巨大経済圏誕生で投資機会 「TPP戦略株式ファンド」11月1日設定 三井住友アセットマネジメント

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人・物・金の動き活発化へ
交渉参加国の恩恵銘柄に投資

株式運用グループシニアファンドマネージャー、グローバル株式運用担当 大前俊輔氏
投信営業第一部担当部長 山崎年喜氏に聞く

大前俊輔氏 山崎年喜氏

大前俊輔氏                    山崎年喜氏

三井住友アセットマネジメントは11月1日、「TPP戦略株式ファンド」を設定し、運用開始する。TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)による恩恵享受の期待される、交渉参加国・参加表明国企業に投資する商品設計は業界初。今後の本格的な交渉進展をにらんだタイムリーな設定であるほか、対象国がいずれも「親日的」とみられ、ある種の“カントリーリスク”と無縁な点も1つのポイントと言えようか。同ファンドの主な特徴や魅力などについて、株式運用グループシニアファンドマネージャー、グローバル株式運用担当の大前俊輔氏(写真左)と投信営業第一部担当部長・山崎年喜氏(写真右)に話を聞いた。

――そもそも、なぜ「TPP」に着目したのか。

山崎 「TPP交渉参加国(現在12カ国、ほかに交渉参加表明国が3カ国)のGDP(国内総生産)を単純合計すれば、2012年で27兆6000億㌦。世界全体の38%という巨大な経済圏が生まれてくる。さらに、この地域で『関税撤廃』『投資規制緩和』『ビジネス拡大』が進むことによって、それぞれ人・物・金の動きが活発化。強い者がより強くなり、そこに投資機会も見いだされるわけだ」

――ファンドの投資対象となる具体的な国名は。

大前 「交渉参加国では、先進国(MSCIの区分に準拠)の日本、米国、カナダ、豪州、ニュージーランド、シンガポール。新興国のメキシコ、チリ、ペルー、マレーシア、ベトナム。交渉参加表明国では、新興国のタイ、フィリピン、台湾。計14カ国だ」

――交渉参加国にはブルネイも含まれるのでは。

大前 「ブルネイには現在、株式市場が存在しない。同国は、中東諸国に似た経済体制で、LPG(液化石油ガス)や原油を除くと国内産業基盤が乏しく、近い将来、取引所を設置する可能性も低そうだ」

――TPPによって大幅な関税引き下げが進めば、どのようなメリットが及ぶのか。

大前 「いろいろな経路がある。まず分かりやすいのは、輸入関税の撤廃や引き下げによる輸入原材料コストの低下だ。また、各国の輸出企業にとっても相手先の販売価格が低下することで、需要増、売上増につながりやすい。そして、もう1つ、加盟国への投資に対するメリットも想定されてくる。繊維製品輸出を例に挙げれば、ベトナムが米国に輸出する際、関税下げの恩恵が得られるというのであれば、(域外の)中国ではなく、ベトナムに投資しようとする企業が増えるだろう。ただし、これは直接投資の話で、ベトナム株には外国人への厳しい投資規制が設けられているが、こうした規制も今後の交渉で引き下げられる可能性はあるだろう」

山崎 「一般に『TPP』というと、関税撤廃の部分ばかりフォーカスされがちだが、もちろんそれだけではない」

――というと…。TPPによって何がどう変わるのか。

山崎 「貿易や投資など21分野でのルール作りが行われている。TPPは各種の障壁を引き下げて国際分業を推進していくためのもの。強い産業、強い企業がより強くなっていく」

大前 「当ファンドでは、メリットを受けるとみられる各国の産業や企業を選別し、投資していく。もちろん、競争にさらされてデメリットを受ける産業、企業も少なくはないが、こうした流れは『いい悪い』で判断することではなく、グローバルなトレンドと言っていいだろう」

――投資対象14カ国のGDP構成比や時価総額を見ると、米国が突出し、これに続く日本との2カ国でかなりの部分を占めることになるが、ファンドの国別構成比は。

山崎 「GDP、時価総額ウエートなども考慮には入れるが、もちろんそれだけではない。むしろ、これから大きくなっていくであろう“のりしろ”の部分を重視している。経済規模の小さい国の比重をあまり大きくするわけにはいかないが、TPPで得られるメリットの大きさを加味してウエートが決まることになる」

――参加国の中でも比較的大きなメリットを受けられる国としては、どこが挙げられるか。

大前 「各国ごとに強み、弱みはあるわけだが、例えば、農業関連、食料品、金融などに強みを持つオーストラリアあたりはメリットを受けやすいと言えるだろう」

――モデルポートフォリオ上で、オーストラリア株の国別構成比は。

大前 「あくまでも8月末時点でのものだが、14.0%となっている。ちなみに、この時点での米国株は26.8%、日本株は20.0%だが、そもそも当ファンドは『バイ&ホールド型』ではない。国別ウエートは毎月見直しを行い、組入株が割高になれば、引き下げていくことになる」

――組入銘柄の選定方法はどうなっているのか。

大前 「北米、中南米、アジア・オセアニア、日本などのグローバル体制で展開する20名以上のアナリストが、TPPでメリットを受ける個別銘柄のユニバースを各国別で選定。これらを国別ウエートに沿って組み入れていく。実際に組み入れるのは合計60―80銘柄程度だ」

――為替ヘッジは行わないのはなぜか。

山崎 「投資対象国が多岐にわたるため、ヘッジコストが発生するからだ」

大前 「一部中南米企業などでは米国ADR(米国預託証券)を通じて投資する例もあるが、基本的には、現地通貨で現地市場に投資しており、その分、対象通貨も多様になる。新興国通貨はボラティリティ(変動率)が大きいが、ここから大幅に円高が進むことはないとの読みも背景にある」

――近年はやりの「毎月分配」ではなく、3カ月決算型とした理由は。

山崎 「配当を重視したポートフォリオではなく、8月末時点のモデルポートフォリオ上における組入銘柄の予想配当利回りも2.4%にとどまっており、キャピタルゲインを狙っていきたい」

――米債務問題の余波から今秋の米国・オバマ大統領アジア訪問も中止となり、TPP交渉進展の後ずれを懸念する声も生じているが…。

大前 「多少、タイミングの遅れが生じたとしても、大きな流れに変化ない。今回、TPPに注目したのは、短期的な観点ではなく、先行きのグローバルな競争環境整備を評価したもの。実際にチャンスを得られる企業を選別し、中長期で、きっちりとリターンを取っていきたい」

――TPP交渉が妥結して全容が判明してから、ではなく、まさに交渉たけなわの中での設定となった背景は。

山崎 「新たな経済圏の誕生に向けて、ハードルの高い交渉が進められており、そこに投資機会があると考えている。長い目で見ても魅力あるファンドに仕上がったと自負している」

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