浮かび上がる「50代シングルズ」の実像 フィデリティ投信「サラリーマン1万人アンケート」から分析

概 況


遅れる退職後の生活資金確保への準備

野尻哲史氏

野尻哲史氏

フィデリティ退職・投資教育研究所所長 野尻哲史氏

フィデリティ投信のフィデリティ退職・投資教育研究所は、4月に実施したサラリーマン1万人アンケート(会社員・公務員を対象に4月5-12日かけてインターネットを通じて実施、回収サンプル1万1,507人)で得られたデータを基に「50代シングルズ」を深堀分析した。ほかではあまり見られないユニークな試みで、そこから浮かび上がった実像について、フィデリティ退職・投資教育研究所所長の野尻哲史氏が語った。

当社のサラリーマン1万人アンケートの回答者1万1,507人のうち、50歳代は3,112人、このうち男性シングルズは341人、女性シングルズは453人(合計794人)で、50歳代全体の4人に1人が“シングルズ”に該当する。

以下、サラリーマン1万人アンケートから得られた多様なデータからシングルズの実情を探りながら、彼らが抱く退職後のイメージ、退職に向けた資金準備の度合いや投資リテラシーの有無などなどの分析結果について、幾つか紹介したい。

■年収と家計の金融資産

まず配偶者の有無で、年収(個人の年収で家計全体ではない)と家計の金融資産(除く不動産)を比較する。男性の場合には配偶者の有無が年収に大きく影響しており、配偶者手当など、配偶関係によって追加される手当の類がインパクトとなっている。

例えば、50歳代男性の場合、シングルズの平均年収は566万円で、配偶者有の場合の平均年収(728万円)と比べて77.8%の水準にとどまる。一方、女性を見ると、平均年収の低さが目立ち、50歳代でも平均年収が300万円台にとどまっている。300万円未満の年収層も多く、女性シングルズでは50歳代でも38.6%が300万円未満だ。もっとも、男性に比べて配偶者の有無による平均値の格差は小さい。女性・50代シングルズの平均年収は372万円で、配偶者がいる女性の平均年収(397万円)の93.8%だ。

家計の資産に関しては、男性・50歳代シングルズの平均値は1,423万円と、配偶者のいる場合の平均値1,219万円を16.8%上回っている。その格差は20歳代で10%程度、30歳代で40%以上、40歳代で20%以上、50歳代では10%台と、どの年代においても、家計資産額ではシングルズが既婚者を上回っている。年収ではシングルズの方が低いものの、支出面では配偶者や家族への支出がない分、資産の積み増しが進んでいることが分かる。

なお、女性に関しては、男性とは逆の傾向がある。配偶者がいる場合、家計の資産は夫婦での収入を基に形成され、女性独りで作り上げる資産よりも多くなる傾向がある。20歳代の場合、配偶者有のほうが資産は少ないが、30歳代以降では夫婦共働きの効果が強く出ている。家計資産の年収倍率は、既婚女性が4.32倍、未婚女性が3.27倍と、既婚女性の方が高い。

■定年退職後の生活のイメージ

既婚者とシングルズでは、定年退職後の生活のイメージで差が出ている。全般的には、40%以上が「のんびり・マイペース」を希望しているが、シングルズでは「明るく・楽しい」「いきいき・はつらつ」といったイメージを持つ人の比率は低く、逆に「ほそぼそ・質素」「つらく・不安」は、既婚者よりシングルズの方が高い。また、「のんびり・マイペース」は、女性シングルズで年齢とともにそう考える人の比率が大きく下落している。退職後の生活のイメージでは、シングルズの方が総じて暗い印象を持っているようだ。

■退職後の楽しみなこと・心配なこと

退職後の「楽しみなこと」では、シングルズと既婚者では大きな差が出ている。男性シングルズは退職後の楽しみとして旅行・レジャーよりも趣味や習い事を志向している。これはシングルズが退職後も人とのつながりを持ち続けたいという意向が強く表れているものと推察される。なお、既婚者、特に女性は退職後の旅行・レジャーを楽しみにする傾向が強い。

■退職後の生活費の不足

「退職後の心配なこと」では、どのセグメントも退職後の生活費の不足を心配する比率が高いが、特に、女性シングルズで58.3%が“生活費不足”を心配なこととして挙げており、既婚の女性(49.0%)と比べて10ポイント近くも上回る。なかでも40歳代女性シングルズでは、生活費不足を憂える人の割合が6割超。一方、退職後の支出項目で最も心配なのは“医療費”で、50歳代の場合、未婚、既婚、男性、女性問わず、全体の6割に達している。また、シングルズは、税金・社会保障、光熱費などの生活実感のある項目も、大きな支出として挙げている。“介護費”に関しては、既婚女性の約3割が大きな支出と認識しており、ほかのセグメント(おおむね1割前後)と比べて水準が高くなっている。

既婚者・未婚者間で明確な差が出たのは“持ち家”。退職後の大きな支出項目として、未婚者は住宅ローンより家賃を挙げる人の比率が高く、逆に既婚者は「住宅ローンの返済」と答えた人の比率が高い。この差は、住み方の違い(未婚者は賃貸住宅、既婚者は持ち家に住んでいる方が多い)から生じるものと推察される。

■退職前後の生活費水準の変化

退職前後の生活費水準の変化について尋ねたところ、女性シングルズの約3割が「わからない」と回答。年代別では、30歳代(31.8%)と40歳代(30.5%)でその傾向が強く見られたが、この年代で退職後の生活が全く思い描けていないとすれば、いささか憂慮すべき事態。

■公的年金以外の収入源

公的年金以外の収入源について質問したところ、未婚女性の最も大きなよりどころは「預貯金の取り崩し」。既婚男性では「働く」や「企業年金」のウエートが高く、“会社寄り”の姿勢が強い。公的年金以外に必要と考える退職後の生活資金総額については、未既婚・男女・年代を問わずおおむね3,000万円程度であまり差はない。家族構成から考えると、既婚者はある時点までは2人分の生活費を確保しなくてはならず、シングルズと比べて多めの生活資金が必要であるとの認識を持つべき。

■退職後の生活資金の準備状況

「資産ゼロ世帯」(退職後の生活資金として現在準備できている資金が“ゼロ”)は、全体の40.3%に達している。また、現在の準備額が必要額(おおむね3,000万円)を上回っているのは、50歳代男性シングルズで12.1%、50歳代女性シングルズで5.3%にとどまる。このように大多数の人が現時点で必要額に届いていないという実態が、今回の深堀アンケート調査結果の最重要ポイントといえる。

さらに「(退職後の生活資金が今後も)準備できない」と思う人の比率は、50歳代シングルズの男女ともに7割を超えた。また、女性シングルズでは、20歳代の人でもその7割が「準備できない」と考えており、男性以上にシングルズの悲観度が強くなっていることが伺える。

“退職後の資産準備に何が重要と思うか”という設問では、女性は未既婚を問わず全体の半分以上が「預貯金での蓄え」と回答している。一方、「資産運用」が重要と考えている人をセグメントで見ると、男性シングルズでその回答比率が高く、特に50歳代(27%)で顕著。一方、退職後の資産形成のために実際に資産運用を行なっている人はそう多くはない(男性:12.6%、女性:6.2%)。

■投資について

“現在投資をしている”人のうち、退職後の資産形成目的で投資をしている人の比率は50歳代シングルズの男性で12.6%、女性で6.2%と、共に低水準。

また、投資の原則(長期投資、資産分散、時間分散)に関する理解度では、総じて男性より女性の方が低く、女性の中では既婚者よりシングルズの方が相対的に低く、女性シングルズにおける金融リテラシーの向上が急務といえる。

男性の未婚率20%台、女性の未婚率10%台に

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