注目される「マルチセクター債券運用」 三菱UFJ投信

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どのような局面でも相対的に良好な運用成績が期待

「バリュー・ボンド・ファンド<為替リスク軽減型>/<為替ヘッジなし>(毎月決算型)<為替リスク軽減型>/<為替ヘッジなし>(年1回決算型)(愛称:みらいの港)」

投信会社や販売会社は、NISA(ニーサ、少額投資非課税制度)向けの商品ラインアップの強化を進めている。その一環として、三菱UFJ投信は31日に、「バリュー・ボンド・ファンド<為替リスク軽減型>/<為替ヘッジなし>(毎月決算型)<為替リスク軽減型>/<為替ヘッジなし>(年1回決算型)(愛称:みらいの港)」を新規設定する。同ファンドは、世界の米ドル建てを中心とする公社債等を主要投資対象とする円建て外国投信の「マルチセクターバリューボンド―JPYヘッジドクラス」「マルチセクターバリューボンド―JPYノンヘッジドクラス」が投資対象となる。同外国投信は、米ボストン、ダブリン、ロンドンなどに主要な運用拠点を持つ世界有数の運用会社であるパイオニア・インスティテュ-ショナル・アセット・マネジメント・インクが運用を行っているファンド。そのファンドを採用した背景や、仕組み、強みなどについて、三菱UFJ投信執行役員の小島暁介氏と、委託運用部債券グループ次長の瀧川眞道氏に聞いた。

小島暁介

小島暁介

執行役員
小島暁介氏

■新たな投資フィールド・債券マルチセクター

NISAを意識した商品ラインアップ整備に関する流れは「3プラス1」というキーワードで考えると分かりやすい。3は対面販売商品としての(1)既存商品改良型、(2)株を含めたバランス型、(3)債券の分散投資型。プラス1はネットなど非対面チャネルのノーロード商品だ。

(1)の既存商品改良型は、毎月分配などでなじみのある商品を小頻度決算や分配抑制タイプに改良するもの。そもそもNISAは特別な商品のためのものではない。お客さまがNISA口座でなじみのある商品を買いたいとなれば、わざわざ別の新しい商品を薦めなくてもいいという考え方だ。(2)の株を含めたバランス型は分散投資の王道であり、制度趣旨を踏まえた商品ラインアップのシンボルとして検討されている。しかし一部の販売現場では運用結果をうまく説明できるかどうかという不安もあるようだ。(3)の債券分散投資型は、「マルチセクター債券運用」と呼ばれる債券分散投資のカテゴリーだ。債券は長きにわたり個人投資家のコア資産となってきたが、世界的な金融緩和の結果としてインカム水準は著しく低下している。「マルチセクター債券運用」は、こうした環境認識に対する有力な解決策であり、NISAという制度が要求している分散投資、長期投資、ミドルリスク・ミドルリターン特性などの条件を満たす新たな投資フィールドとして注目されている。

■優れたパイオニア社のファンド

今回当社が設定するファンドはマルチセクター債券運用の分野に属するもので、米国パイオニア社の「バリューボンド戦略」に基づいて運用を行う。マルチセクター債券運用は債券に幅広く分散投資を行い、さまざまな市場環境にあっても一定の成果を上げることを目指すものだが、実際に米国には目覚ましい成果を上げているファンドが数多く存在する。多数の運用会社をリストアップした上で、今回当社が徹底的に検討したのは2つ。1つはトラックレコード、もう1つは長期投資において金融環境の変化に耐えられる柔軟性があるかどうかである。パイオニア社の運用実績はわれわれが候補とした中でトップであり、柔軟性の観点からも極めて優秀と評価した。

債券運用の評価で悩ましいのは、世界的な金利低下トレンドが長期にわたって継続したため、トラックレコードが良かったとしても、それが運用者の能力によるものなのか、環境の追い風を受けただけなのかを見極めるのが難しいということだ。加えて、米国の金融緩和に関する出口戦略などを勘案すると、NISAに適合する長期投資を考えるには金利上昇を含めた市場環境変化に耐えられるかどうかが重要になる。当ファンドはITバブル崩壊後の2004年くらいから始まった金利上昇期にも非常にうまく対処した。これは、多様な債券への機動的投資配分変更、変動金利資産の活用、キャッシュコントロールなど、金利上昇局面に対応できる仕組みが運用の根本に備わっていたからだとみている。

■4つのファンドを一度に投入の理由は

今回は、運用のエンジンを同じにして4つのタイプのファンドを一度に投入する。決算タイプでは毎月決算(毎月分配)と、年1年決算(分配抑制)の2つのタイプ。また為替に関してはヘッジなしとヘッジあり(為替リスク軽減型)の2つのタイプである。為替のヘッジあり、ヘッジなしはお客さまの投資スタンスで選んでいただく。決算タイプについてはNISAを意識すると年1決算が選好されそうだが、優秀な運用エンジンの運用成果を毎月受け取りたいというニーズも大きいと考え、毎月決算タイプも用意した。

当ファンドはNISAの商品ラインアップ整備を意識して投入するものだが、一般窓販の延長上にNISAがあるのであって、一般窓販に耐えられないものがNISAで耐えられるはずはない。当ファンドは個人の資産形成のコアとして広く一般窓販でも受け入れられると考えている。これが4つのファンドを一度に投入する理由だ。

瀧川眞道氏

瀧川眞道氏

委託運用部債券グループ次長
瀧川眞道氏

■パイオニア社の債券マルチセクター戦略の強み

債券ファンドはさまざまあるが、ハイイールド債や、エマージング債、国債ファンドなど、種別では比較的単一の債券ファンドが多かった。今回のバリューボンドは債券のマルチセクター戦略に基づいて組成されたもので、国債、ハイイールド債、モーゲージ債、転換社債、地方債、投資適格債、米国ハイイールド債、バンクローン、非エージェンシーのモーゲージ債、社債など多様な種類の債券を組み合わせる、債券の中でのアセットアロケーションを行うのが当ファンドの特徴となっている。トップダウン・アプローチにより、市場環境に応じて債券種別毎のアロケーションをポートフォリオ・マネージャーが決定し、さらに、クレジット・アナリストによるボトムアップ・アプローチで実際に組み入れる個別債券を決定する。リスク・オンの局面で良いパフォーマンスを示す傾向のあるファンド、あるいはリスク・オフの局面で良いパフォーマンスを示す傾向のあるファンドと、世界にはいろいろなファンドがあるが、リスク・オンの局面でも、リスク・オフの局面でも他ファンドと比較して上位にランクされるファンドは非常に少ない。当ファンドが投資対象としている、もともとのファンドは1999年6月に設定された14年のトラックレコードのあるファンドだ。同じコンセプトで運用しているファンドの中で、過去3年間で67社中5位、過去5年間で67社中4位、過去10年間で55社中3位と、どの期間においてもトップクラスの運用実績を残している。当ファンドと同様に、トップダウン・アプローチとボトムアップ・アプローチの手法を組み合わせて運用を行うというコンセプトを持つファンドは数多くあるが、言葉だけでなく、それを実践して、結果を残しているファンドは少ない。パイオニア社の当ファンドはそれを実現している数少ないファンドの1つだ。これならお客さまに継続的に好パフォーマンスを提供できるのではないかと考えて、当ファンドの設定にこぎ着けた。同社は1928年に発足し、現在の資産運用残高は約19兆円、世界26カ国に拠点を持っている。

■過去の金利上昇時の対応は

金利上昇時のパフォーマンスだが、2004年1月から2007年7月までの米国の利上げ局面におけるパフォーマンスは、シティグループの世界国債インデックスが+3.09%、BofAメリルリンチUSハイイールド・インデックスが+8.38%で、バリューボンド戦略が+6.70%となっている。この局面での対応としては、ハイイールド債のウエートを引き下げ、米国債やモーゲージ債、現金のウエートを引き上げている。また、1999年6月から2000年12月の米国の利上げ局面におけるパフォーマンスは、世界国債インデックスが約3%、USハイイールド・インデックスが-4.76%だったのに対してバリューボンド戦略は+4.12%となった。この期間はスプレッドが拡大した局面でハイイールド債のウエートを引き上げる一方、米国債のウエートを引き下げるなどの対応している。さらに、2008年9月のリーマン・ショック後に米国債金利が大幅に低下する一方、社債などのクレジット・スプレッドが大きく拡大したことを受けて、米国債やモーゲージ債のウエートを段階的に引き下げる一方、割安となった投資適格債やハイイールド債のウエートを引き上げた。その局面における債券クラス毎に割高・割安の度合いを比較し、割安な債券に投資していくスタイルをとっており、優れた実績も残している。これまでの投資戦略が今後もそのまま通用するとは限らないが、パイオニア社の運用の根幹である「バリュー投資」のコンセプトの下、今後も徹底した個別銘柄分析に基づく「バリューボンド戦略」で、どのような局面でも相対的に良好なパフォーマンスが期待できると考えている。

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