逆張り的発想でバリューギャップを抽出 「スパークス・少数精鋭・日本株ファンド」 8月30日設定

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鈴木 剛氏

鈴木 剛氏

スパークス・アセット・マネジメント マーケティング本部
副本部長 鈴木 剛氏

ボラティリティ高く、いまだ方向感をつかみきれない日本株。そんな折、中小型株運用に定評のあるスパークス・アセット・マネジメントが、集中投資戦略を掲げる“少数精鋭”ファンドを立ち上げた。ファンドの概要や日本株式市場の見通しについて、マーケティング本部の鈴木剛副本部長に話を聞いた。

「スパークス・少数精鋭・日本株ファンド」概要

――まずはファンドの概要を教えてほしい。

「株価と実態価値が大幅に乖離(バリューギャップ)している日本企業を中心に20-40社程度に集中投資する。中小型株がメーン。当社は現在9本の国内公募追加型の日本株ファンドを運用するが、中小型株で銘柄を絞り込むという点が他にはない大きな特徴だ」

――銘柄選定方法は。

「逆張り的発想で徹底した調査から銘柄を選別する。通常、株価は企業の実態について“その時点”での合理的な考えを反映するが、市場参加者の『過度な悲観』『無視(関心の低下)』により、一時的にバリューギャップが生じることがある。これを探し出すことで下落リスクが小さく、上昇余地が大きいと考えられる銘柄選別が可能に」

「キーワードは『再成長』。例えば、市場全体の急落や業界全体の低迷、一時的な業績悪化などの『悲観』で株価が大きく下落した銘柄を買い、その後は株価が持ち直して、中長期視点に基づいて計測した実態価値に達するまで持ち続ける。あるいは、成長産業ではないため注目されづらい銘柄や“過去の期待への裏切り”などから『無視』され続けて株価が低位で推移している銘柄にもバリューギャップが存在するケースがある」

――集中投資は運用者の能力が大きく問われる。

図1 同一チーム内で運用する別ファンドの実績

図1 同一チーム内で運用する別ファンドの実績

「当社では1999年から機関投資家向けに集中投資戦略の運用を続けており、20年超の実績がある(図1)。ベンチマークを意識しながら多数の銘柄に分散投資を行う一般的なアクティブ株ファンドが、マーケットと大きく変わらないリターン特性を示す傾向がある一方で、過度な分散をしない集中投資戦略は商品性が独特だ」

「銘柄選定やポートフォリオの構築などは当社の『日本株式中小型・集中投資戦略のメンバー』が行う。当社では時価総額下位30%未満・4,044億円以下(2013年5月末現在)を中小型株と定義しており、現在は約3,000銘柄がこれに該当する。メンバー全員で投資アイディアを持ち寄り、候補銘柄600社ほどを抽出。これらについて企業訪問を行い、バリューギャップの有無を見極めた上でポートフォリオを構築する。もしも市場コンセンサスとは異なる仮説を発見できれば、その銘柄に集中投資することこそが有効、と考える投資戦略だ」

「市場に相対する『逆張り』の完遂は大変に勇気のいることだ。多くの既存中小型株ファンドのように、トレンド真っただ中の業界に投資して株価上昇にのる、あるいは、企業の成長に投資するといった投資戦略では自然と上昇率上位にのってくる銘柄が多く、個人でも発見しやすい。その分野にわれわれプロの存在価値は少ないと考える」

――戦略上タイミングが重要となりそうだ。

「一般的には、トレンドによる上昇が落ち着くと、次は“業績相場入に突入”がセオリー。投資先の“選別”が求められる。現在の日本株はこの段階にあり、当ファンドの存在価値がいっそう際立つものと考える」

「業績相場では企業価値が再度精査されるため“お宝銘柄”が脚光を浴びるチャンス。ちなみに時価総額下位15%・1,301億円未満(2013年5月末現在)の『小型株』に限って言うと、日経平均株価が直近高値を付けた5月であっても、割安銘柄が多数存在する。2013年5月末現在でPBR(株価純資産倍率)0.5倍以下が418銘柄、純現金資産(※)が時価総額を上回っているものが156銘柄あり、配当利回り4%以上は87銘柄も」

※純現金資産=現預金+投資有価証券-短長期負債

日本株式市場の見通し

――日本株全体の方向性が見えない。

「アベノミクスによってデフレのスーパーサイクルが終焉(しゅうえん)。23年間にわたって続いた日本株式市場の下落局面は、歴史的転換点の第一歩を踏み出したと考えている」

「企業の“危機への耐性”はかつてないほどに高い。企業はバブル崩壊後に体力を回復、財務が健全な状態だったにもかかわらず、2008年にはリーマン・ショックという外部要因に引きずられて再度株価が急落した。政策的なサポートも受けられず長らく低迷が続いたが、アベノミクスによってまずは引き起こされた“歴史的円高の修正”により、ようやく利益を生み出しやすい環境が整いつつある」

――今後の展開、どうみる?

「今(取材日8月2日時点)はいわゆる“夏枯れ相場”。昨年来勢いよく上昇してきた日本株だが、海外投資家がバケーション入りするなどして、上値の重たい状態が当面続くだろう。ただし、9月にはドイツ総選挙など世界的に株価を動かす要因が多く、新たな展開が期待される。9月7日に予定される2020年夏季オリンピック開催地の決定も、日本株にとっては大きなイベントだ」

「企業の半期決算も待たれる。期待通り、あるいはそれを上回る成長が確認されれば、現在のボックス相場を打破する局面が到来する可能性も。また、先述したように筋肉質になった企業はたくましく、多少の問題に直面しても下落余地は小さいと考える」

「足元では為替の動向が日本株式市場に大きな影響を与えている。もしも1ドル=95円程度にまで円が急騰すれば短期的にはリスクではあるが、そのときは『買い場』とのスタンスで臨みたい。日経平均の下値は、日銀の黒田総裁が異次元緩和策を打ち出した4月の1万2000円程度とみる」

図2 主要国株式市場のPBR

図2 主要国株式市場のPBR

――アベノミクスが目指すものは?

「政府は超デフレ環境から“正常な領域”への転換を図っている。そもそも正常な領域とは、どういうことか? 現在の前提条件を日経平均1万3,000円台でPBRは1倍台、株主資本成長率約6%とし、各種環境などがこのまま推移していくと仮定すると、あくまで期待を持ったシミュレーションではあるが、株主資本は5年後には33.9%(6%を5年複利で計算)増加する。さらに日経平均のPBRが2倍になったと仮定すると、3万円という水準も想定できる。現在、主要国のPBRはおおよそ1.5-2倍。日本のレンジもこれに並べば、異常から正常へ移行する可能性が期待される(図2)」

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