第5回ETFコンファレンス/後編  日本のETF市場は5倍に拡大 ETF市場活性化のカギ

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リテール知名度の向上が急務

S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは4月4日、今年で第5回目となる「S&P ETFコンファレンス」を帝国ホテルで開催。国内外からETF(上場投信)の専門家を招き、7時間超にわたって講演やパネルディスカッションが行われた。米国ではマーケットの1日の出来高の30-40%をETFが占めるのに対して、日本はわずか1-2%にとどまる。「前編」に続く今回は、有識者5人が「ETF市場活性化」をテーマに議論を交わした、第3部パネルディスカッションでの発言内容を抜粋して紹介する。

今井幸英氏

今井幸英氏

日興アセットマネジメント
商品企画部ETFセンター長
今井幸英氏

まずは勝手の良さを実感

当社は2008年8月にETFセンターを設立し、商品開発を開始した。当時はまだTOPIXや日経225に連動するETFしか存在せず、まずは品ぞろえに注力した。現在は22本のETFを運用しながら投資家啓蒙にも注力するが、足元では投資家の意識がガラリと変わったことを実感している。いったんETFを使った投資家はその使い勝手の良さを実感して、その利用方法をより深める傾向が見られる。

小回りの利くETFを投入

基本的に商品開発は顧客ニーズを考慮して行うが、課題も多い。かつて一部投資家からの熱い要望を受けて環境関連株を集めたETFを作ったものの、すそ野が広がらず…という経験も。
日本を代表するインデックスETFをより使いやすく、との願いを込めて3月に立ち上げたのが「上場インデックスファンド日経225(ミニ)」だ。当初設定価格を1口1,000円と小口にして、個人投資家の敷居を下げた。一方で、機関投資家と、彼らの売買を受け付ける指定参加者の使い勝手を考慮して「現金設定型」に。指定参加者の在庫保有負担をなくしたり、ETFの設定を停止する日(ブラックアウトデー)を排除するなど、取引の円滑化を図った。

田畑邦一氏

田畑邦一氏

野村アセットマネジメント
商品企画部シニア・マネージャー
制度企画チーム チームリーダー
田畑邦一氏

ニーズを反映した商品づくりを

ETFの品ぞろえに求められるのは「陣地取り」ではない。欧米の流行りを取り入れることでもなく、目の前のお客さまのニーズを素直に反映することだと考える。

例えば昨年の第4回ETFコンファレンス直後に立ち上げたレバレッジ・インバース型ETF。規制変更などを含めて3年がかりで実現したが、現在は東証ETF売買代金のうち3割ほどを、当社ともう1社が運用するレバレッジ・インバース型が占めるまでに。また、先日上場した高配当ETFは、特に日本の金融関係の機関投資家が配当収入を非常に欲していることに着目して組成した。

ETFは上場商品であり、商品性の大部分は投資家の皆さまが作っているといえる。レバレッジ・インバース型は相場つきにも恵まれたが、今後も、大勢の投資家に参加していただける商品を作っていきたい。

大平恒敏氏

大平恒敏氏

三菱UFJ投信
執行役員 営業企画推進部長
大平恒敏氏

投資家目線の商品投入

当社はETF参入後発だが、特長ある商品を提供してきたと自負する。ETFブランド『マクシス』は現在8本。いずれも信託報酬の水準や分配金の回数などを工夫することで、残高3,000億円超にまで拡大している。

2011年7月には日経平均に連動する「MAXIS日経225インデックスファンド」をニューヨークに上場させた。狙いは米国の流動性を取り込むこと。当初は1日当たりの平均売買高は1億-2億円程度だったが、昨年は50億円ほどにまで膨らみ、さらに2月には100億円、3月は180億円に急増。米国でも日本株が注目されていることの証左といえる。

ISA向け商品を開発中

すっかり認知が進んだ欧米とは異なり、日本ではまだETFがリテールに根付いていない。当社は現在、手数料無料プログラムをカブドットコム証券と組んで進めており、来るISA開始に向けて普及させたい。

ETFはマーケットのタイミングをとらえて使うツールとのイメージがあるかと思うが、当社では現在「5年間持っていただけるETF」を開発中。日本の皆さまの資産設計に適した商品を提供したい。

塩田誠氏

塩田誠氏

野村証券
グローバル・マーケッツ部門
ETFマーケティング・グループ長

塩田誠氏

投資家別ETF志向性

機関投資家と個人投資家とに分けた場合、機関投資家は利配収入を目的にリートや国内上場企業の分配金に着目してETFを選ぶ傾向がある。最近問い合わせが多いのが業種別。内需と輸出といった具合に分散を図ったり、単発で不動産関連に投資をするといった使い方を想定しているようだ。業種別ETFは市場での売買高が見た目にはできていないため、そこを不安に感じる方が多い。一方リテールはS&P高配当など外国株の人気が高い。

ラインアップ拡充の余地

例えば外国籍ETFの購入に関する規制を撤廃するなど、日本の投資家が好みのETFを自由に売買できる環境を整えることが重要。世界には数千種類のETFがあるが、使えなければ絵に描いたもち。

小松原宰明氏

小松原宰明氏

イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
チーフ・インベストメント・オフィサー
小松原宰明氏

「サブセクター」の充実を

機関投資家とリテールとではETFとの付き合い方に違いが見られる。大学基金や年金基金、事業法人の資金運用部門などでは既に高度なETF利用がされているようだが、やはり、商品ラインアップの拡大を思わずにはいられない。例えばバリュー型やグロース型などがあれば、現状のポートフォリオを崩さず補強が可能に。

代表的なインデックスは出そろった。先述したようなサブセクターが充実すれば、投資家の利便性が高まるだろう。株式では規模別、リートでいえば住宅、あるいはオフィスだけに着目した商品なども。

課題はリテール認知度向上

日本のETFマーケットは「夜明け前」。欧米の売買状況などと比べるとまだまだ発展途上にあり、言い換えれば、今後の発展が大いに期待される、とも。

そもそも、ETF市場の活性化は何によってもたらされるのか? 供給側が投資家にとって魅力ある商品を作ることに尽きるのだが、現在の日本では、商品の存在自体が多くの投資家に知られておらず、非常に残念だ。とりわけリテールにおけるETFの認知度は低く、今後もマスコミなどを通じてETF利用のメリットを繰り返し伝えることが必要だろう。

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