インド経済、株式市場の現状と見通し 景気、最悪期脱して回復へ

個 別


ポートフォリオ、アグレッシブな方向に見直す時期

「イーストスプリング・インド株式オープン」の主要投資対象ファンド運用担当者
イーストスプリング・インベストメンツ(シンガポール)リミテッド
ファンド・マネジャー クリシュナ・クマール氏に聞く

クリシュナ・クマール氏

クリシュナ・クマール氏

イーストスプリング・インベストメンツが設定・運用している日本最大級のインド株式ファンド「イーストスプリング・インド株式オープン」の主要投資対象である「イーストスプリング・インベストメンツ・インディア・エクイティ・オープン・リミテッド」のファンド・マネジャー、クリシュナ・クマール氏がこのほど来日した。同氏はシンガポール運用拠点であるイーストスプリング・インベストメンツ(シンガポール)リミテッドのアジア株式運用チームに所属。同氏はしばらく低迷していたインド経済について「最悪期を脱し回復に向かう」との見通しを示した。インドの経済や株式市場の現状・見通し、運用方針などについて聞いた。

これまでのインド景気低迷の背景と改善の兆しについて

インド経済が減速して2年ほどがたった。経常赤字・財政赤字、インフラ整備の遅延、政策上の改革の遅れ、インフレなどが問題とされていた。これらの背景には主に政府が政策を推進できないなどの問題があった。環境的にはマクロ経済は最悪期を抜けたと考えている。企業収益、ROE(株主資本利益率)ともに回復してきている。また、政策上の改革も、ようやく進捗(しんちょく)が見えている。インド経済ももちろん、グローバル経済の影響を受けており、財政赤字、経常赤字の双子の赤字は依然として残っている。しかし、赤字問題を含め今までインドが抱えていた問題は解決されつつある。

回復の兆し(1)経常・財政赤字改善

まず経常赤字について見てみると、経常赤字の大部分を占める金の純輸入について、政府が金の輸入に対する関税を引き上げたことにより需要が抑制された。また昨今、金価格が下落したことによって金の輸入が減少している。また経常収支の赤字を埋め合わせるために、政府は海外からの直接投資の奨励も強化している。一方、財政赤字についても政策を順次打ち出しており、向こう数四半期でその効果が徐々に見られ始めるとみている。財政赤字は州政府、中央政府を合わせると対GDP(国内総生産)比で8%程度。特に燃料補助金の削減効果が期待されている。燃料補助金は財政赤字の約3分の1を占めており、これが撤廃されることで財政赤字削減がかなり進む。さらに、ディーゼル燃料価格の規制緩和が取られることで、全体のGDPの1-1.5%分の改善が見込まれる。財政支出の赤字の補助金について効果的な対策が打たれたといえる。

回復の兆し(2)インフラ・プロジェクトの進展

遅れていたインフラ・プロジェクトも進展が見られる。今までのインフラ・プロジェクト遅延の理由は主に3点挙げられる。1点目は環境保護対策がなかなか進まなかったこと。2点目は土地の収用が進まなかったこと。3点目は資本調達コスト、金利が高く、資金手当てが難しかったことだ。しかし、最悪期は脱し、今後は新規プロジェクトに資金が回り、未完了プロジェクトの残高は減ってくると予想している。その証拠にインド国有企業(除く金融)のキャッシュが増加し、手元資金が潤沢にあることで設備投資を再開している傾向が見られる。インフレが落ち着き、中央銀行が考えるコア物価上昇率(対前年度比)は適正水準の4%を下回る3.5%となり、さらなる利下げの余地が出てきている。追加利下げにより資金調達コストの問題も払拭(ふっしょく)されるだろう。インフレが収束し、利下げが行われると資金がより活発に設備投資に向かい、今まで中断されていたプロジェクトも再開されると考えられる。

回復の兆し(3)構造改革の進展

なかなか進まなかった政治上の問題も解決されつつあり、現在はさまざまな構造改革案が審議されている。具体例としては土地収用法。また最もネックとなっていた問題として内閣インフラ委員会(CCI)が挙げられる。すべてのインフラ・プロジェクトは、同委員会の承認が必要であり、プロジェクトに遅れが生じる原因となっていた。しかし、本委員会も本腰を入れ承認を進め始めている。既に石油・ガス関係のプロジェクトの多くが承認され、動き始めている。今後はさらに多くのインフラ・プロジェクトが承認され、進んでいくと予想される。このほか、総合小売業、航空業、放送事業、電力分野における外資規制の緩和などにも着手している。

利下げがGDP回復の原動力に

今まで高インフレ、低成長という状況が続いていたが、インフレ収束に伴い成長路線に回帰するというシナリオに転換しつつある。インフレが収束すると追加利下げ余地が出て、さらに利下げが行われる。これにより今まで中断していたプロジェクトが再開あるいは新規プロジェクトも着手されることで、資金の移動が起こり、投資が活発化することによってGDPの伸びが戻ってくるというシナリオだ。

インド株式市場の現状

インド株式のPBR(株価純資産倍率)は過去平均の倍率に比べ1標準偏差ほど低い水準にある。さまざまな改革措置が取られてきているものの、市場はインド経済の回復に対してまだ懐疑的な見方を持っており、株価が割安に推移することで魅力が増している。

明るい材料の1つとして、インド企業のROE改善が目覚ましいことが挙げられる。MSCIインド・インデックスのPBRの推移を見ると、過去、長年下位10分の1に入るほどの割安となっている。企業収益も底を打ったとみられ、数字は明らかに回復している。

インドは2014年に選挙を控えている。過去8回の選挙について、選挙の半年前、1年前で株価がどのように推移したかを見ると、若干の例外はあるが、選挙の半年前、1年前から株価が大きく上昇する傾向が見られたことから、今年1年の株価に期待ができると考えている。

インドルピーの見通し

中央銀行は現在の為替レートはしかるべき水準より8%ほどインドルピー安になっているとみている。主要な銀行や証券会社が発表しているインド・ルピーの今後の見通しもインド・ルピー高で推移するとしており、今後の上昇幅は8%ほどと予測している。

まとめ

このようにインド企業見通しは改善方向にある。収益も改善し、さらに追加利下げが行われれば、マーケットにとってもプラスとなると考えられる。また経済も回復基調にあり、今後、さらに成長軌道に乗ってくるだろう。加えて経常収支の赤字、財政収支の赤字という双子の赤字への措置は十分に取られており、インフレ率も収束に向かっている。

ポートフォリオの見直し

以上の状況をかんがみて株価水準も魅力のある水準になっている。ポートフォリオに関してはアグレッシブな方向に見直す時期に来ているのではないかとみている。マーケットが必要以上に悲観的な見方をして株価が割安な水準になっている銘柄をオーバーウエートすることにより、今後の上昇を狙おうとするポートフォリオにしたいと考えている。

インド株式市場の見通し

戻る