欧米経済の現状と今後の見通し ドイチェAM マクロ展望 記者説明会

概 況


債務危機からの脱却、欧州経済は新たなステージへ

ドイチェ・アセット&ウェルス・マネジメント
共同チーフ・インベストメント・オフィサー(CIO) アソカ・ヴァマン氏

アソカ・ヴァマン氏

アソカ・ヴァマン氏

2010年のギリシャ債務危機が発端となり、ユーロ圏では約2年もの間マイナス成長が続いていた。しかし、13年4-6月期のGDP(国内総生産)は前年同期比0.3%増と、7四半期ぶりのプラス成長となり、ユーロ圏は戦後最長のリセッションから抜け出しつつある。ドイチェ・アセット・マネジメントは10月24日、同社が所属するドイチェ・アセット&ウェルス・マネジメント(ドイツ銀行グループの資産運用部門)の共同CIO(最高投資責任者)であるアソカ・ヴァマン氏を招き、マクロ展望をテーマにした説明会を開催。米国・欧州を中心とした世界経済の現状と今後の見通しが語られた。

マクロ経済見通し/2014年は景気回復が顕著に

14年は主要国がそろって成長を遂げるだろう。先進国、新興国ともに上昇に転じるのはリーマン・ショック以降で初めて。米国については3%、ユーロ圏は0.7%、中国は7.5%、日本は1.4%のGDP成長率が見込まれており、ようやく世界経済が正常化することが期待される。

注目は株式。特に欧州および日本株、そして米国株上昇の余地があると考える。あるいは企業業績の改善を想定してスプレッドのある資産、ハイ・イールド債券、投資適格社債などにも注目している。

米国/通常の景気サイクルにシフト

「雇用」「住宅」市場は改善

図1

図1

わずか5年前には1930年の世界恐慌の再来が懸念されていた米国だが、今や実質GDPの推移は、リーマン・ショックやサブプライム問題を経てなお経済活動が上向き、足元では過去最高水準に達しているという“現実”を示している。(図1)。

16四半期連続で成長を続ける米国。景気の上向きは「労働市場」「住宅市場」「株価」、3つの要素から読み取れる。

まずは「労働市場」。新規失業保険申請者数の低下とともに失業率も低下。直近9月の雇用統計の内容は事前予想を下回ったものの、おおむね堅調といえる。失業率は足元で7%台と、かつての好景気時の水準4-5%には達していないが、改善傾向が続くなど、労働市場の“活性化”が確認される点はポジティブ。

続いて「住宅市場」。大都市のみならず、郊外でも住宅価格が上昇。新規着工率も、サブプライム問題以前の水準には至っていないが上昇傾向にある。住宅関連指標は、消費意欲をくすぐるためにも、景況感を見る上でも非常に重要で、何より“安定”していることが好ましい。

図2

図2

株価倍増で消費マインド良好

そして「株価」。NYダウは4年で7,500ドルから1万5,000ドル超と倍増。米国人は日本人よりも株式保有者が多く、彼らの消費行動が刺激されたことは想像に難くない。

米国の家計状況を見ると、かつては住宅の価値が一部の地域で60%も下がり、所得レベルも下がったため貯蓄に走るよりほかなかったが、足元ではようやく資産が負債を上回ってきた(図2)。今後は消費活動がさらに活発化して、米国経済を押し上げることが期待される。

欧州/待ちに待った景気回復局面へ

かつて聞かれた「ユーロ崩壊」は非現実的なシナリオであり、われわれは、国ごとの程度の差はあるにせよ、欧州経済は全体的には回復に向かうと考える。

図3

図3

ユーロ圏の景況感指数は好・不況を示すラインを上回っており、景気後退局面からの脱却が鮮明だ。また、ソブリン危機は南欧諸国の経常収支が赤字だったことが主な要因だが、足元ではGIIPS(ギリシャ、アイルランド、イタリア、ポルトガル、スペイン)の経常収支の平均が黒字に浮上している(図3)。そして14年にはGIIPSすべての国の財政収支はプラスに転じることが予測されている。GIIPS諸国では若年層の失業率が35-50%と高く、これが政治不安に結び付いていたのだが、この問題を各国首脳がようやく認識。対策を講じようという動きが出始めている。今後は雇用創出→消費拡大という根本的な解決が期待される。

ECB(欧州中央銀行)は政策金利をユーロ圏全体で一律0.5%とするが(注:11月7日に0.25%に引き下げ)、国別の経済状況にバラつきがあり、こうした伝統的な金融政策はもうままならないことは明白だ。テイラールールが的確とする金利が、ドイツは4%ほどであるのに対して、スペインはマイナス9%ほど。あるいは、企業向け「新規ビジネスローン金利」を見ても、欧州中核国が5%ほどなのに対して、周縁国は2-3%ほどと大きな開きがある。

そこでECBはドラギ総裁の着任以降、短期金利の上昇を防ぐために2度のLTRO(長期資金供給オペレーション)を実施した上に、OMT(国債買取プログラム)を導入。「いかなる措置も辞さず」との強い態度で奮闘を続けている。結果、ドイツ国債と周縁国国債との金利差は縮小傾向に。こうしてECBは今後も3年程度、緩和策を続けるとみる。

日本/日経平均は5年で2倍を目指す

来年は1ドル=110円ほどにまで円安が進むとみており、業績改善が期待される輸出関連、あるいは、アベノミクスでデフレ脱却してインフレへ転換すると、消費財など内需株にも妙味が。一方で低金利政策は継続される見込みであり、実質マイナス金利が発生すると考えられる。その結果、資産保全のために企業は設備投資を増やし、投資家はリスク選好の高まりから株式投資へ向かうことが期待される。

ただし、アベノミクスの第2、第3の矢は実行までに時間を要するとみられ、投資には5年ほどのスパンで臨みたい。中小型株も対象とすればより大きな恩恵を享受できるだろう。

海外投資家はいまだに日本株をアンダー・ウエートとしているが、この先、見直す必要性があるだろう。2020年の東京オリンピックが灯台のような役割を果たし、世界の投資家を引きつけることが期待される。

戻る