シェールガス革命で復活する日本とアメリカ 楽天証券 個人投資家向けセミナー 

個 別 概 況


注目すべきセクター/企業は?

楽天証券は4月13日に東京証券取引所と共催で「シェールガス革命で復活するアメリカと日本」と題したセミナーを開催。シェールガスの概要、日本と米国のシェールガス関連銘柄などが語られた。

とりわけ米国復活の原動力として注目を浴びるシェールガスだが、残念ながら日本では採掘されない。しかし、米国から安価でエネルギーを輸入できるようになれば、日本の製造業も大きな恩恵を受けることは想像に難くない。ちなみに日本の2012年の貿易赤字約7兆円のうち、3割超の2.4兆円をLNG(液化天然ガス)が占めている。

第1部「シェールガス革命で復活するアメリカと日本」

今井澂(きよし)氏

今井澂(きよし)氏

国際エコノミスト/公益財団法人年金シニアプラン総合研究機構理事
今井澂(きよし)氏

100年に1度のエネルギー革命の幕開け

シェールガスの本格普及が意味するのは「新時代の到来」。19世紀に動力が木炭から石炭へ代わった英国の産業革命、その後の石油登場が表すように、いつの時代も、大量に安く供給される新エネルギーによって経済全体に「収穫逓増の法則」が働き、革命が引き起こされてきた。

そして世界随一のシェールガス生産国・米国では既に革命の第1幕が上がり、出演者が歌い始めている。例えば「電気料金」。日本では原発事故後の対応で電気料金の値上げが起きているが、米国では大幅な値下げが続いている。私が昨年ニューヨークを訪れたとき、電気料金が1kwアワー当たり8.5セントから5.5セントに値下げされるとの発表があった。

世界経済の大黒柱・米国の完全復権

シェールガスはバレル当たり価格で原油の6分の1、少なくとも米国では250年分の採掘が可能といわれる。こうして圧倒的なコスト低減を背景に、米国では家計部門が回復し、製造業も本国回帰して復活を遂げている。貿易収支の大赤字が減少して、税収増でいろいろなビジネスが立ち上がり、財政収支の問題も解決。失業率は2%程度と完全雇用状態に近づく――という具合に、今後数年間で米国ドルは相当に強くなるだろう。

日本企業にも妙味/造船など

残念ながら日本にはシェールガスは存在せず、いまだ革命を実感できずにいる日本人は少なくない。しかしながら、日本の産業界にとっても良いことが、これから当分続きそうだ。

米国のシェールガスは2015年から輸出が解禁される予定で、これは、パナマ運河の増幅工事完了を受けてのもの。現在の幅32mから49mに広げられ、積載量では現在の3倍ほども大きいタンカーが通行可能になる。そこで注目したいのが日本の造船業だ。

現在LNG運搬船は世界に350隻あるが、あと60-70隻必要との声も。これまで円高で韓国や中国に奪われていたが、一気に巻き返しが期待される。140億ドルほどのマーケットにまだ動きは見られないが、早ければ2015年にも受注のニュースが聞かれるだろう。

第2部「シェールガスと日本企業」

楽天証券経済研究所アナリスト
今中能夫氏

日本はオイルショック以来のエネルギー問題に直面している。原発事故後は代替として火力発電所の稼働率が高まっているが、実は、世界的にも化石燃料が見直されている。原発のような大規模施設が不要なことや、発電効率が原子力33%に対して火力は40-60%と高効率など利点は多い。何より、シェールガスの技術革新によって可採年数が大幅に長くなったため、これまでのように枯渇を気にする必要がなくなった。

こうして世界的に需要が高まっている化石燃料とその周辺の状況などを整理しつつ、日本株の投資戦略を考えてみよう。

シェールガスの恩恵を受ける企業は、天然ガスを扱う会社だけにとどまらない。日本に長期契約のシェールガスベースLNGが輸入されるのは2017年からで、それまでにプラントやタンカーなどサプライチェーンを整えなければならない。

関連銘柄(1)上流権益を持ち、サプライチェーン全体のコーディネートも志向する「総合商社」など

大手商社は既に何かしらの権益を持つが、新たな権益獲得のチャンスも。米国ではシェールガスの生産体制が整いつつある一方で、規制のため輸出ができず、天然ガス市況が大きく下落している。生産性の悪い井戸が閉じられ、米国のシェールガス開発会社の中にはとうとうつぶれる会社が現われた。

例:三菱商事(8058)、三井物産(8031)、住友商事(8053)、伊藤忠商事(8001)、丸紅(8002)、豊田通商(8015)、石油資源開発(1662)、東京ガス(9531)、大阪ガス(9532)、中部電力(9502)など

関連銘柄(2)天然ガスのサプライチェーン

シェールガスに限らず、島国・日本に天然ガスを輸入するには今のところLNGにしなければならない。輸出基地(液化プラント)、タンカー、受け入れ基地(気化プラント)、パイプラインやLNGタンクローリーなど流通網といったインフラが必要に。一方、米国でも技術者が不足することが予想され、日本企業の出番も。
例:
LNGプラント……三菱重工業(7011)、IHI(7013)、日揮(1963)、千代田化工建設(6366)、東洋エンジニアリング(6330)など
LNGタンク……IHI、川崎重工業(7012)、トーヨーカネツ(6369)など
LNGタンカー……三菱重工業、川崎重工業、IHI(持分法会社のジャパンマリンユナイテッド)など
化学プラント……三井造船、IHIなど
LNGプラント関連機器、化学工場向け機器……横河電機(6841)、帝国電機製作所(6333)、荏原製作所(6361)、住友精密工業(6355)、神戸製鋼所(5406)など

関連銘柄(3)掘削現場で使う機器、機材類

道具への投資は普遍的だがリスクも少ない。1850年ごろにカリフォルニアでゴールドラッシュが起きたとき、最終的に最も富を得たのはジーパンを売ったリーバイスとシャベルを売った人間だったといわれるほど。

例:
掘削用シームレスパイプ……新日鉄住金(5401)、JFE(5411)
掘削用機材の加工用工作機械……森精機製作所(6141)、オークマ(6103)
掘削現場や道路建設に使う建機……小松製作所(6301)、日立建機(6305)
シェールガス圧力容器用の炭素繊維……東レ(3402)、帝人(3401)、三菱レイヨン[三菱ケミカル(4188)]
水圧破砕用液体窒素……大陽日酸(4091)
掘削機械の部品などに使われる樹脂……クレハ(4023)、住友ベークライト(4203)

関連銘柄(4)自動車メーカー

長い目で見ると自動車メーカーもシェールガス関連といえる。シェールガスの副産品として良質な水素が大量に安く入手可能となり、燃料電池車の実用化が早まると目されている。トヨタの計画では2015年に500万円台で販売を開始し、2018年には200万円台の実現を目指す。燃料電池車は走行距離800kmと、現存する電気自動車、日産リーフの100-200kmをはるかに上回る。

第3部「米国のシェールガス開発の現状と投資機会」

コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
広瀬隆雄氏

シェールガス関連銘柄に投資する際のポイントは4つ。シェールガスは発見することよりも、どれだけ効率良く発掘できるかが重要。
●キャッシュを生んでいるか?
●操業面での効率
●先端技術の導入
●財務力

――以上のポイントをふまえて、注目すべき米国企業を挙げてみよう。

注目企業(1)サウスウエスタン・エナジー:独立系の石油・天然ガス探鉱会社。生産高は年々増加しており、今後も10%超の伸びが見込まれている。

成長企業のため現在は無配だが、CFPS(1株当たりキャッシュフロー)が年々伸びている。シェールガス生産に必要な日数は2008年の14日から、2012年には6日に短縮。モーターや櫓などの採掘装置「リグ」の操業コストは2008年の300万ドルから280万ドルに低下している。

同社が発表する確認埋蔵量は2012年に前年比で2割も低下した。これは採掘による減少ではなく、天然ガス価格が急落する過程で不採算部分には参入しないという同社の意思表示。

注目企業(2)EOGリソーセズ(EOG):独立系で全米最大級の石油・天然ガス開発会社。近年ガスが供給過多で値崩れしたためシェールオイルに注力。こちらもCFPSが年々増加傾向に。

注目企業(3)パイオニア・ナチュラル・リソーセズ(PXD):石油・天然ガス探鉱・開発・製造会社。

注目企業(4)カーボ・セラミックス(CRR):シェールガスを取り出すため地下の亀裂に詰めるプロペントと呼ばれるセラミックスの砂を製造販売する。

注目企業(5)ヘルメリッチ&ペイン(HP):石油・天然ガスのリグ操業などサービス請負会社。リグの機械そのものだけでなく、職人の供給まで請け負う。

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