは株式による資金調達のほか、債券発行や銀行借り入れなども行っており、この資金調達は通常、低い固定金利で行われているという点。現状のように金利が低い局面でも魅力的な収益を上げられているが、仮に金利の上昇局面でも、変動金利でのローン(資金提供)が多いことから利差が取れるため、より収益の拡大につながる可能性を秘めている。3つ目としては、現在の配当利回りが8.5-9%程度ある点。非常に高い水準にあるが、今後も収益機会が拡大することで、もし株価が上昇しても、今後も現在の水準を保っていけるのではないかと考えている。このように3つの理由からBDCへの投資は当面、安定運用に近いとみている。

■モニタリングの重要性

もちろんリスクもある。1つ目は、BDCの投融資先である中堅企業のクオリティー。企業のクオリティーが異なることで、一つ一つモニタリングをしていくことが非常に重要だと考えている。2つ目は、BDCは金利によって収益が異なっていくため金利の動向をモニタリングしていかなければならない。3つ目は、BDCは成長機会が多くあることで、常に資金を必要としている状況にあり、公募増資などの実施の可能性がある。どのタイミングで、どのように調達していくのかということを運用者としてモニタリングしていかなければならないと考えている。

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