GAM証券投資顧問「GAMセミナー2013」開催

概 況


グローバル投資家にとって最大の関心事は、足元では回避されたものの「QE(量的緩和政策)縮小による金融資産への影響」、あるいは「中国経済の今後」だろう。GAM証券投資顧問は9月11日に「GAMセミナー2013」を開催。GAMグループの運用会社であるスイス・アンド・グローバル・アセット・マネジメントの債券部門のヘッドでエマージング債券市場のポートフォリオ・マネジャーであるエンゾー・プンティーロ氏、アジアのポートフォリオを担当するGAM香港のマイケル・ライ氏が来日して2大テーマについて語った。

QE縮小 資産運用への脅威か、新しい機会か

エンゾー・プンティーロ氏

エンゾー・プンティーロ氏

スイス・アンド・グローバル・アセット・マネジメント
債券チーム・ヘッドCIO エンゾー・プンティーロ氏

「緩和策」の功罪

これまで継続された緩和策。最大のメリットは米国に「不況をもたらさなかった」ことだろう。土地や株式などの資産上昇によって投資や消費行動が活性化される「資産効果」により、米国ではようやく投資意欲が高まりつつある。

そんな緩和策の縮小は何を意味するのか? そもそもバーナンキは金融の「緩和縮小」と「引き締め」を明確に区別しており、時期は不明だがこの先取り組むのは「緩和縮小」。さらに「今後の金融政策の決定はデータに基づく」とも明言しており、これはマクロ投資家にとっては朗報といえそうだ。

世界経済への影響

経済はグローバル規模で拡大中だが、インフレはさほど大きな問題にはなっていない。つまり、経済は良好な環境にあるわけだが、詳細を見ると、国別に大きな違いがあることに気付く。

先進国経済が堅調に回復しているのに対し、中国やブラジルなどBRICsに代表される新興国と、オーストラリアなど新興国周辺の資源国は軟調が続いている。各種経済指標と事前予想との乖離幅を示す「サプライズ指数」は、先進国ではポジティブサプライズが続くも、新興国では過去15カ月間モメンタムの低下傾向が続いている。

地域別の状況(1)米国

先進国の中でもとりわけ米国の復調が目立つ。問題の根源だった住宅価格は安定、着工件数も持ち直している。不動産は直接・間接的に経済と深いかかわりを持ち、GDP(国内総生産)伸び率の3分の1を占める。こうして不動産市場の回復が雇用と経済成長を下支えして、財政赤字の改善にもつながる。

地域別の状況(2)欧州

昨年ECB(欧州中央銀行)はOMT(国債購入プログラム)を導入。経常収支は改善傾向にある。さらなる改善には労働市場などについて大きな構造改革が必要なため困難とみるが、「悪化」はさほど想定しなくてよいだろう。

地域別の状況(3)中国

GDP成長のうち50%を投資が、30%を消費が占めている。これまでの成長は投資によってサポートされてきたわけだが、今後は投資寄与度の低下から過去のような2ケタ成長は難しいだろう。ただし中国政府は7%という目安を設けているようで、これを下回りそうな場合にはなんらかの刺激策が期待される。

図1 (クリックで拡大)

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債券市場の見通し

「QE縮小は引き締めではない」との発言を受けて、今のところ利回り水準に大幅な変化は見られない。市場は欧米のソブリン先物について3-3.5%程度の上昇を織り込み済み(図1)。ユーロ圏では3カ月ものの金利が現在のゼロから5年後には2%ほどに上昇するとみているようだが、急騰というレベルではない。

図2 (クリックで拡大)

図2 (クリックで拡大)

主なクレジット資産クラスを見ると、利回り全体で適正な調整がされている。スプレッドは今春時点とほぼ同水準(図2)だが、今後は経済回復に伴って株式市場と同様に上昇することが期待される。

新興国債券は魅力的なバリューを提供しているものがある一方、国ごとで状況が大きく異なるため、選択がより重要性を増している。ニュージーランド、ブラジル、ハンガリーなどは魅力的なエントリーレベルを影響している。経常赤字のトルコ、インド、南アフリカは軟調。インドネシアも収支が悪化しているが、それ以外のアジアは健全な状況にあるようだ。とりわけ中国、フィリピンが良好とみる。

中国経済の減速とアジアおよび金融市場への影響

マイケル・ライ氏

マイケル・ライ氏

GAM香港 インベストメント・ディレクター マイケル・ライ氏

中国の経済成長は「著しい」

確かに過去の水準からは減速気味だが、中国経済は今後も実質GDPで7-8%成長を続けるだろう。これは低迷するグローバル経済にあって非常に魅力的な水準といえる。

高度成長期から安定成長期へと移行した中国の成長は、量ではなく「質」を注視すべき。例えば2012年の経常収支はGDP比2.3%で、米国のマイナス3.1%、日本1.6%、ユーロ圏1.1%と比べてもマクロ経済の健全さがうかがえる。

ちなみに中国の純輸出はGDPの3%にとどまり、国内消費主導型経済といえる。低迷するグローバル経済と比較して、望ましい人口構成、中流階級の増加など魅力的な要素は多い。

ソフトランディングを支えるデータたち

中国経済はソフトランディングに向かっている。購買担当者指数(PMI)は夏から上向き、足元では基準値の50ほどにまで回復。政府による景気刺激策が奏功し、小売販売額や固定資産投資額は予想を上回る伸長を見せる。家計のキャッシュも潤沢で、預金に対する借入の割合は25%にとどまる。銀行システムも健全。預貸率は70%、不良債権比率は1%にとどまる。こうした健全性に支えられて、政府は一段の景気刺激策実施の余地を残している。

政策にのった「公害対策」に注目

政府はやようやく“ほど良い”成長スピードをつかんだもよう。かつてのような2ケタ成長の継続が何らかの犠牲を伴うということを認識したようだ。

そして先述したように、現在の政府の課題は「成長の質」。当社ではポートフォリオを組み変えて公害対策や代替エネルギー関連にシフトした。中国では近年、土地にかかわる紛争を上回り、公害に関する苦情が最も多いという。政府は総エネルギー消費量に占めるクリーン・エネルギーの比率を高める計画で、例えば湖北省では毎年2億㌧の石炭が使われているが、来年までに4000万㌧に減らす予定。

景気「低」相関に妙味

セクター別の動向に関していうと、景気と低相関のものが魅力的。中国のオンラインゲーム関連企業の収益はほぼ一貫して右肩上がりを続けている。マカオにおけるカジノビジネスもしかり。中国経済のハードランニングを世界が心配する最中にも、中国人はマカオ観光に出かけていたのだ。今後も人々の所得上昇に伴って余暇需要が伸びることが想定される。

インターネットやソフトウエア関連も妙味がありそう。中国人は携帯電話を用いたメッセージ交換手段として、伝統的な通信手段であるSMS(ショートメッセージサービス、携帯電話同士で短文を交換)から、より高度なLINEに代表されるOTT(※)系通信アプリケーションにシフトしつつある。今後はさらにスマホ利用者が拡大してアプリケーション需要も増大するとみる。

(※)動画データや音声データなどのコンテンツを通信事業者のサービスによらずに提供すること

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