オリンピック誘致ライバルの素顔 トルコ 欧州と中東の架け橋

概 況


孕石健次氏

孕石健次氏

「地理的優位性」で高成長続く

HSBC投信 シニア アドバイザー 孕石健次氏

オリンピック誘致の決戦投票を戦ったトルコ。落選の要因はシリア問題とも言われるが、そもそもトルコを含む新興国は現在、投資という観点からも「芳しい」とは言えない状況にあるとみられている。

そんな折、新興国投資に強みを持つHSBC投信が8月29日にトルコ株を投資対象とするファンド「HSBCトルコ株式オープン」を新規設定した。シニア アドバイザーの孕石健次(はらみいし けんじ)氏がトルコ経済の現状と今後の見通しを語った。

5月22日にバーナンキFRB(米連邦準備制度理事会)議長が緩和策縮小について言及して以降、新興国は資金流出に見舞われている。しかしながらトルコの成長ストーリーは不変だ。今は逆風吹くも、短期的なマイナス要因が安定化したとき、トルコは再評価されるだろう。

【成長軌道にのったトルコ経済の現状】

実質GDP(国内総生産)成長率は2004、05年に8%超と、かつては中国に次ぐ高成長で投資家の関心を集めた。リーマン・ショックの影響で09年はマイナスに転じるも、10、11年は再び8%超に回復。12年は2.6%にまで低下したが、これは、過熱気味の景気抑制のため政府が金融引き締めを行ったため。今年に入ってからは通貨防衛のため利上げを行っているが、第2四半期は4.4%まで戻り、今後も平均約4%の成長が予想されている。

【経済規模で世界トップ10入りを目指す】

トルコは建国100周年となる23年に向けて、大規模な国家プロジェクトを打ち出している。世界最大規模となる第三国際空港の建設、1万kmの高速鉄道や高速道路建設などのインフラ投資、あるいは輸出額を11年実績1349億米ドルから5000億米ドルに拡大するなどして、名目GDP2兆米ドルを目指す。

【地理的優位性生かした唯一無二の存在感】

ヨーロッパとアジア、2つの大陸を結ぶ場所に位置するトルコ。地政学上の重要性から西側諸国の開発支援を受けると共に、地理的優位性から多くの外国企業が製造・輸出拠点を置くなど、とりわけ欧州との結びつきが強かった。しかしながらエルドアン首相はこれまでの欧州依存型から「全方位外交」への転換で成功を収めている。輸出に占める欧州の比率は02年の6割から、12年には4割ほどにまで低下。代わりに中東・アフリカ諸国、昔は敵対していたロシアとの関係を深めている。

最近では中東諸国向けの建設業に強みを持つ。経済制裁下にあるイラン、政情不安が続くイラクなどは天然資源が豊富だが、西側諸国は進出しづらい。そこでトルコがこれらの国々でプラントなどのインフラ建設を積極的に受注し、かつ、生産されたエネルギーはパイプラインを通してトルコ経由で欧州へ運ぶという、エネルギーのハブ的な役割が高まっている。

【デモの影響/アラブ諸国との根本的な違い】

先ごろイスタンブールを皮切りに各地でデモが発生。隣国シリアでも民主化要求デモを契機に内戦が激化している。イスラム教国でのデモは「アラブの春」など政権転覆をイメージさせるかもしれない。しかし、トルコでは100年近く政治を宗教から分離させた「世俗主義」が続く。デモのきっかけは都市住民がイスラム回帰を目指したためではなく、逆に、エルドラン首相のイスラム回帰的な政策に反発したことにある。トルコには過激派の原理主義者も少なく「アラブの春」のようなシナリオは描きにくい。

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