アベノミクス下で新たな方向性を探る年金運用 JPモルガン・アセット・マネジメント 年金運用動向調査結果

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鈴木英典氏

鈴木英典氏

市場環境好転でリスク引き上げ傾向が顕著に

投資戦略ソリューション室長 鈴木英典氏

JPモルガン・アセット・マネジメントは4月24日「年金運用動向調査結果」を発表した。今年で6回目となる本調査は、日本の企業年金を対象に、現在の運用状況や今後の方向性を聞き取り調査したもの。今回の調査では「さまざまな投資資産・戦略を幅広く組み入れる」といった前向きな声が聞かれるなど、いわゆるアベノミクス効果が垣間見られる結果となった。本記事では、JPモルガン・アセット・マネジメントの鈴木英典投資戦略ソリューション室長による講演の内容を一部抜粋して紹介する。

(調査概要)
対象:日本国内の年金(主に企業年金)138基金(※)
期間:2013年3月上旬から5月上旬
ポイント:2012年度中(2012年4月から2013年3月)の年金の資産運用状況の変化および今後の方向性※内訳
制度別:確定給付企業年金73.2%、厚生年金基金24.6%、そのほか2.2%
資産規模別:3,000億円以上5.8%、1,000億円-3,000億円未満24.6%、500億-1,000億円未満23.2%、500億円未満44.9%、非開示1.4%

企業年金は慎重な姿勢を維持しながらも、市場の好転をにらみ、これまでの「リスク削減一辺倒」の状況を転換している。より積極的な戦略の採用・拡大を通じて、選別的にリスクをとって超過リターンを獲得し、超低金利環境下においても必要なリターンの確保・達成を目指す方向性を明確にしつつある。

企業年金が注目する市場環境

企業年金が注目する市場環境

ポイント(1)市場環境の認識と運用戦略

運用担当者がどのような事象に注意を払っているのかを調査したところ、アベノミクスや日銀の異次元緩和政策などによる「先進国の超低金利(今後の金利上昇懸念)」を挙げる声がもっとも多かった。よって運用戦略は、超低金利による高格付け国債の期待リターンの低下や将来の金利上昇懸念への対応を軸に策定されることが見込まれる。

次いで多かったのが「市場のボラティリティの上昇やテールリスクの増大」を懸念する声。ここから、分散によってリスク水準の抑制を図りながらも、選別的にリスクをとり、必要なリターンの確保を狙う姿勢がうかがえる。

一方で、「急速な為替の円高修正」「日本株を含む株価の大幅上昇」などは大きな注目点にはなっていない。個人投資家との投資制約の違いが要因だと思われる。

続いて、今後進めようとしている投資行動を聞くと、「インカムを主なリターンの源泉とする運用の配分増」「ポートフォリオ全体のリスク水準の引き下げ」「オルタナティブへの配分増」との回答が多く聞かれた。

期待リーン、想定リスクの変更状況

期待リーン、想定リスクの変更状況

ポイント(2)期待リターンと想定リスクの変更状況

大部分の企業年金は期待リターン、想定リスクを現状水準に維持し始めている。2008年のリーマン・ショックを契機に低下基調にあった両項目に下げ止まりの兆しが見られ、一部では引き上げる動きも。これは2009年の本調査開始以降で初めて見られる現象だ。

ポイント(3)資産配分の変化

資産配分の変化

資産配分の変化

超低金利の進行を受けて、これまで増加基調にあった国内債券が減少に転じる一方、外国債券とオルタナティブの増加傾向がより鮮明に。

国内株式は計画ベースで縮小しているものの、実績がこれを上回る状況に。国内株式への配分が増加している企業年金が見られ始めている。

ポイント(4)非従来型運用の導入状況

ほぼすべてのカテゴリーで非従来型資産や戦略の採用が拡大している。債券では「新興国債券」「ヘッジ付き外国債券」「バンクローン」などが増加。株式関連では「集中投資」「新興国株式」などが増加しており、中でも、銘柄を絞り込んでアクティブ度を高めた「集中投資」の伸びが大きい。

オルタナティブでは「絶対収益型」「PE(プライベートエクイティ)」「実物不動産」「REIT(不動産投信)」「インフラ投資」「保険関連」など大部分の資産・戦略が拡大している。

ポイント(5)商品数の変化

アクティブ運用の活発化もあり、大部分の資産クラスで運用商品数が増加している。特に「外国資産」「オルタナティブ」の商品数の増加が顕著。オルタナティブでは「絶対収益型」「PE」「リアルアセット」の3部門すべてが増加している。

株式:国内株式ではベンチマークの影響が少なく、アクティブリスクの高い「集中型投資」「最小分散型」などが増加。外国株式では「新興国株」「アジア株」「グローバル株式」などが増加している。一方で「パッシブ運用」などアクティブ度が低い運用、「バリュー」「コア」「グロース」などスタイル別の商品数が減少している。

最近は国内株と外国株を一緒にして「グローバル株式」として運用しようという流れが起きており、ベンチマークを意識した運用が減りつつある。債券についても同様の動きが見られる。

債券:国内債券では「パッシブ」「変利債」「野村-BPI総合アクティブ」などが減少し、「外国債券(ヘッジ)」「長期債」「一般勘定」などが増加。外国債券でも「パッシブ」「国債型」が減少し、「新興国債券」「外国債券(ヘッジ)」「債券バランス型」「バンクローン」が増加している。こうして内外債券ともに、先進国国債が中心の運用は大幅減少。より積極的にリターンを追求する運用戦略が支持を広げている。

今後の展望/調査結果から垣間見える未来像

企業年金はこれまで金利が低くても「耐えしのごう」という心理が勝っていた。足元の市況好況は母体企業の業績向上にもつながり、運用に好影響を与えることが期待される。こうした市況好況が続く限り、企業年金の投資マインドの積極度は今後も増していくと考えられる。

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