中小型株式市場の動向と注目点 フィデリティ投信 運用担当者2氏が語る

概 況


フィデリティ投信ではこのほど、「フィデリティ・日本小型株・ファンド」などを運用する檜垣慎司(ひがき・しんじ)氏と、今年9月末に新設された「フィデリティ・日本変革ファンド」の運用を担当する松井亮介(まつい・りょうすけ)氏がそれぞれ足元の市場の見方や銘柄選定ポイントなどについて、記者向けに語った。その要旨を紹介する。

檜垣慎司氏

檜垣慎司氏

ボトム・アップ・リサーチで割安株を探す

「フィデリティ・日本小型株・ファンド」など
ポートフォリオ・マネージャー 檜垣慎司氏

まず新規公開企業数と初値カイ離率の推移を見ると、今年は初値カイ離率が2倍、3倍にも跳ね上がる銘柄が結構多く出ている。これは、2004年、2005年のITバブル期以来の現象だが、当時と今との大きな違いは公開企業数が今の方が圧倒的に少ないことだろう。今年は50社にも満たない水準だが、逆に言えばそれだけ厳選されて、魅力的な会社が出てきているからとも言える。

そうした中で、ユニークなビジネスモデルの会社も多い。例えばNフィールド。同社は、精神疾患を抱える患者の訪問看護事業に特化。日本では看護士が恒常的に不足しているが、同社では金銭面での保障などを手厚くしている。また、精神疾患患者のサポートは単にニーズが高いだけでなく社会的な役割も大きい。

中小型株のバリュエーション

ROE(自己資本利益率)が高いにもかかわらず、PBR(株価純資産倍率)が1倍前後に放置されている会社は多い。また、EPS(1株当たり利益)の成長率が高いにもかかわらず、PERが10倍程度の会社も多い。その一方でPERが30倍、40倍でEPS成長率が低い会社もある。マーケットのセンチメントと呼応するように、割高でも買われる株を買うのではなく、フィデリティのボトム・アップ・リサーチで割安株を探る。

投資テーマとしては

(1)「省エネルギー・再生可能エネルギー関連需要の開拓」 参考企業にはサニックス(4651)タクマ(6013)オーデリック(6889・JQ)遠藤照明(6932)スタンレー電気(6923)など

サニックスについては、2015年に太陽光の買取価格が1kW当たり30円(現状は37.8円)に下がるとの報道が出ていたが、個人的にはポジティブととらえている。昨年度からの3年間をもって利用促進期間が終わるとの危惧(きぐ)があったが、2015年以降も制度が存続する可能性が出てきたことがポジティブ。設備認定は取ったものの、未着工のソーラーは数多くある。これをこなすのが今年・来年であり、さらに制度が存続すれば太陽電池の新規導入がその後も続くことになろう。

(2)「世界を惹きつける地域資源やコンテンツの有効活用」 参考企業には富士急行(9010)サンリオ(8136)フジ・メディア・ホールディングス(4676)リゾートトラスト(4681)など

世界遺産の国別の数と外国人訪問者の数を見ると、観光立国はフランス、スペイン、イタリア、中国、米国など。人件費が高くなった日本などの先進国においては、長い歴史や深みのある文化を海外に発信・訴求し観光客の誘致に努めることも必要だ。日本には世界に誇れる文化や資産がある。円安も追い風だ。

富士急行については、鉄道事業はもともと固定資産が非常に大きな資本集約型産業で限界収益率が高いが、鉄道やバスの路線、ホテルなどの資産が今後ますます活用される可能性は高い。世界遺産に登録されたことでより多くの観光客が富士山を訪れれば、利益の伸びを大きくけん引する可能性が高い。

(2)「アベノミクスを追い風に活力増す人材サービス業」 参考企業にはテンプホールディングス(2181)リブセンス(6054)エムスリー(2413)など

現状(2013年9月)の有効求人倍率は0.95倍と、2006年、2007年のピークに迫る勢いで上がってきている。一部サービス業、建設業では人手が足りないとの声が聞かれる。そこで恩恵を受ける可能性がある会社として、リブセンス。村上社長率いる同社の最大の特徴の1つは、人材を募集する企業側にも費用がムダにならないような「成功報酬型」のビジネスモデルにある。

松井亮介氏

松井亮介氏

プライシングパワーと企業変革の有無で銘柄選択

「フィデリティ・日本変革ファンド」
ポートフォリオ・マネージャー 松井亮介氏

投資方針としては、(1)わが国の金融商品取引所に上場されている中小型株式を主要な投資対象とし、投資信託財産の成長を図ること。(2)主として中小型株の中から、市場平均などに比較して成長力があり、その持続が長期的に可能と判断される企業を選定し、利益などの成長性と比較して妥当と思われる株価水準で投資を行うこと。(2)個別企業の分析にあたっては、日本および世界の主要拠点のアナリストによる企業調査結果を生かし、ポートフォリオ・マネージャーによる「ボトム・アップ・アプローチ」を重視した運用を行うこと。

銘柄選択ではまず、プライシング・システムが確立されているかどうかを大切にしている。具体的には、(1)価格競争に巻き込まれにくい売値決定方式が採用されているか、(2)不毛な消耗戦に陥る懸念が小さく、数量効果を享受できるか、(2)差別化された技術力やブランドを保有しているかどうか――といった点を吟味しながら企業を選ぶ。

次に市場で見落とされている割安で投資価値の高い銘柄の発掘。具体的には、(1)ビジネスモデルや収益構造が市場で理解されていない、(2)企業に起きている変化が株価には織り込まれていない、(2)ディスクローズの姿勢や株式の流動性を理由に投資家から敬遠されている――銘柄などを見極めて投資する。

10月末時点での組み入れ上位10銘柄は、江守商事、ユアサ商事、大和工業、シークス、ラウンドワン、大同メタル工業、三菱鉛筆、日鉄住金物産、ニチハ、東洋エンジニアリング。これらの上位10銘柄で、ポートフォリオ全体の50%ほどを占める。

安倍政権発足以降、政治変革の機運が醸成されつつあるが、さまざまな“ 変革”が見過ごされがちな中・小型株市場には、豊富な投資機会が存在する。『フィデリティ・日本変革ファンド』の運用においては、企業のそうした変革をいち早く見いだし、株価が割安なタイミングで投資することを目指す。

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