「アジア好利回りリート・ファンド」三井住友アセットマネジメント

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<h3>アジアの成長と共に進化 残高急拡大で再び脚光</h3>
株式運用グループ シニアファンドマネージャー REIT担当 秋山悦朗氏

秋山悦朗氏

秋山悦朗氏

昨年は米国の量的金融緩和縮小(テーパリング)観測を契機に苦戦を強いられた新興国市場。足元では不透明感も払しょくされて順調回復が確認されている。中でREIT(リート、不動産投資信託)への注目が高まっており、2011年9月に設定された「アジア好利回りリート・ファンド」の残高は直近1年間で12億円から455億円に急拡大している。ファンドの運用状況と今後の見通しを聞いた。

――ファンドの残高が急拡大している。

昨年5月のテーパリング観測で先進国の資金引き上げが懸念されたため、新興国の株式や通貨の下落とともに、新興国とつながりが深い香港やシンガポールのリート価格も下落した。夏以降も不安定な状況は続いたが、既に金利上昇などを織り込んだ価格水準として、利回りに対する株価の下方硬直性が機能していた。

一方では欧州リートが上昇していた。ギリシャ危機以降、軟調な推移が続いていた欧州市場は、景気の底入れが見え始めてようやく反発に転じたが、10年国債との利回り格差が縮小して、さらなる上値を目指すことは難しい状況にあった。そこで当社は資金が欧州リートから、新たな投資機会を求めてアジア・リートに向かうと予想。世界的に長期金利が低水準で落ち着いていることもあり、利回りが魅力的なアジア・リートに注目が集まるようになり、われわれのストーリーが実現し始めた。

――なぜアジア・リートなのか?

なによりファンダメンタルズが良好なため、成長イメージが描きやすい。外的要因から価格が低迷する間も、アジア・リートの業績は好調だった。アジア最大のリンク・リートは昨秋の決算で引き続き10%増配を発表。にもかかわらず株価に反応は見られなかった。なぜなら、先進国資金の引き上げはアジア諸国にとって大きな脅威。過去の通貨危機の教訓から外貨準備高などの耐性をかなり高めた状態にあったものの懸念はぬぐえず、投資家がアジアで積極的にリスクをとれる状態になかった。

こうして個別のファンダメンタルズが無視される状態が続いたアジア・リートであったが、今年に入って状況が一変。昨年12月にはテーパリングの方針が確定して“手探り状態”に終止符が打たれ、市場が落ち着きを取り戻した。あとは反発のタイミングを待つのみといった状況の中で、今年1月中旬から始まった決算によってアジア・リートの業績堅調があらためて確認されると、2月以降は香港リートもシンガポールリートも上昇に転じてきた。

――リート市場の現状を。

例えばシンガポール。当社が注目するオフィスセクターは東京の都心部と同様の状況にある。すなわち、需給が改善して空室率が低下し、賃料が上昇に転じるなど、回復が期待される局面を迎えている。一方、香港リートは上場リートが8社にとどまるが、政府が昨年11月にリートの規制緩和に関する提言を示すなど、今後の動向が注目される。また、オーストラリアではリート同士のM&A(企業合併・買収)や事業再編などが活発で、海外からも不動産投資への高い関心が続いている。

――今後の見通しを教えてほしい。

当ファンドのコンセプト「アジアの成長にベットする」は、この先も十分有効だと考える。そのよりどころは、経済成長を背景とした「中間層の拡大」、あるいは、大都市への人口集中に伴う「都市化の進展」だ。かつての日本がそうだったように、消費意欲が旺盛な中間層の拡大が続く限り、不動産市場の成長が期待できる。

また、アジアには商業施設、オフィス、物流施設、ホテル、ヘルスケア施設などさまざまなタイプのリートが上場しているため、中間層の拡大と都市化の進展、双方のメリットとも大いに享受できる仕組みが整っている。今年に入ってアジア・リート市場は10%ほど上昇したが、配当金も増加したため配当利回りは依然として高水準。10年国債利回りと比べても魅力は高い。

――類似ファンドも少なくない。強みは?

投資対象は日本を除くアジア、オセアニアのリートのみ。不動産株は含まない。利回りと経営の質が高く、分配金の持続的な成長が期待できるリートを中心にバイ・アンド・ホールド(買い持ち)戦略をとる。中小型リートも投資機会を狙う。中小型リートは高い成長性と利回りが魅力である半面、一般的に情報が断片的で流動性も低い。また、アジアへの投資は地政学リスクを常に考慮しなければならない。そこで当社は当ファンド設定よりも前の2007年から自前で独自のリサーチ体制を構築し、これが景気判断や銘柄選択に有効に機能している。

――リサーチ体制について、具体的に。

自社でアジアにリサーチ拠点を構え、さらに東京のアナリストが年2回現地へ出張してリート経営陣との個別面談や物件視察を行っている。このような地道な調査を長年繰り返した結果、リート経営陣との信頼関係も強固なものになっている。

直近では香港のリンク・リートの事例が挙げられる。これまでは既存商業施設のリニューアルのみ手掛けて年10%増配を続ける“動かぬ巨人”。にもかかわらず、今年1月に突如、中国で新規事業を始めると発表して、リスクの高まりを嫌気した売りが集中した。ところが直後に当社が経営陣と面談を行ったところ、香港での既存テナントの中国進出に応じたものであり、市場の懸念が過大であることが判明したのだ。

タッグを組むバンケは中国最大の住宅デベロッパーで、いわば“強者同士”の業務提携。なによりこの事業はバンケが高層住宅の低層部分開発を開始するに当たり、施設運営実績が豊富なリンク・リートをパートナーに選んだことで、リンク・リートの収益機会が中期的に拡大することを意味していた。加えて、リンク・リートが最近リニューアル済みの物件を売却したところ簿価を30%以上も上回るプレミアムがつくなど、あらためて優良なポートフォリオを証明して株価上昇に弾みをつけた。ちなみに6月発表の決算も13%増配と期待通りの内容だった。従来の増配傾向を維持したまま、成長ストーリーの第二幕が開かれようとしている。

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