「新しい世界」に投入するオールウェザー型ファンド ブラックロック・ジャパン「サイエンティフィック・エクイティ・ファンド」(愛称ザ・アメリカズ・ロングショート) 取締役リテール営業本部長 浜田直之氏に聞く

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取締役リテール営業本部長 浜田直之氏

取締役リテール営業本部長 浜田直之氏

世界最大級の運用資産規模を持つ資産運用会社ブラックロック(本社ニューヨーク)の日本法人であるブラックロック・ジャパンは、11月30日に追加型証券投資信託「サイエンティフィック・エクイティ・ファンド」(愛称ザ・アメリカズ・ロングショート)(以下、当ファンド)を設定する。ファンドの商品名につく「サイエンティフィック」という名前が示すのは「投資を科学する」という意味合いを持つもので、独自の計量モデルを活用して運用が行われるロングショート(買い建て・売り建て)戦略を用いるファンドだ。販売会社はSMBC日興証券株式会社で、当初募集期間は2012年11月12日から11月29日、継続募集は11月30日からとなっている。当社は昨年10月にエマージング諸国・地域の株式などを実質的に投資対象候補としたロング・ショートファンドを日本で初めて設定したが、今回のアメリカ大陸株式を投資候補としてロングショート戦略をとる公募投信も日本で初めてとなる。当ファンドは、ブラックロックが考える「新しい世界」の投資環境の下で投入するファンドの1つだ。ブラックロックが考える「新しい世界」とは何か、同ファンド設定の背景や仕組み、魅力などについて、同社取締役リテール営業本部長の浜田直之氏に聞いた。

投資環境は「新しい世界」に

世界は10年前とは違う。2008年の世界とも違う。投資環境は「新しい世界」に入っていると考える。では、ブラックロックが考える新しい世界とは何か。最近の投資環境を見ると、(1)世界的に低迷する利回り、(2)激しく変動するマーケット、(3)高まる連動性、(4)高まる不透明感(ソブリンおよび地政学的リスク)──などが挙げられる。まず、世界的に利回りが低下する環境下で運用上の悩みが深まっている。かつてのように10年国債の利回りが6%、7%あれば、株式でリスクをとっても、債券の利回りがクッションとなって、元本の保全性を高めながら運用が可能だった。しかし、現在はそういう時代ではなくなった。また、低迷する利回りは長期化するとの認識が必要だ。

多くのアセットクラスでマーケットが激しく変動することが多いのも最近の特徴だ。例えばVIX指数(恐怖指数)は、変動が大きいと認識される水準を示す30を超すことが増えている。今後もマーケットが大きく変動する局面に対してどのような対策をとるべきか、これまで以上に考えなくてはならない。さらに、伝統的な分散投資が効きにくくなっている。特にリーマン・ショック後は、債券、株、リート(不動産投信)、また先進国株や新興国株など各資産クラスのマーケットの連動性がこれまで以上に高まっている。

加えて、国家財政や地政学の上の問題が世界的に広がっており、運用環境の不透明感が漂っている。私たちはギリシャに端を発した危機的シナリオを「ネメシス・シナリオ(ネメシス:ギリシャ神話で人間の思い上がりに罰を与えた女神)と呼んでいる。このネメシスがギリシャからユーロ圏を外遊し、さらに大西洋を渡り「財政の崖」問題を抱えるアメリカへと移住する可能性もないとはいえない。また、中国景気の減速や、イランやイスラエルの中東情勢を睨んで世界中へ旅立つ可能性もある。われわれは投資に当たって、このような可能性を常にかんがみる必要がある。変動が激しく、連動性の高まるマーケットではリスクコントロールがこれまで以上に重要だ。

このような環境の中、例えば、大きな成長ドライバーを見つけて長期保有する、またタイミングをしっかり当てていくことで収益を狙うという手法もあるだろうが、「リスクをコントロールした運用」も重要で、投資タイミングを考えずオールウェザー(全天候型)で収益を狙う戦略も有効と考える。この1つに株式のロングショート戦略がある。株式ロングショート戦略は、相対的に投資魅力度の高い資産を買い建て(ロング)、相対的に投資魅力度が低い資産を売り建て(ショート)する投資手法。買い建てポジションのみでなく売り建てポジションを金額ベースで同等程度組み合わせるため、株式市場全体の変動の影響を低減する効果が狙える(図参照)。

また、こうした手法は株式市場全体の影響に左右されにくい戦略な故、株式市場と連動性を高めるほかの資産との相関関係も比較的低いのが特徴である。ちなみに当ファンドの類似ファンドと各資産クラスとの相関係数は新興国株式が0.12、先進国国債が0.03、外国REITが-0.08(いずれも円換算)、国内株式が-0.09、国内債券が-0.07。さらに円ベースで投資する日本の投資家には、変動要因の1つとされる為替の変動も考慮に入れなければいけない。こうした為替リスクに対しては為替ヘッジなどによりリスクを低減する手段を考慮したい。つまり、株式市場の変動や連動性を天候の変化に置き換えると晴れの日も雨の日も天候の変化などにあまり左右されない運用戦略といえる。つまり、従来の分散先ではない、新たな分散投資先としてこうした戦略は投資家の潜在的なニーズにお応えできると考える。

株式市場全体の変動の影響を低減

なぜアメリカ大陸株式が対象なのか

ロングショート戦略で重要な要素は、市場が上がるかということではなく、市場に勝ち組、負け組みが多く存在することが重要。アメリカ株式市場は、上場の数も多く、情報開示・規制などが進み、取引コストも低いのが特徴で、さらに、新しい技術の開発、ビジネスモデルの構築といった土壌の中、多くのイノベイティブな企業が出てくる。多くの勝ち組、負け組みが混在している魅力的なマーケットといえる。このような市場で、大型株中心のみならず、中小型、また、短中期の期間における戦略で企業間格差を収益に結びつけることが重要と考える。カナダは、株式時価総額の60%以上が資源関連株式のため、先進国の景気サイクルのほか、新興国の景気サイクルの影響を受けやすい。資源価格との関連性で株価が動きやすい傾向に着目、モメンタムなどを加味した戦略が適している。このように米国、カナダには、いわば、強い企業と弱い企業との間に収益の課題など多く、ロングショート戦略による投資機会が多く存在している。一方、ラテンアメリカ株式は、アナリストカバレッジが相対的に少なく、情報が株価に反映する速度が比較的遅い。そうした中、投資情報をいち早く大量に入手・処理することができれば投資機会を見いだすことも可能である。

ブラックロックのロングショートの特徴は何か?

ロングショート戦略運用上の留意点としては、勝ち組、負け組みを同じ土俵(業種・企業規模など)で比較すること、またリスクを抑制するためにも分散投資が重要で、当戦略では、2000銘柄以上に分散投資を行う。この運用手法は、一人のファンドマネージャーでは、非常に困難で、グループ独自の計量モデル(市場や株価の動きを計量的な数式でとらえようとするもの。大量の投資情報を活用してリターンを図るためのツール)を活用してこそ実現可能と考える。当モデルは、企業評価、投資魅力度の算出に当たって、独自の情報分析力と計量運用のノウハウを駆使して大量の投資情報を迅速に入手、分析する。そこでの着眼点は、企業分析や割安度分析などの中長期的な情報に加え、市場分析による短期的な投資家動向などの情報を踏まえ、60―70の要素で投資魅力度を算出する。

投資家へのメッセージ

世界的に高まる連動性、高まる不透明感の中で、ほかの資産との値動き、収益獲得の源泉の異なる運用手法で、リスクコントロールを実施しながら、運用していくことが重要と考え、株式のロングショート戦略が有効と考える。さらに「投資を科学する」ことの重要性も考えたい。人間で言えば科学の力を借りてDNA検定などを施して治療にあたるイメージをしてほしい。個々人の良いところ、悪いところなどがそれぞれ違い、そうしたさまざまな違いを分析して治療などが施される。投資の世界でも一つ一つの会社の健康状態を科学によって細かく診断し、比較や組み合わせなどを考慮してポートフォリオを構築する。もちろん、リスク管理などの側面で人間の脳で判断する必要もあるが、科学の力を活用して運用していくことは有効な戦略であり、新しい世界の中で収益を積み重ねていく解決策の1つと考える。そうした結果、当ファンドと類似ファンドのリスク・リターンを見るとリスクが約5%、リターンが約7%となっている。このリスク水準は、先進国(日本除く)の国債(円ベース)より低い。従って、マーケットの変動に左右されず安定的にリターンを追及できるファンドとして全天候型ファンドの1つと言える。まさに保有資産の中心的な投資手法として投資家の潜在的なニーズに合致した戦略と考える。

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