日本株相場の展望と運用スタンス シオズミアセットマネジメント 塩住秀夫社長に聞く

概 況


「新生日本」銘柄に集中投資
PEGレシオを重視、1990年以降一貫して活用

シオズミアセットマネジメント 塩住秀夫・代表取締役社長

シオズミアセットマネジメント
塩住秀夫・代表取締役社長

著名ファンドマネージャーは日本株の現状をどうとらえているのか、どのような見通しをもって投資しているのか――シオズミアセットマネジメントの塩住秀夫・代表取締役社長に聞いた。同氏は日本の中小型成長株および日本株投資のパイオニア的存在で、1970年代初期から40年以上、「株式投資の王道は成長株投資」という投資哲学を貫いている。

■日本株の先行きはアベノミクス次第

――塩住社長は海外投資家と太いパイプを持っている。海外投資家は日本株をどうみているか。

1月に英国を訪問した際、半信半疑で眺めている人が多かった。しかし、6月下旬-7月上旬の再訪時は、アベノミクスへの期待に加え、米国の量的金融緩和縮小シナリオが意識され、米金利上昇、新興国の株安・債券安という流れが生じていたこともあり、日本株への関心は上昇。彼らの日本株へのアセットアロケーションは「オーバーウエートへ引き上げ」「新規の買い入れ」もしくは「参院選の結果次第で買い入れ」の3パターンとなっていた。過去、ライブドア・ショックなどでダメージを受けた投資家の中には、日本株投資に二の足を踏んでいる人はいたものの、そうした投資家もアベノミクスに対し高い関心を寄せていた。

――塩住社長はアベノミクスをどうみているか。

日本は今、経済再生できるかどうかの瀬戸際にあり、日本株の先行きもアベノミクスが成功するか否かによって変わる。私個人的には、安倍首相の強い決心と、高い支持率によって、アベノミクスは必ず成功するとみている。

まずは、第一の矢(大胆な金融緩和)、第二の矢(機動的な財政出動)に続き、第三の矢(成長戦略)が迅速に執行されるかどうかが焦点。これに成功すれば株高は今後数年間は続くだろう。一の矢、二の矢、三の矢が放たれ、アベノミクスの最終目標である経済再生による財政健全化(第四の矢)に成功すれば、日本株はさらなる大相場に発展しよう。

安倍首相にできなければ、今後10年は誰にもできまい。万が一、アベノミクスが失敗に終われば日本株は死んだままだ。

■債券から株へのシフトも株高を後押し

――今後のマネーの潮流をどうみるか。

日本株は1989年12月29日の大納会に付けた日経平均3万8957円を頂点に、23年間下落してきた。この間の名目経済成長率はほぼゼロ、そしてデフレも長きにわたり続いた。

しかし米国の量的金融緩和縮小シナリオが意識され、米金利に上昇圧力がかかりつつある中、債券から株にシフトする投資家がずいぶん増えてきており、資金の流れは今までとはまるっきり逆だ。

米国に続き、日本の金利も来年後半から上昇し始めるだろう。これまで日本の投資家は、個人も機関投資家も債券に資金を振り向けてきた(日本の個人金融資産に占める株式の割合は10%以下、生保など機関投資家による債券への投資割合は60%程度)が、今後は金利上昇やインフレのリスクが大きくなっていくことから、日本でも債券から株式へのシフトが進もう。こうした国内投資家のアセットアロケーションのシフトも、日本株上昇の原動力になるとみている。

■中小型成長株への集中投資で驚異のパフォーマンス実現

――銘柄選別のポイント。

私は90年代初めから「新生日本に投資すべきだ!」と言い続けてきた。この投資方針が鮮明に成果を出し始めたのは2011年。TOPIXは英国ポンドベースで-11.8%だったのに対し、当社が運用するファンドは+27.1%。当ファンドを17年運用してきたが、全体相場が弱い中で、ここまで好パフォーマンスを上げたのは、この年が初めて。翌年、12年もTOPIX+2.8%に対し、当ファンドは+8.6%とTOPIXを上回るパフォーマンスを残した。13年も7月5日現在でTOPIX+28.5%に対し、当ファンドは+69.1%と引き続き好調なパフォーマンスをマークしている。

規制改革を核とした成長戦略の中で最も恩恵を享受するセクターはメディカル・ヘルスケア関連だと確信し、数年前よりこのセクターへ投資してきた。それ以外のセクターにおいても特に中小型成長株は規制緩和をすればするほど恩恵を享受できるであろう。今後もヘルスケア、ネット関連の中小型成長株など「新生日本」銘柄を引き続き注目していく。

――最近のセクター別ポートフォリオと主な投資先を教えてください。

ヘルスケア38.5%、eコマース(電子商取引)を中心としたネット関連35.6%、個人消費関連13.6%(13年6月末現在)。主な投資先としては、MonotaRO(3064)日本M&Aセンター(2127)カカクコム(2371)エムスリー(2413)ドン・キホーテ(7532)シップヘルスケアホールディングス(3360)など。数年前に投資し始めた保有銘柄が花開きつつある。バイオ関連銘柄にも、昨年夏ごろから投資を始めている。

――それにしても、驚異的なパフォーマンスだ。銘柄選定にあたり、重視している指標は何か。

PEGレシオだ。PER(株価収益率)をEPS成長率(1株当たり利益成長率)で割ったもので、企業の利益成長率に対して何倍のPERが付与されているかを見るための指標。1990年以降、一貫して活用してきた。

当社は基本的に、過去2年間、今後2年間の4年間の期間、成長率2割以上で成長し続ける銘柄を発掘し、かつ、PEGレシオ1倍以下の銘柄に投資をしている。一方、オンリーワン企業でマーケットシェアが高く、今後も高成長が続く企業はPEGレシオ2倍まで買われてもいいと思っている。PEGレシオは特性上、利益を毎年安定的に伸ばしている企業には有効であるが、市況関連銘柄には適用できない。

シオズミアセットマネジメントのポートフォリオの特徴
「新生日本」を視野に入れ銘柄選択
日本経済の構造変化が進み、西欧化されるにつれ、柔軟性に乏しい政府の規制や多層にわたる流通形態は徐々に崩れ、製造業を中心とした経済社会の「旧秩序」はサービス志向の高い「新秩序」にその座を明け渡している。こうした日本経済の構造変化から生まれる新しい成長企業の多くは、旧来型の日本企業を上回る株主資本利益率と高い増益率を達成している。そうした企業への投資に特化することが、投資家に高いリターンをもたらすことになると考えている。具体的には、流通革命の一角を占める高成長セクター(サービス、小売り、流通関連)やヘルスケアセクターなどをオーバーウエート
PEGレシオを重視
増益率が高く、かつ、PERが妥当な水準にあり、知名度と資金力を兼ね備えた企業に注目。指標としてはPEGレシオを重視
中核銘柄は2、3年以上保有
ポートフォリオの構成銘柄は比較的少なく(約30-40銘柄)、戦略的かつ長期的なコア銘柄が過半数を占める(約80%)。精選した銘柄を長期保有(中核銘柄の保有期間は2-3年以上、短期的要因に注目した戦略的銘柄の保有期間は6カ月-1年)し、長期的に優れた投資リターンを目指す
【塩住秀夫(シオズミ・ヒデオ)氏の略歴】
1970年代に日本人として初めてロバートフレミング社のファンドマネージャーに抜てきされ、取締役に就任。1983年-86年にジョージ・ソロスが設立した「クォンタム・ファンド」の日本株運用のファンドマネージャーに任命される。現在、96年に設定された日本株投資信託「レッグメイソン ジャパン エクィティファンド」を中心に運用している。パフォーマンス良好で、2012年には英国にて最優秀ファンドマネージャー賞受賞、13年には英国籍日本株投資信託58本の中で最も優れたファンドに選ばれるなど数々の受賞歴を持つ。13年7月5日現在の運用資産残高は約320億円。好きな言葉は「己を信じ、己の道を行く」
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