米英年金、DB(確定給付型)からDC(確定拠出型)への移転進む フィデリティ投信「米英DCセミナー」開催 

概 況


トレンドはTDF(ターゲット・デート・ファンド)など分散型

フィデリティ投信は10月15日、「米国・英国のDC最新事情」をテーマにセミナーを開催。DCに精通する両国の担当者が来日して、それぞれの国の加入状況やラインアップの変遷など最新事情が解説された。

第1部/米国DCにおける商品ラインアップの変遷と課題

チャック・ブラック氏

チャック・ブラック氏

フィデリティ・インベストメンツ
シニア・ヴァイス・プレジデント チャック・ブラック氏

米国DCビジネスの現状

近年はDBからDCへの移行が進んでいる。米国フィデリティにおけるDCビジネスの変遷を見ると、顧客数は2001年6月末時点の8194件から13年6月末時点は1万9468件に、加入者数は710万人から1650万人と2.3倍に拡大。受託資産残高は4203億ドルから1兆2000億ドルと約3倍に拡大している。

継続拠出がもたらす恩恵

足元の平均資産残高は8万600ドルで、1年前の7万2800ドルから10.7%増加している。ところが10年間拠出を継続している加入者に限って見ると、平均残高が全体平均を大きく超えていることが分かった(図参照)。10年間継続拠出者の足元の平均資産残高は21万1800ドルで、10年前の5万1700ドルから年間15.1%のペースで増加している。
平均資産残高

投資先/分散志向が鮮明に

資産額ベースで見ると、株式型の配分が減少する一方で、ターゲット・デート・ファンド(以下、TDF)など「ブレンド型」の増加が顕著に。

かつては多くの加入者にとって株式への配分は「100%」もしくは「0%」の二択だった。しかし、TDFの利用増加に伴って偏ったポートフォリオは減少。「100%」「0%」とする加入者の割合は03年上半期の40%から、直近では16%にまで低下している。

足元ではTDFに100%資産配分している加入者の割合は32%ほど。03年は2.4%にとどまり、昨年の28%からも大きく増加している。現在はTDFがデフォルト・ファンドに指定されていることからも、30歳未満の新規加入者のうち53%がTDFに100%配分している。

TDF導入普及により、この12カ月間でスイッチングを行った加入者は10%ほどにとどまっている。DC加入者全体で1年間にスイッチングを行った人の比率はここ数年、全体の10%程度で落ち着いているが、TDFに100%配分している人に限っていえば、03年以降の10年間でスイッチングしたのはわずか1.4%にとどまり、08-09年の暴落の後でさえほとんど動きがなかった。

残高規模別の投資先トレンド

09年6月末と13年6月末とを比較すると、資産残高30億ドル超の大規模プランでは中期国債(25.0→8.7%)、エマージング債券(23.3→4.7%)の比率低下が目立つが、エマージング株式は33.3%から41.7%に増加している。

資産残高10億-30億ドルの中規模プランでは、インフレ連動債が12.8%から33.5%に、エマージング株式が21.4%から36.0%に増加。ハイ・イールド債券は21.9%から7.5%と大幅減している。そして資産残高1億-2.5億ドルの小規模プランでは、インフレ連動債が9.8%から26.1%に、中期国債が9.5%から14.9%に、エマージング株式は17.4%から34.6%と大幅に増加している。ちなみに米国株は資産規模にかかわらずほぼ横ばい。

第2部/英国DCの現状

ジュリアン・ウエブ氏

ジュリアン・ウエブ氏

フィデリティ・ワールドワイド・インベストメント
ヘッド・オブ・DC&ワークプレイス・セイヴィングズ
ジュリアン・ウエブ氏

英国年金の概観

英国職域年金資産はDB、DC合わせて2兆7360億ドル(12年末)。米国の16兆8510億ドル、日本の3兆7210億ドルに次ぐ世界第3位の規模だ。DB、DCの割合は6対4といったところだが、近年はDC資産の増加が鮮明。16年までには割合がほぼ半々になるとみられる。大企業のほとんどがDBプランの新規加入を取りやめており、FTSE100企業では新規採用された従業員の92%がDCプランに加入している(※出所:Towers Watson,The City UK Limited)。

「年金自動加入制度」導入

英国政府は昨年、新しい法律を制定。雇用者に対して、22歳以上で9440ポンド超の所得のあるすべての従業員を適格職域プランに加入させる「年金自動加入制度」を、12年10月より段階的に施行している。

まずは従業員数12万人以上の大企業から始まり、13年5月1日からは従業員数1万人以上の企業が、11月1日からは500人以上の企業が導入して、最終的には17年4月までにすべての企業が導入を終える計画。同時に拠出率も当初の2%(事業主1%、従業員1%)から、17年10月より5%(2%、3%)、18年10月以降は8%(3%、5%)へと引き上げられる。

現状では従業員が能動的に非加入とするケース(オプトアウト)は少ない。従業員6000-1万2000人規模の会社について、政府は事前にオプトアウト比率を30%と予想していたのに対し、平均9%ほどにとどまっている。しかし、拠出率の上昇に伴って今後は上昇する可能性も。

こうして年金自動加入制度の導入は新規資金の流入を促すなど、株式市場を下支えする効果も見られる。

政府提供「NEST」とは?

小規模事業主など独自の年金制度を持たない会社、あるいは従業員数が多く管理コストが膨大な会社の受け皿として、政府はNEST(National Employment Saving Trust)を用意している。NESTは現在25万人が加入しており、今後5年以内に250万人に拡大するとみられる。

政府の意向をくんだNESTは独自の特徴を持つ。複数のTDFを採用するが、いずれも貯蓄可能時期を3段階に分けた場合、①初期のFoundation(基盤構築)から②中盤のGrowth(資産形成)に向けてリスクが高くなり、③Consolidation(安定運用)で再び低下。一般的なTDFは加齢とともにリスクを引き下げて運用を行うのだが、政府はNESTについて、加入直後に資産が毀損(きそん)して投資家が継続意欲を損なうことがないよう配慮しているもよう。さらに、加入者自身のリスク選好度合い、あるいはイスラム法にのっとった「sharia fund」のように信仰などにも適合するよう5つのファンドを用意している。

ラインアップに見るトレンド

ほとんどのDCプランにはデフォルト運用が設定されており、主流は「ライフスタイル・ストラテジー」。各加入者の退職年齢に応じたアセット・アロケーションに従ってプラン内に提示されている複数のファンドを一定の比率で自動配分する手法で、これを、生年月日に合わせて適用させていく。対して、一般的なTDFは、1つの運用会社が設定したアセット・アロケーション・ストラテジーに基づいて運用されるファンドであり、例えばファンドの満期が退職年とは合致しない場合も。

大規模会社の場合、投資に関するガバナンスをより重視することから、提示ファンドは厳選された11-15程度が平均的。対して中小企業は運営管理機関が可能とするすべてを提示する傾向があり、平均50ファンドとなっている。

デフォルト・ファンドの運用はパッシブで構成されているのが主流。しかし、08年の金融危機などを経て、パッシブ運用が加入者の資産を高いボラティリティにさらすリスクがあることが検証され、昨今ではパッシブとアクティブの両方を組入れた形がトレンドとなっている。

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