グローバル経済、マーケット「2014年見通し」 シュローダー・インベストメント・マネジメント 

概 況


「住宅」牽引し米国3%成長可能 日本株は日銀追加策で上昇へ

チーフ・エコノミスト&ストラテジスト キース・ウェイド氏語る

キース・ウェイド氏

キース・ウェイド氏

シュローダー・インベストメント・マネジメントではこのほど、英国グループ本社のキース・ウェイド・チーフ・エコノミスト&ストラテジスト(写真)が来日。「グローバル経済:マクロとマーケット・2014の見通し」と題して記者説明会を開催した。同氏の発言内容は以下の通り。

【世界経済】

主要国のGDP(国内総生産)成長率推移は、2009年のリーマン・ショック時、一様に落ち込んだが、その後の回復基調は各国でまちまちとなっている。中で、最も目覚ましい復調を示したのは米国。これに続くのがドイツだ。欧州経済はまだ厳しいと思う向きには意外だったかもしれない。実際、スペインやイタリアなどに足を引っ張られるユーロ圏全体で見れば、回復は緩やかなペースにとどまっている。そして、米独に続く回復を示しているのが日本。アベノミクス政策の恩恵と思われる。もっとも、まだ、「平時」とも言える(金融危機前の)08年1―3月期の水準までは立ち戻っていない。その意味でも、まだ上がり目を残していると言えるだろう。G7(主要7カ国)の景況感を示す指標は、このところ好転を示し、鉱工業生産指数もプラスに転じてきている。これは、今後の世界の経済活動活発化を示唆するもの。来年、世界のGDP成長率は3%になると予想している。今年の2.5%から、さらに加速することになり、前年の伸び率を上回れば、3年ぶりのことだ。

【米国経済】

米国の経済活動は平時に回帰しつつあり、比較的、楽観視している。来年のGDP成長率は3%を試算する。

背景としては、住宅市場の好転が挙げられる。住宅価格が上昇を続けているためだ。住宅着工の本格的な回復はまだ先だが、価格上昇は、建設会社の収益性向上をもたらす一方、一般家庭のバランスシート改善にもつながり、今後の住宅建設を牽引(けんいん)していくものと考えている。従来、住宅ローンで住宅購入した世帯の約25%が含み損を抱えていたが、最近では約15%まで低減してきた。差し引き10%の世帯は、今後、借り換えをして、新しく住宅を購入することもできる。ここで超低金利政策が効果を発揮するわけだ。

米国景気が加速へと向かっていることを示す材料には他にも、ISM(供給管理協会)景況感指数が製造業、非製造業ともに上向いてきていることも挙げられる。

なお、今後の経済活動の方向性を占う上では、財政政策の分析も重要だ。ここ数年は緊縮財政が施行され、13年も、GDPの2%程度に相当する財政緊縮が実施された。年初の増税などによるものだ。一部では、「米国の経済にはそれほど勢いがないのではないか」といった声もあるが、緊縮が成長を阻害していることを踏まえれば、表面的な成長率が1.5%だとしても、実質的には、さらに2%分上乗せした成長が実現できたことに着目したい。来年の“緊縮度合い”が今年を下回るとみられることから、前述した14年の3%成長は十分可能だとみている。

こうした状況下、14年は成長率にも一段の低下が見込まれ、おそらく来年3月くらいからQE3(第3次量的緩和)の縮小も開始されるのではないか。現在、想定されるのは、FRB(米連邦準備制度理事会)がQE3縮小開始と同時に、フォワードガイダンス(今後の見通し)を改定し、あらためて利上げ時期なども示唆することだ。現時点では、利上げに向かう“閾値(しきいち)”は「6.5%」だが、「6.0%」に下げられるとみている。実際に金利が引き上げられるのは再来年15年末を想定している。

【欧州経済】

ユーロ圏を中心とした欧州経済は、景気循環を表す指標で見ると、米国と同じような軌跡をたどっており、これはGDP増加の時期に差し掛かっていることを示唆するものだ。とはいえ、これからも欧州と米国が同じ道筋をたどるわけではない。ユーロ圏の回復ペースは持続可能とは言えない。米欧の差は、バンキングシステムの違いにある。米国で融資が伸び始めているのに対して、欧州では、まだ融資が低減しているためだ。というのも、欧州では、バンキングユニオン形成の準備段階として、ECB(欧州中央銀行)が各銀行のバランスシート検証を進めているためだ。欧州の銀行の大半では、自己資本の引き上げを要請される可能性があるとみて、融資圧縮に動いており、これがマクロ経済の抑制要因となる。ユーロ圏の成長率は1%程度にとどまるのではないか。

米国でFRBが利上げの機会をうかがう環境となる一方で、ユーロ圏の成長率は高まらず、ECBは金融緩和を試みることになりそうだが、既に打つ手はなくなりつつあり、限定的な施策にとどまるだろう。

【日本経済】

商工中金の中小企業景況判断指数が上向きにあるなど、各指標は今後のGDP成長を示唆するものになっている。消費者物価指数も0%を超え、ようやくインフレに転じてきた。ただし、円安に伴う輸入物価上昇に押し上げられた面が強く、今後も持続させていくためには賃金上昇が不可欠だろう。日本経済にとっての懸念要因を挙げれば、来年4月の消費税率引き上げ(5%→8%)となる。他国の例でも、国家財政が緊縮に転じると、GDP成長にとってマイナス要因に作用してきた。おそらく、こうした状況に対応すべく、日銀がさらなる金融緩和(貨幣増刷)を続けるとみている。これを受けた通貨の減価から、為替は14年末には1ドル=110円まで円安が進むと思われる。ドルは、対円、対ユーロともに上昇しそうだ。

【中国経済】

最近の動きとして、中国の信用状況は大きく改善したが、これが一方で、成長鈍化にもつながっている。中国政府や金融当局によって、シャドーバンキングによる融資を減らすための施策が打たれているためだ。

中国の実質GDP成長率は現在7.5%程度まで低下し、中国経済を悲観視する向きも多い。もっとも、成長鈍化と同時にインフレ率も低下しているため、名目GDPで見れば、金融危機前の水準に近づいている。

これまで中国経済を牽引してきた要因である「輸出」の推移を見ると、00年のWTO(世界貿易機関)加盟後に大きく伸びたが、リーマン・ショック後の米欧需要急減を受けて減速。これを補完すべく、「投資」を増やしてきた。政府や銀行が融資元、出資元となったわけだが、これらが不良債権化していくだろうと推測している。こうした状況を解消していくには消費支出を増やしていくしか手立てはない。その辺は政府も分かっている。ただし、長期間の政策であって即効性がないため、短期的な成長にはつながっていかないだろう。

米国のドル高がしばらく続く一方、中国の減速も続くとみており、2年間にわたってコモディティ価格の低迷が続くのではないか。

【米国QE3縮小】

これまで米国QE政策の実施や縮小と、市場の「リスク・オン」と「リスク・オフ」のタイミングが符号してきた。今後のQE3縮小が世界経済への影響を与えるのかを見る上では、今夏の経験を実験台として検証することができる。米10年債利回りが2%から9月には3%まで上昇し、その後、若干上向いて推移していたが、年末時点では3%程度で落ち着くと考えられる。利回りは高止まりしていて、最初にQE3縮小が示唆された今春とはスタート地点が違うため、債券市場には既に、ある程度織り込まれたと見られる。実際にQE3縮小が開始されてもポジション的には大きなショックは生じないだろう。また、投資家調査などを見ると、依然として新興国資産を減らすとの回答が多く、新興国通貨に対しても、既に織り込み済みなのではないか。

【株式市場】

引き続きポジティブに考えている。当社のポートフィリオにおいても、株式は「オーバーウエート」の状態だ。債券と株式の利回り格差(イールドギャップ)が縮小しており、今後、増配による利回り上昇も期待できる株式のパフォーマンスが、債券を上回るだろう。これまでのFRBの金融引き締め局面を見ても、株式はアウトパフォームしてきた。金利上昇は債券相場にマイナスに作用する一方、利上げは成長に支えられたものであることから、株式にはプラスに働いてきた。

【日本株式】

日本株に対しても前向きだ。当社では、米国への投資の大半を株式に振り向けてきたが、米国株はここ2、3年、非常に強い株価推移をたどってきたことから、欧州株や日本株へのスイッチをし始めているところだ。

日本株はおそらく、当面、堅調さを続けるだろうと考えている。経済成長が下支えとなっている。そして、来年の上昇は円安に起因することになるのではないか。日銀の追加的な資産買い入れ実施が背景となろう。

キース・ウェイド氏の略歴
ロンドン在住のチーフ・エコノミスト。シュローダー・グループ内のエコノミックス・チームを統括、世界経済に関するシュローダー・グループの見解をまとめる。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)卒、経済学修士号、経済学士号取得。ロンドン・ビジネススクール(ロンドン大学)経済予測センター研究員として活躍後、1988年にUKエコノミストとして入社。92年グローバル経済予測担当シニア・エコノミスト就任。英国投資専門家協会会員。英国企業エコノミスト協会会員。ケンブリッジ大学アッデンブルックス病院慈善基金投資委員会メンバー。
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