割安銘柄の選別を常に、抜かりなく 「殿堂」入りの著名債券運用者 ダン・ファス氏(ルーミス・セイレス社副会長)に聞く 

個 別 概 況


強さの源泉はリサーチの徹底

ダン・ファス氏

ダン・ファス氏

みずほ投信投資顧問はこのほど、「インカムビルダー(毎月決算型)限定為替ヘッジ」「インカムビルダー(毎月決算型)為替ヘッジなし」「インカムビルダー(年1回決算型)限定為替ヘッジ」「インカムビルダー(年1回決算型)為替ヘッジなし」の4本のファンドを新規設定した。世界の債券・株式などを主要投資対象とする米ドル建ての外国投資信託「ストラテジック・インカム・ファンド(クラスM)」を通じて運用を行うファンドで、米国のルーミス・セイレス社(正式名称:ルーミス・セイレス・アンド・カンパニー・エル・ピー)が運用している。同ファンドのパフォーマンスは他社の同種のファンドを圧倒している。このほどルーミス・セイレス社副会長で、ポートフォリオ・マネージャーのダン・ファス氏が来日、同ファンドの特徴や魅力、米経済や金融政策などについて聞いた。

■基本スタンス

当社の運用スタンスの特徴は、1つ目はリサーチを徹底的にすることが強さの根源だ。さらに有価証券、株式にせよ債券にせよ、的確な銘柄選定にそのリサーチを生かす能力、選別する能力を持ち合わせていることが2つ目だ。3つ目は劣らず重要だが、顧客に対して強いポートフォリオを組み込むことができるように力を結集するということだ。時期にもよるが、資産分類でいえば、集中して一貫して高いパフォーマンスを誇っている。当社は特に会社の社債や株式の運用能力の高さで知られるが、ほかの分野でも非常に強い。

■運用の特徴

当社の「ストラテジック・インカム・ファンド」の特徴は、有価証券を個別に割安な銘柄をいかに組み入れていくかという点だ。市場の局面は、どの資産分類も割安な銘柄がまとまってあるものはない。そこで債券の中で割安な銘柄をいかに選別するかということになる。過去の展開を見ると、前触れもなく、市場が大きく下落する局面が何回かあることが分かる。これは買い時と思っている。それ以外は大きな下落相場はなく、上昇局面が続くということを繰り返している。しかし、大暴落がいつ来るのか事前に予知するのは難しい。従って、上がり相場の中で絶えずやっておかなければならないのは、割安になっている銘柄をいかに組み上げるのか、それを抜かりなく常にやっておくことが重要だ。

■資産構成の推移

直近の資産構成比の傾向は当面続く。しかし、過去の推移を見ると、資産構成の比率が大きく変わるのはむしろ少ない。これまで2つ、節目が大きく変わっていると思う。1つ目は2005年9月ごろから投資適格の社債をそこで増やしている。その後は徐々に減らしてきているが。2つ目は、普通株をリーマン・ショック後の11年9月に増やした。その後、株式は一部をいったん売却し、その売却も一巡している。現在、株式の組み入れを増やす局面は終わりに差し掛かっているという状況にある。

通貨別に見るとファンドの75%は米ドル建て。アメリカの市場規模が大きいため、おのずとそうした比率となっている。特に社債や株式といった企業が発行体となっているものはそうだ。米ドル以外は25%だが、一時40%まで上昇したことがある。カナダドル建てが大きく減ったのが近年のファンドの特徴だ。カナダドル建てが20%を占めていたこともあった。カナダの地方債が多かった。

■米金融スタンス

FRB(米連邦準備制度理事会)は数年にわたって資金供給を行ってきたが、より雇用が力強いと確認できれば、金融政策は変わり始めると考えている。もっとも、引き締めまでははるか遠いと考えている。区別して考えなければならない。テーパリング(量的緩和の縮小)、これまで下支えとなっていた資金供給を徐々に縮小するというイメージだ。引き締めは、短期金利を市場プレッシャーよって押し上げるという政策転換近い将来に起こらないという想定で言うが、短期金利がより正常なレベルに戻していくことを、むしろ政策的に促すのが、私の言う引き締めだ。

■当面の米経済

アメリカ経済は、強いものと、弱いものとが混在している。成長はしている。しかし、13年10-12月期は若干減速している。連邦政府が歳出削減で一定の予算を縮小したことが1つ目の要因として響いている。2つ目は、中部から南部を含めて東海岸一帯が先週、寒波に見舞われて、重要なクリスマスを前にしたシーズンに、店舗の小売売り上げが減ってしまった。これは、ほかの経済にも影響を与えよう。

■今後の米金利

米金利については、短期金利は上がらない、超低金利が続くだろう。長期金利の10年国債利回りは来年多少上昇するだろう。最初の金利の上がる局面は、一部は既に始まっている。今後、1年先ぐらいで見ると、これは現段階のシナリオと考えていただきたいが、50-75ベーシスポイント(0.5-0.75%)は上昇するとみている。特に年末にかけて、11月の中間選挙後に上昇すると想定している。当局が長期金利の上昇を抑制する対応をしてくると予想されているが、このスタンスもある程度効果が発揮されよう。

■プロフィール

ダン・ファス氏 ルーミス・セイレスには1976年から勤務。現在、同社副会長兼ポートフォリオ・マネージャー。同社の旗艦ファンド、ルーミス・セイレス・ボンド・ファンド(2010年、モーニングスター・マネジャー・オブザ・イヤーを受賞)、ストラテジック・インカム・ファンドなど計8つの公募投信を運用。2012年にはインスティテューショナル・インベスター誌のマネー・マネジメント・ライフタイム・アチーブメント(資産運用生涯業績)賞、リッパーのエクセレンス・イン・インベストメント賞を受賞。2000年に債券アナリスト協会の選定する「殿堂」入りを果たした。マルケット大学にてBS(理学士)およびMBAを取得、1955年から58年には米海軍で大尉として従軍。

ルーミス・セイレス運用「インカムビルダー」の魅力

みずほ投信投資顧問営業企画部長吉野佳孝氏

みずほ投信投資顧問が設定した「インカムビルダー(毎月決算型)限定為替ヘッジ」「インカムビルダー(毎月決算型)為替ヘッジなし」「インカムビルダー(年1回決算型)限定為替ヘッジ」「インカムビルダー(年1回決算型)為替ヘッジなし」の設定の動機や特徴、魅力などについて、同社営業企画部長の吉野佳孝氏に聞いた。

■ファンド設定の背景と特徴

当社は、ルーミス・セイレスが運用する「ストラテジック・インカム・ファンド」という長期間にわたって素晴らしいトラックレコードを残しているファンドをどうしても日本に導入したいと考えてきたが、今回、同ファンドをもとにした新ファンド「インカムビルダー」を12月に設定した。当ファンドの投資対象は国債・政府機関債、投資適格社債、ハイイールド社債、転換社債、資産担保証券、バンクローン、株式、REIT(不動産投信)と、世界のさまざまな種類の債券・株式などに投資する。従来の分類ではバランス型だが、当ファンドには3つの特徴がある。1つ目はインカムに非常に注目して運用されるファンドであること。2つ目は割安な銘柄に注目して資産配分を柔軟に変更するのが特徴。従来のバランス型ファンドでは、リーマン・ショック前にブームになったものは、あまり資産構成を動かさないものが多く、こうしたファンドと一味違うファンドとなっている。3つ目は2つの為替コースがある。「限定為替ヘッジ」と「為替ヘッジなし」だ。また、優れたトラックレコードがある。われわれが押したい、当ファンドのコンセプトとしては、インカムを重視することと割安な銘柄にアロケーションを移していくことだが、実際に長い運用実績があることを強調したい。1995年からの実績を見ると現在まで価格は6倍となっている。その半分のリターンがインカムからもたらされたもの。インカムは着実に積み上がるもので、当ファンドの商品名にした「ビルダー」はそこから名付けられたものだ。また、インカムの良いところは、積み上げられたその分のバッファーがあるのでリスクが取れるということだ。機動的な資産配分については、実際には個々の銘柄の割安度合いに応じて資産配分が変わっていくが、一つの例としては景気が良くなっていく前に株やハイイールド債が割安な状態になっていれば、そうしたものに配分して、その後、景気が良くなればリターンが生まれる。逆に金利が下がっていく場合、無理にクレジットや株式のリスクを取っていくのではなく、国債や投資適格債に投資して、高いキャピタルゲインを狙っていく。実際の過去の資産配分の推移を見ると、例えば、2011年9月に株式のウエートが大きく上昇した。最近、長期金利が低下し、一方で株式の割安度合いが高まったことで、アロケーションが変更された。いわば旬な時に旬なものに投資をしていくということだ。

■商品開発の思い

1月からNISA(少額投資非課税制度)が始まる。背景には、財政を見ても社会保障のコストがかなり高くなってきて、これ以上国債にも依存できないという状況がある。政府としては自己責任において老後にきちんと備えてほしいということで税制優遇を行っているのではないか。NISAだけでなく、DC(確定拠出)年金の拠出額拡大とか、日本版IRAの導入検討が話題になっている。しかし、個人の方にお好きにどうぞと言ってアロケーションを勧めてもプロでも難しい業だ。本当はプロにお任せするファンドが良いが、どのような投資なら安心してお任せできるのか。インカムをきちんと獲得して、その中で賢いアロケーションをしていくファンド、そして実績のある運用会社にお任せするのが良いという、そうした考え方でローンチに至った経緯がある。もう1つ重要な点は、足元、金利が史上最低水準にあるということだ。最近は、NISAの対応商品としてはリスク限定型のバランスファンドが多く出ているが、リスクを限定しようと思うと国債のような利回りの低いアセットをかなり入れないといけない。これはフィーを取ってしまうとマイナスになりかねない。投資信託で運用に対してフィーを払って運用をお任せするのであれば、賢くリスクを取って高い運用益を狙う。リスクを取り過ぎないのであれば少しだけ買えばいいのであって、何も国債のような低リスクで低リターンのものをいっぱい組み込んだファンドに高いフィーを払わなくてもいいのではないか。リーマン・ショックを経て優れたパフォーマンスを一貫して継続しているファンドは非常に少ない。当社はルーミス・セイレス社と長いお付き合いがある。これをきっかけにいいファンドを提供していただき、喜ばしいことと思っている。

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