「コアラップ」人気急上昇 三井住友トラスト・アセットマネジメント

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1月末純資産残高3,000億円に拡大

執行役員、総合運用部長賀來芳彦氏、営業企画部長草薙辰夫氏に聞く

賀來芳彦氏 草薙辰夫氏

賀來芳彦氏   草薙辰夫氏

三井住友トラスト・アセットマネジメントが設定・運用している「コア投資戦略ファンド(安定型)/(成長型)<愛称:コアラップ(安定型)/(成長型)>、コア投資戦略ファンド(切替型)<愛称:コアラップ(切替型)>」の純資産残高が拡大している。昨年10月に合計2,000億円を突破、今年1月末には3,000億円まで拡大している。同ファンドは、「安定型」「成長型」が2012年8月、NISA(少額投資非課税制度)専用の「切替型」は2013年10月に設定している。運用パフォーマンスも安定的な伸びを続け、外部の評価機関の評価は高い。販売面でも、地方銀行を中心に同ファンドを取り扱う動きが広がっている。同ファンドのコンセプトや仕組み、特徴、魅力などについて、同社執行役員、総合運用部長の賀來芳彦氏と、営業企画部長の草薙辰夫氏に聞いた。

■設定の経緯と背景

もともと、三井住友トラスト・ホールディングスグループの三井住友信託銀行が「ラップセレクション」としてファンドラップの提供・運用を07年から行っていたが、投資一任勘定でお客さまから運用を任せていただくラップ専用商品ということで投資単位が当初は1,000万円、その後500万円に引き下げたが、それでも金額は大きい。リテールの広いお客さまに投資していただくために、ファンドラップというコンセプトをそのままにしてリテール公募投信向けに仕立て直して12年8月から販売を始めたという経緯がある。その意味で当ファンドはラップ型ファンドの先駆の1つといえる。ラップビジネスに力を入れていたのは、2年前は信託銀行、証券会社の数社だったが、その後手数料ビジネスは、販売手数料ではなく、預かり資産額に応じて手数料を頂くストック収益を重視する営業展開に切り替える動きが、ラップ商品の取り扱いや残高の拡大につながり、その流れを受けてラップ型ファンドの投入がこのところ増えているといえる。

当ファンドはバランスファンドであり、さまざまなファンドが組み入れられているが、ポイントはその基本的なコンセプトだ。日本の投資信託の世界では、銀行の投信窓販開始以降、例えば、4資産や3資産などの資産に資産毎の配分比率を固定させて投資するバランスファンドが売れ筋だったが、08年のリーマン・ショックでこうしたタイプのバランス型ファンドの基準価額が大きく下落した。その反省も踏まえ、より安定的なファンド、落ちるとしても落ち幅を抑えて、かつ長期的には世界経済の伸びをとっていけるようなファンドの構築に迫られ、当社としても、リーマン・ショック前からあったバランス型ファンドのさらなる進化を模索し、現在のような当ファンドを作り上げた。

■3つのキーワード

当社がキーワードとして挙げているのは「増やす」「守る」「見直す」の3つだ。「増やす」は幅広い資産に長期分散投資することで世界の成長に沿って収益をしっかり取り込んでいくという考え方。「守る」は、リーマン・ショックや欧州危機のような市場急変時において、下落局面は市場環境から避けがたい中、負けは出たとしても負け幅を抑えたい。それには、短期下ブレに対する工夫が必要で、以前の運用では、基本的に、安い時に買って高い時には売るというロングの運用しかできなかったが、下落の局面でも場合によっては収益を取れるようにショートの戦法もポートフォリオの一部に取り入れてリターンの安定化を図っていこうとするものだ。「見直す」については、従来のバランス型ファンドでは、例えば、投資対象が4資産なら25%ずつの均等配分を維持し続けるというものだったが、中長期的な経済情勢や投資環境に応じて資産配分や投資対象ファンドの見直しが必要ということになった。

「増やす」「守る」「見直す」の商品コンセプトに沿ってポートフォリオを手直しするケースは主に3つのパターンがある。1つ目は、基本的に1年に1回、資産毎のリスク・リターン動向に応じて資産配分比率の見直しを行っていく。2つ目は、年1回定める基本的な資産配分比率の枠内で、組み入れるファンドを、時勢にあったものや新しい投資手法などより良いものが出てくれば、それらに入れ替える。例えば、国内物価の上昇が心配になってきたら、国内債は利回りが上昇(価格は下落)するリスクがあるので通常の国債を減らして物価連動国債を少し組み入れるなどは典型的な例だ。株式相場の上昇に確信が持てれば、株式市場上昇への追随度を高めるためJPX400を組み入れるなど、細かく組み入れファンドを変えていく。設定来数カ月に一度の頻度で組み入れファンドの入れ替えを行っている。3つ目は、四半期に1回の定例リバランス。相場が動くと値上がりしたファンドと値下がりしたファンドが出てくるので、値上がりしたものは少し売って値下がりしたものにその資金を振り替えることで、少しずつ利益を確定していく。

かつてのバランスファンドは資産配分や組み入れファンドを固定していたが、これら3つのパターンでポートフォリオを中長期的な視点からきめ細かく丁寧に手直ししていくことが、下ブレリスクへの備えにもなると考えている。

■多様な組み入れファンドと特徴

当ファンドはファンドオブファンズ形式で運用され、投資対象は内外の株式、債券、REIT(不動産投信)、コモディティ、ヘッジファンドなど多岐にわたる。昨年12月時点の組み入れファンド数は21ファンドと多い。一般的に08年のリーマン・ショックを経験した後に投入された新型バランスファンドは大きく2つに分けられる。1つは分散を徹底しつつ、細かく内容を見直すもの。もう1つは、分散はある程度しておくが、下落が訪れると判断すればアロケーションを大きく変えたり、キャッシュにしたりするリスクコントロール機能がついているもの。当社は、過去の経験を踏まえ、その時々の何らかの見通し判断に基づきリスクコントロールに向けた投資行動を起こすことよりも、セオリー通りにあらかじめ分散を徹底する立場を取っている。幅広い資産への分散を徹底する中でできるだけ相関が低い、すなわち動きが違うものを多く組み入れることが、21ファンドと本数の多さにつながっていると言える。

組み入れているファンドの中身について見ると、ヘッジファンドが多いのが特徴だ。全体の4割程度をヘッジファンドが占めている。また「安定型」と「成長型」の区分でいうと、「成長型」にヘッジファンドが多いようなイメージだが、当ファンドの場合、「安定型」の方に多い。意外と思われるかもしれないが、ヘッジファンドは株式資産などに比べてリスクが相対的に低くリターンを安定化させてくれると考えている。単一資産に比べると、ヘッジファンドの方がいろいろな手法を使って一層の分散を効かせることでリスクが抑えられて安定的な収益の積み上げに寄与すると考えている。これが1つ。また、マネージドフューチャーズなどは市場が下落しても、そこにトレンドが発生すれば下落トレンドでもうまくとらえてくれる。このような逆の動きをしてくるものを一部で保有することにより、ポートフォリオ全体としてはジグザグ(リターンのブレ)が少なくなると期待している。

■ファンドの活用

このようなミドルリスク・ミドルリターンの商品は、銀行預金金利+アルファのリターンを望まれる、銀行の保守的なお客さまにはよりマッチするとみており、三井住友信託銀行のファンドラップでの取り組みで学んだことを個人向け投資信託に生かしているといえる。個人の資金運用は長い。一つ安定したものをコアに持っていて、ほかに、株式などのリスクの少し高い投資信託に旬に応じて入れ替えるというのも一つの考え方だ。そのコアの部分に当ファンドはいかがですか、ということになる。また、その制度上の性格からNISA向け商品にも適している。具体的には、「期間が5年(延長すれば10年)」「資産の下落後の売却により損失を確定させても税制上の損益通算の対象とならない」「入れ替えのため売却すると非課税枠が再利用できない」というNISAの特徴に照らして、「資産を長い目で増やす」「下落リスクに対応する」「ひとつのファンド内で資産を見直す」などの機能を備えたファンドが適していると考えるが、当ファンドはこれらを既に持っており、NISAにマッチした商品と考えている。商品性格や、資産作りのニーズ、一方で、地方銀行などの販売会社の姿勢の高まりなどを考慮すると、ラップファンドの市場規模は拡大余地が大きいと予想している。

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