国内株式市場は長期上昇相場へ 三菱UFJ投信 販社向けセミナー[前編]

概 況


三菱UFJ投信 戦略運用部長 宮崎高志氏

三菱UFJ投信
戦略運用部長 宮崎高志氏

三菱UFJ投信は7月5日、「本格回復する投資環境とNISAを見据えた運用戦略」と題した販売会社向け勉強会を開催。4人の担当部長による相場見通しと運用戦略などが語られた。今回は戦略運用部長の宮崎高志氏による講演内容を抜粋して紹介する。

投資環境/今後の見通し 世界は緩やかな拡大局面に

昨年後半から株高円安が進行するも、5月下旬に米QE3(量的緩和第3弾)縮小の可能性が聞こえて以降、日本を含む世界相場の乱高下が続いている。しかしながら現在、世界経済は緩やかな拡大局面にあるとみる。今後の投資環境を考える上でポイントとなる3つの観点から解説したい。

ポイント(1)新興国経済の停滞は「一時的」

現在、先進国と新興国の景況感にカイ離が見られるが、このような世界経済の二極化は長くは続かないだろう。OECD景気選好指数を先進国と新興国とに分けてみると、2本の線は過去に2度カイ離するも、いずれも一時的だった。

OECD景気先行指数

OECD景気先行指数

そして前回と現在とでは状況が大きく異なる。1997年のアジア通貨危機を契機にアジア新興国は外貨準備高を大幅に積み上げるなどして危機耐久力を格段に向上させている。

ポイント(2)金融緩和からの脱却は不可欠

FRB(米連邦準備制度理事会)が金融緩和ペースを緩める可能性を示唆したことで金融市場が混乱したが、金融緩和からの脱却は経済正常化に向けて必要不可欠なプロセスだ。

通常、株価は利上げ前後で一時的に調整するが、その後は実態経済の拡大に伴って上昇を続ける。すなわち、金融引き締めへの転換は「株高の終わり」ではなく、むしろ「中長期的な株高の始まり」を示唆しているといえる。

利上げ前後の米国株価推移

利上げ前後の米国株価推移

また、近年は日欧米の大胆な金融緩和により期待インフレ率が上昇して、実質金利はマイナス圏で推移している。こうした環境下で資金を安全資産に置いておくとインフレに割り負けするため、実質金利マイナス下ではリスク資産中心の運用が有利と考えられる。

ポイント(3)株式は依然、債券より大幅に割安

昨年来「ユーロ崩壊」「米国財政の崖」などのテールリスクが後退して、株式リスクプレミアムが縮小。株価が大きく上昇している。

しかしながら、株価バリュエーションはいまだ割安。バブルのピーク1989年度末の株式の収益率が債券の約5分の1だったのに対し、12年度末は約6倍。バブル時は株式がかなり割高だったことは言うまでもなく、株価上昇余地はまだまだ大きいと考える。

株価バリュエーション(投資価値基準)比較

株価バリュエーション(投資価値基準)比較

国内株式市場は長期上昇相場へ

過去2回の長期上昇相場(※)に共通する条件は(1)盤石な政権基盤(2)金融緩和、(3)良好な日米関係。現在は3条件すべて満たしており、国内株式市場は長期上昇相場に入りつつあると考えられる。

※中曽根内閣(1982年11月-87年11月)、小泉内閣(2001年4月-06年9月)

懸念される新興国経済

警戒感高まる中国情勢

「世界経済は緩やかな拡大局面に」とは言いつつ、一方で、最近は新興国からの資金流出など懸念材料も聞かれる。

例えばシャドーバンキング問題がクローズアップされている中国は現在、大きな過渡期にあり、過去の膿が表面化しやすい時期にある。

中国リスク(1)「高度成長期」から「安定成長」へ:急速に進む高齢化や不良債権などの構造的な問題解決は避けられず、景気は減速傾向が続くとみられる

中国リスク(2)「胡錦涛体勢」から「習近平体勢」へ:政権交代きは構造問題(過去の膿)の処理に取り組む時期で、さまざまな問題が表面化しやすい

ちなみにシャドーバンキングの金額は、中国政府が発表した数字で14.6兆元(GDP=国内総生産=比28%)、当社グループ会社の推計で15兆-20兆元。これら懸念を抱える中国では当面、景気低迷が続くとみるが、この程度の景気低迷が世界経済に大きくダメージを与えることはないだろう。1990年代、中国と同様に世界GDP2位の日本が100兆円規模の不良債権処理を行った際にも、市場への影響は限定的だった。

最大のリスクは「政治体勢の崩壊」

貧富の格差を放置したまま経済が失速すれば、国民の不満が爆発して、共産党一党体制の崩壊にもつながりかねない。しかしながら当局はこれを熟知しており、先ごろ短期金利が上昇した際には最終的に資金供給を行った。こうしてソフトランディングを徐々に試みることで、深刻な事態は避けられるとみる。

景気低迷気味のブラジル

こちらも個人投資家に人気の投資先だが、足元では個人消費や輸出の減速など景気停滞のサインが見られ、賃金上昇によるインフレ圧力も生じている。これを抑えるために中央銀行は金融引き締めスタンスをとらざるをえず、悪い景気循環に入ってきたといえる。

こうして短期的にはリスクを抱えるものの、世界経済は貿易を通じて密接につながっている。先進国に遅れてかならず新興国も回復に転じるだろう。

なにより、新興国はこれまでの危機を乗り越えて「耐久力」を身に付けている。例えば豊富な外貨準備高。今4-6月期はレアルが円に対して5%、米ドルに対して10%値下がりしたため中央銀行は大規模な介入を行ったのだが、その間の外貨準備高は58億米ドルと、保有残高3710億米ドルのうちのわずか1.6%しか減っていない。

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