グローバルマーケット下半期の見通し JPモルガンAM

概 況


JPモルガン・アセット・マネジメントは10月31日に報道関係者向けセミナーを開催。米国、日本、新興国経済の現状と今後の見通しが語られた。スピーカーは、グローバル・マーケット・ストラテジストの重見吉徳氏。同社が投信販売会社向けに最新マーケット情報のインプットやフォローアップなど各種情報発信を行う、販売支援プログラム「マーケット・インサイト」専任のストラテジストを務める。

重見吉徳氏

重見吉徳氏

グローバル・マーケット・ストラテジスト 重見吉徳氏

米国/懸念多い労働市場に注視

■財政問題は根本解決の可能性も

先ごろ米上下両院は来年1月15日までの暫定予算と、2月7日までの国債発行を認める法案を可決。16日間に及んだ政府機関の閉鎖は解除され、米国がデフォルトに陥る事態は回避された。

「来年早々にも再び同様の事態が生じる」との見解も聞かれるが、当社ではその可能性は低く、むしろ、1月16日以降に再び政府閉鎖が生じる可能性は低くなったと考える。共和党が大きく支持率を落としたことが各種世論調査で示されており、多くの共和党員は同じ轍を踏みたくはないと考えている可能性がある。

何より財政赤字は減っており、「小さな政府」を求める共和党側との根本的な対立点は以前よりも小さくなっている。債務上限問題がS&P格下げを招いた2011年度の財政赤字はGDP(国内総生産)比8.4%と、リーマン・ショック後の09年度の9.8%と比べてほぼ横ばいだった。しかし昨年度は3.9%にまで低下しており、今年度は3.4%にまで低下する可能性が。

■量的緩和は1-3月か?

当社では来年1月あるいは3月のFOMC(米連邦公開市場委員会)時点では、米国が量的緩和縮小を検討できるような状況にあるとみる。そもそもなぜFRB(米連邦準備制度理事会)が量的緩和縮小に踏み切ろうとしたのか。当然、景気が改善を示していることもあるが、出口戦略の混乱を和らげたいとの意向も。FRBの資産は年末には4兆㌦に、準備預金も2.5兆㌦にまで拡大する見込みだが、FRBは債券などこれら資産を売却せずに償還まで持ちきることで徐々に資産を縮小させるとの出口戦略を目指す可能性が高い。FRBは、完全雇用と物価安定が実現した際に妥当とするFF金利4%の実現を目指すものの、資産が縮小する中での利息負担の増加が懸念されている。

■労働市場は“まだら模様”

5月末に緩和縮小に言及したことで住宅金利が上昇。住宅価格は上昇し、住宅着工指数は足元で横ばいとなる中、FRB自身が住宅市場の冷え込みの可能性を指摘している。所得の伸びが低調なためで、所得、住宅価格、ローン金利から住宅取得能力を示す指数「アフォーダビリティ・インデックス」は、08年11月以来の低水準に。過去3度の量的緩和の効果を吹き飛ばしてしまった。

経済自体は回復から拡大局面に移っている。しかし労働市場は“まだら模様”で、目に見える失業率は低下しているものの、個別に見ると懸念は多い。全体失業率は昨年8月の8.1%から、今年8月には7.3%にまで低下。ただし、全米50州別に見ると、全体低下率0.8ポイントの半分未満、0.3ポイント以下しか低下していない州が半分あり、逆に12州では失業率が上昇している。

■為替/ドル円は103円台目指す

ドル円は3、4月にも103円台を目指すとみる。来年1-3月はFRBによる量的緩和の縮小が開始され、日銀による追加緩和も想定される。

日本/デフレ脱却をより確実に

図1

図1

米国やドイツの株価は最高値更新、スペインやイタリアも年初来高値を更新するも、日本はいまだ高値まで距離を残す。バリュエーションは割安。景況感も良い。しかし、他国も同様に景気改善傾向にあるため、「ならば年初来騰がってしまった日本は避けよう」といった心理が働いているようだ。

百貨店売上高や首都圏マンション新規販売戸数などの消費関連指数は、過去の特殊要因を除けば20年ぶりの改善を見せている。足元では企業の中間決算が出そろいつつあり、通期業績予想を引き上げる動きも。ただし、今年は消費増税前の駆け込み需要が含まれており、来年はその反動による鈍化が予想される。こうした「需要の先食い」は、企業活動や賃上げにも悪影響を及ぼす可能性があり、日銀は、もう一段の金融緩和を行う可能性があるとみる。

■日経平均は1万8,000円を志向

図2

図2

少しずつだが、足の長い海外投資家による日本株への投資が確認されつつある。成長と財政再建の両立が難しいことは欧州が教えてくれたものの、海外投資家はひとまず、消費税引き上げと5兆円の経済対策については一定の評価を与えているようだ。

株価はリーマン・ショック前の1万8,000円が次のフシ目に。これを越えていくには、日本が“普通の国”になっている必要がある。すなわち、緩やかなインフレが持続的に生じる環境であり、そのためには賃金の引き上げが必須。現金給与総額は足元で上昇基調にあるが、特別賞与ではない「定期給与」の本格上昇はこれから。これまでの日本経済の堅調の原因は資産効果によるところが大きく、名目GDP成長率が2-3%上昇するような状況を待ちたい。

新興国/選別的な投資が重要

図3

図3

アジア通貨危機のような状況を危惧(きぐ)する声も聞かれるが、それは行き過ぎだろう。多くの新興国では外貨準備高が潤沢で、IMF(国際通貨基金)によれば、新興国の外貨準備は1,997年の6,000億ドル強から、2,013年第1四半期には7兆4,000億㌦にまで拡大している。

そもそも世界経済全体には明るい兆しが見られる。製造業PMI(購買担当者指数)は米国、ユーロ圏、中国、日本ともすべて50を上回り、かつ上昇基調に(図1)。製造業PMIがこのような傾向にあるとき、その後3カ月間の株式市場のパフォーマンスが良いというデータがある(図2)。

地域別に通貨を見ると、中南米ではブラジルよりもメキシコが、購買力平価の観点から割安度が高く魅力的。アジアではインドの割安度が高いものの、経常赤字額や流動性などの観点からインドネシアの妙味が高いと考える。実質GDP成長率と政府総債務比率を見ても、メキシコ、インドネシアの方がそれぞれ債務残高が小さく成長性も高い(図3)。

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