日本FP協会 創立30周年を見据えて中長期事業戦略を策定 

概 況


投資立国・金融立国への道作りに貢献

白根壽晴氏

日本FP協会理事長
白根壽晴氏

日本FP協会理事長 白根壽晴氏語る

特定非営利活動法人(NPO法人)日本ファイナンシャル・プランナーズ協会(略称:日本FP協会)の白根壽晴理事長はこのほど記者説明会で、日本FP協会の取り組みと中長期事業戦略について語った。協会規模は着実に拡大、日本最大級のNPO法人に成長。9月1日現在、個人会員数 19万1,778人(CFP(R)資格認定者数1万9,243人、AFP資格認定者数15万5,003人、一般会員数1万7,532人)、法人賛助会員数 82社(認定教育機関数49社)に上っている。その役割はさらに高まっているといえる。白根理事長の主な発言内容は以下の通り。

■日本・生活者の取り巻く環境

昨年は世界経済全体に関して悲観的な観測が支配的だったが、今年に入ってからはコーシャス・オプティミズム――注意深い楽観主義とでもいうべき見方が広がってきた。先行きに明るさが増してきたと考えられている。リーマン・ショックから5年、アメリカは住宅価格の回復、シェール革命の恩恵により力強さを取り戻しつつある。QE3(量的緩和第3弾)の出口戦略が話題になっているが、いつ引き締めが始まるのか、新興国を含め世界の注目が集まっている。9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)では金融緩和縮小が見送られたが、時間の問題というところか。一方、日本はアベノミクスが一定の成果を上げている。経済回復への期待感がつながっている。アベノミクスが期待通りの効果を上げたとしても、日本の将来が厳しいということに変わりはない。日本人の暮らしやおカネを取り巻く環境は厳しさを増しており、ますますライフプラン、マネープランの重要性は高まっている。例えば、過去13カ月間、日本の貿易収支は赤字が続いている。特に7月は単月で1兆240億円の赤字を計上しており、今年の貿易赤字は昨年を大きく上回る勢いである。今後も貿易立国の旗を降ろすわけにはいかないが、貿易収支の赤字については長期的には貿易収支だけでは支えていけない。私たち一人一人がライフプランとマネープランを真剣に考えることによって、少しでも有利な資金運用をする、資産作りをする。それが国全体を通してみると、投資立国・金融立国という道を深めていくという道につながると考えられる。日本の昨年の経常収支は4兆2,900億円の黒字を辛うじて保っているが、これは貿易収支あるいはサービス収支の赤字9兆4,700億円を、所得収支の黒字14兆7,200億円が埋め合わせている。企業の海外投資がまず先陣を切って、NISA(小額投資非課税制度)を含めて国民1人1人のお金が少しずつ海外投資に向かうことによって所得収支の黒字、投資立国・金融立国への道をしっかりしたものにしていくと考えられる。

■NISAの成功が不可欠

NISAが来年から始まる。10月1日時点での日本証券業協会の予測では320万口座の予約がされているといわれる。NISAは制度設計上、本来の目的は、若年層あるいは投資の未体験層の市場参加を促して、これからますます厳しくなる日本人の将来を見据えた資産作りをしてもらおうというのが当初の目的である。従ってNISAが投資対象としている株式や株式投信である以上、これが国民の資産形成手段として社会に定着していくためには、金融経済教育や金融リテラシーの重要性というものがますます高まっている。若年層や未経験層に限らず、シニアや富裕層にとっても小さくても成功体験を重ねていくということがNISAを日本社会に定着させていく大きな要素である。そのためにはどのような投資手法があるのか。まだまだ金融機関の販売の現場でしっかり説明されていない部分があると思う。そこをファイナンシャル・プランナー(FP)や日本FP協会がアドバイスする重要なポイントとして私どもは認識している。2001年に日本版401k(確定拠出年金)が始まったが、現状では期待外れの状況にある。残高で日本が5兆円、アメリカの600兆円にはるかに及ばない。これから始まるNISAが日本版401kのような惨状にならないようにしなければ、日本の経済再生、金融立国・投資立国の道が果たせないと考えている。

■日本FP協会、中長期事業戦略5つのポイント

そこで日本FP協会は7月に、2017年の創立30周年を見据えて5カ年の中長期事業戦略を策定した。5つのポイントがある。FPの実務支援を強化して、国民の皆さまに相談相手として、FPを実際に活用していただく、そのためのインフラ整備をしていこうということがポイントである。従来、日本FP協会はファイナンシャル・プランニングを通じて、日本経済の発展と国民生活の向上に活動してきたが、どちらかというとFPの資格の認定、金融経済教育を通じた国民のリテラシーのアップというところに比重がかかっていた。実際にファイナンシャル・プランニングを生活の中でどう使うのか、あるいは職業家・専門家としてのFPをどう活用し、彼らの仕事のビジネスインフラとしてどのようなものに支援したらプロフェッショナルとして成り立っていけるのか、資格を取ってからの後半の部分は弱かったという反省に基づいて5つのポイントを整理した。

■ほかのFP資格との差別化徹底

1番目の「CFP(R)・AFPブランド向上によるほかのFP資格などとの差別化徹底」は、FPの資格はいろいろあるが、当協会の資格であるCFP(R)、AFPという資格者は2年間の継続教育を義務付けている。AFPで2年間15単位、CFP(R)で2年間30単位、決してグローバルな基準から考えると高いハードルではない。プロフェッショナルとしてもっと勉強していくことが必要だと思うが、この継続教育を受けない限りは資格が更新されないことがFP技能士という国家検定と大きく違う点だ。協会の会員として登録していただくためには顧客利益の優先、あるいは守秘義務の厳守といった誓約書に署名していただく。自主規制機関としての会員の倫理規範を協会が管理していくことも、CFP(R)、AFPでの大きな特徴と考えている。金融機関の皆さまがNISAを導入されるに当たって、顧客満足度の高いサービスというのは、実力のある、コンピテンシー(継続教育で得られた知識を応用するためのスキルを含めた専門的力量)の高い提案力というものが第1だと思う。そう意味で、社会保障制度も、税制も毎年変わる。金融市場の動向も刻々と変わる。その中で継続教育というものをもっと重視していただく、そういう販売現場の在り方があっていいはずというところを皆さまにもご理解していただきたい。

■コンピテンシーマップを作成

2番目の「実務能力向上のための専門性の高い研修体制の整備およびビジネスインフラの拡充」。資格を取った後に実際にどういう具体的な提案をするか。これまで、実務に直結した教育体系というものが整備されていなかった。そこで今回、コンピテンシーマップを作成した。プロフェッショナルとして活躍したいFP、AFP、CFP(R)が自分の能力のどこが欠けているのか、専門家でもつい間違ってしまうが、知識偏重でいってしまう。しかし、お客さまとのコミュニケーション能力も重要な能力であり、また、スキル、専門的な責任を果たす、あるいは認知能力を高める、情報と情報を結びつけていくというような知識とスキルと専門能力についてスタンダードを作って、これで実際に専門性の高いAFP、CFP(R)を輩出していくこととしている。

■支部活動を通じた地域独自のFP普及促進

3番目の特徴は「地域特性に相応しい支部活動を通じた地域独自のFP普及促進」を図るということである。私どもは全国に50の支部を持っている。ここで会員のCFP(R)やAFPが生活者の皆さまにマネーセミナーやライフプランセミナー、個別相談を行っている。首都圏の2万人、3万人規模の支部と、地方では1県単位で200人、300人規模の支部もあり、どうしても活動に差が生じてしまうことがあるため、本部の応援を含めて全国均一の金融経済教育の提供を今後は徹底していくことにしている。

■ほかの関連団体との連携強化

4番目は「国と地方の広範な行政機関や金融経済教育団体、日本FP学会との組織的な連携強化」を図っていく。どの団体も財政基盤が窮屈になっている。お互いの活動に無駄やムラがあってはいけないということで、金融経済協力の質を高めるために、関連団体との提携を強化していく。

■幅広い法人賛助会員との関係強化

5番目が「新たな戦略的なパートナーを加えた幅広い法人賛助会員との関係強化」。私どもの会員制は個人のAFP、CFP(R)の資格会員と、一般会員、金融機関や不動産業界、そのほかの法人の賛助会員がある。今まで地域金融機関である地方銀行、信用金庫、信用組合といった、NISAが始まる時の最も身近な窓口である地域金融機関が法人賛助会員として参加していただいていない。これは私どもの説明不足、努力不足があるが、継続教育、常に専門家として知識・能力をブラッシュアップするということは、NISAの定着に当たっては地域金融機関にも努力が求められるところであり、ぜひその点のご理解をお願いしたい。地域金融機関を中心に今まで法人の賛助会員になっていただいていない法人の皆さまに参加を促したいと考えている。既にその成果が表れ始めており、都内の大手信用金庫が法人賛助会員としてご入会いただいている。今後、全国展開をしていきたいと考えている。

これから日本人の暮らしやおカネを取り巻く環境は非常に厳しくなっていく。一人一人が自分の暮らしを守るということで、ライフプランとマネープランを真剣に考える。これが、全体を通じてまとまると、日本の経常収支を海外投資、所得収支の黒字が支えるという大きな動きにつながっていくとみられ、その点で、協会として果たすべき役割を果たしていきたいと考えている。

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