アジアの経済成長の恩恵を取り込む 日興アセットマネジメント「アジアREITオープン(毎月分配型)」

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植村裕子氏

植村裕子氏

シンガポール、香港リートが投資の中心

資産運用サポート第2部シニアアドバイザー 植村裕子氏に聞く

日興アセットマネジメントは5月31日に「アジアREITオープン(毎月分配型)」を設定する。REIT(リート)とは不動産投信のことで、多くの投資家から集めた資金で、オフィスビルや商業施設、マンションなど複数の不動産を購入し、その賃料収入や売買益を投資家に分配する。同新ファンドは、アジアのリートを主要な投資対象にしたもの。当初の販売会社はエース証券と丸八証券。同ファンドの特徴やアジアリートの魅力や現状などについて、同社資産運用サポート第2部シニアアドバイザーの植村裕子氏に聞いた。

■アジアリートファンドの希少性

当ファンドは、その名が示す通り、アジアのリートに投資するファンドだ。世界経済のけん引役として注目を集めるアジアでは、高い経済成長に伴い不動産市場の拡大が見込まれており、アジアのリート投資の魅力は大きく高まっている。日本で販売・運用されているリートファンドとしては、Jリートに投資するものや、USリートやグローバルリートを投資対象にしたファンドなどがあるが、アジアのリートを対象としたファンドはまだ少なく、その中でも純粋にアジアだけに投資しているアジアリートファンドは数えるほどしかない。希少性のあるファンドと言えよう。今後のアジアの経済成長の恩恵を取り込むことができるという点からも、注目が高まる投資先だと考えている。

■ファンドの基本的な特徴

当ファンドの基本的な特徴は大きく3つある。1つ目は、主として日本を除くアジア諸国・地域で上場しているリートに投資するということで、アジアの代表的な市場であるシンガポールと香港の両市場のリートが主な投資先となる。なお、ほかのアジア諸国でもリート市場の導入が検討されており、将来的に投資機会が拡大することが期待される。2つ目は、リートの比較的高い分配金収入を安定的に獲得しつつ、中長期的な信託財産の成長を目指すということ。賃料収入を主な収益源とする分配金によるインカムゲインとリート価格上昇によるキャピタルゲインに加え、アジアの成長期待を背景にしたアジア通貨の上昇も期待できる。3つ目は、長年のアジア資産運用の経験を有し、シンガポールを拠点とする当社のグループ会社、日興アセットマネジメント アジア リミテッドが実質的な運用を行うことだ。

このうち1つ目について、もう少し具体的な特徴についてお話ししたい。例えばJリートなどの場合、保有する物件は日本国内の物件がほとんどとみられるが、シンガポールには、香港やインド、日本やオーストラリアといった海外不動産に積極的に投資するリートがあり、中には自国外の物件だけに投資を行っているリートもあるなど、地域(国)分散がなされている。また、香港には、中国本土の物件に投資を行う中国人民元建てのリートもある。

■なぜアジアなのか

「なぜアジアのリートなのか」をもっと掘り下げてみよう。リートの収益拡大には、投資先物件の入居率およびその賃料の上昇、さらにリートによる物件取得機会の増加といった要素がポイントになるが、アジアにはその裏付けとして次の3つの「成長エンジン」がある。

まず1つ目は「所得の増加」。アジアの個人消費は、1980年から2011年のおよそ30年で約6倍に拡大している。一方で、消費意欲が旺盛とされている中間層は年々増加しており、2020年には20億人に達すると推計されている。経済成長に伴う所得水準の向上により、中間所得層が大きく増加して個人消費をさらに押し上げていくことが期待されており、ショッピングモールなどの商業施設の需要が増えるほか、住宅需要の増加にもつながると考えられる。香港の人口700万人強に対して、香港への中国本土からの観光客が一説には2012年に3,000万人に達したといわれるが、このことだけをとっても、香港の商業施設や物流、ホテルなどを対象としたリートにとっては大きなプラスとなる。

2つ目は「都市化の進展」だ。アジアでは、経済成長に伴って就業機会が拡大しており、農村から都市に人口が移動する都市化がいっそう進んでいる。アジア全体で、2025年までに地方から都市部に約3億人が流れ込むとの予測もある。こうした都市化の進展により、不動産の開発や取引が活発化するほか、オフィスや住宅の需要も増えると見込まれる。学校や病院、商業施設や物流拠点も必要となる。一方で、それだけの人が都市部に流れてくると、インフラを作るには資金が必要になってくる。直接金融、間接金融だけでは資金調達が追い付かなくなっており、受け皿としてリートが使われている場合もあるようだ。

3つ目は「地理的な優位性」。アジアは、世界の中でも相対的に高い経済成長が予想されているのに加えて、急速に発展する国同士が近接しているといった地理的優位性を背景に、世界貿易の中心地域としての存在感を高めている。特に、香港とシンガポールは、政府当局がアジアの地域統括機能の集積を積極的に推進してきたことなどもあり、香港は「中国本土にとっての最も重要な中継貿易拠点」として、シンガポールは「東南アジアのゲートウェイ」としての地位をより強固なものにしつつある。今後も各都市におけるオフィスや物流施設への需要増加が期待できよう。

■供給過剰懸念に乏しい

オフィスについてみると、シンガポールは国土が全体でも東京23区とほぼ同規模ながら、不動産市場やリート市場はよく発達している。また、海外投資家に対して市場が相対的に開放的になっている面もある。香港は、丘陵地帯が多く、地域全体の1割程度の面積に都市が形成されており、空室率に悪影響が及びにくいといわれる。新規のビル開拓余地が限られているので、供給過剰への懸念は少ない。また、中長期的に見て、中国企業の拠点としての香港の重要性は変わらないと考えられる。

■リートのインカムゲインとキャピタルゲイン

アジアリートは、インカムゲイン(分配金)とキャピタルゲイン(値上がり益)の両方の面で魅力的な投資対象といえる。分配金利回りは相対的に高く、それぞれの国の国債利回りとの比較でも高い水準にある。また、シンガポールと香港のリート指数は2006年以降、世界のリート指数を大きく上回って推移しており、2013年に入ってからもアジアリートが世界のリートマーケットをけん引している格好だ。こうしたインカムゲインとキャピタルゲインへの期待に加えて、日本の投資家は円安時には為替面での恩恵が期待できる面もある。

■アジアリートの市場規模と今後の成長

アジアのリート市場規模は世界の中ではまだ小さいが、その拡大傾向は加速しつつある。2008年12月末から2013年2月末までのおよそ4年でアジアリート市場の時価総額は約4.4倍に拡大している。市場の拡大に伴って、魅力的な利回りを求める世界的な資金がアジアのリートに注目しているといわれる。また、今後数カ月以内に40億米ドル程度の新規株式公開(IPO)も予定されているとも報じられており、市場の拡大余地は大きいといえる。さらに、中国やインドネシア、インドなどがリート制度の新たな導入を検討している。例えば、もし中国がリート市場を開設すれば、世界有数のリート市場になる可能性がある。こうした国々は、自国民の老後の貯蓄の受け皿として政策的にリートを導入しようと考えている。アジアのリート市場は今後飛躍的に拡大していくと期待される。

世界リートの3月末現在の時価総額は約81兆円に上っている。このうち米国が半分以上を占めているが、この5年ほどで日本を含めたアジアのシェアが上昇しており、アジアリートの存在感は次第に高まっている。

■ファンドの運用プロセス

投資対象銘柄は、アジア(日本を除く)のリートが約70銘柄で、いろいろな条件をもとにコアポートフォリオ投資候補銘柄を約15-30銘柄に絞り込む。さらにこのコアポートフォリオ、および、銘柄の本質的価値や収益性などで選定したサテライトポートフォリオ投資候補銘柄(約0-5銘柄)の中から、最終的に約15-35銘柄を選び、ポートフォリオを構築する。

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