転機を迎える日本の投資信託 「毎月分配型」集中が解消の可能性 ドイチェAMセミナー

概 況


年末年始にかけて分配金の変動増加も

藤原延介氏

藤原延介氏

ドイチェ・アセット・マネジメント
ファイナンシャル ストラテジスト 藤原延介氏

2014年1月より証券税制が改正されると同時に、NISA(少額投資非課税制度)がスタートする。足元では証券会社など金融機関によるNISA口座獲得競争が起きているが、今後は投信の商品性そのものが大きく変化するなど、マーケットに大きなインパクトを与える可能性があるという。ドイチェ・アセット・マネジメントは7月12日に報道関係者向け勉強会を開催。ファイナンシャル ストラテジストの藤原延介氏が、投信業界のNISAにまつわる最近の動きと今後の見通しを語った。

NISAなど証券税制変更が投信業界に与える影響

影響(1)「毎月分配型」一極集中からの転換

非課税枠が年間100万円に限定されたNISA。分配金の再投資は別枠としてカウントされることなどから、決算頻度の少ないタイプのファンドに関心が集まっている。多くの運用各社が商品開発を進めており、NISA向けのファンドを作ったり、あるいは既存の毎月分配型ファンドに年1回決算コースを新たに設定するといった動きが見られる。

さらに金融庁は6月24日、NISAを利用する取引の勧誘に関する指針を発表。NISAの狙いである「資産形成に関するすそ野拡大」のため、販売会社側に対しては商品を幅広く取りそろえること、顧客に商品や制度の説明をしっかり行うことなどを求めたほか、「元本払戻金(特別分配金)はそもそも非課税であり、NISAにおいては制度上のメリットを享受できない」との旨を明記した。

影響(2)軽減税率終了で「分配金ショック」も

月別分配金動向

月別分配金動向

一方、足元では分配金を引き上げるファンドが増えている(図参照)。政権交代後の円安株高により基準価額が上昇したことも大きな理由ではあるが、年末の「証券税制改正」をにらんだ動きも要因の1つとみられる。

株式は2003年から、投信は2004年から始まった証券軽減税率だが、数回の延長を経て2013年末でいよいよ終了。上場株式などの配当等および譲渡益に対する税率が10%から本則の20%に戻される。投資家の購入時期がある程度集中しているようなファンドでは、年内に10%の軽減税率で多めに分配金を払い出す動きが出てくる可能性がある。また、特別分配金を避ける目的などから来年1月以降の分配金が引き下げられるケースも出てくるかもしれない。

影響(3)投資家の二極化

NISA口座における資産運用では、投資未経験者が低リスク商品を選好する可能性が高い一方で、非課税メリットを最大化させるため、より高いリスクを選好する投資家が出現する可能性も。

NISAに向く投資アイデア

NISAの目的は「すそ野拡大」

これまでの投信保有者の多くは「資産取崩し層の投資経験者」だったと思われる。2008年のリーマン・ショックで大きな損失を被った投資家の中で、損失を取り戻すためにリスクを取った商品を求める動きが強まったという部分も少なからずあると言える。また、まとまった資産を投資してこれを取り崩す性格を持つ毎月分配型ファンドが彼らのニーズをとらえ、マーケットの拡大に寄与してきた。

しかし、こうした流れはNISAの普及によってゆっくりと変化していくものとみられ、NISAは投資未経験者が投資を始めるきっかけになると思われる。資産をこれから形成する層にも投資が広がっていけば、選好される商品は従前の投資家とは異なるものとなるだろう。

NISAに向くと思われる商品

(1)低リスク商品

NISAが投資未経験者へ資産形成を促すことを勘案すると、国内債券ファンドやヘッジ付き外債ファンドなどの低リスク商品が選択肢の1つとなるだろう。そして、引き続き低金利環境が続くならば、ヘッジ付き外債ファンドはもう一段階の拡大が予想される。

2000年代前半に日本のゼロ金利環境が先進国国債市場に資金を向かわせ、その後は徐々にバランス型ファンドへと移行したように、NISAについても預金の代替といった低リスク商品に注目が集まる可能性が高い。

(2)負けにくい商品

値動きが一定のレンジを越えないような運用を行うリスクコントロール型のバランスファンドも脚光を浴びているようだ。値動きの把握が難しいという部分もあるが、NISA口座での損失が課税口座と損益通算できないことを勘案すれば、一定のニーズはあるかもしれない。

(3)元本払戻金を避ける商品

非課税口座の恩恵を受けるためには、元本払戻金(特別分配金)を避ける分配方針の商品、毎月分配型であれば、実力に見合った分配金を支払うファンドであることが求められそうだ。毎月分配型は国内公募投信の7割を占めるが、ここ2-3年で年1回決算ファンドや、分配にこだわらない単位型ファンドなどが増加傾向にある。NISA専用口座開設の受け付けが開始される10月までにこれら商品数は増加するとみる。

単位型の代表に「ターゲット・マチュリティ型」が挙げられる。例えば最初の非課税期間が終了する2018年末までに償還を迎える債券だけを買い持ちするファンドを設定することで値動きを穏やかに、かつ、安定したリターンが見込める仕組みが可能に。

NISA制度、今後の見通し

非課税対象が年間100万円という額については「少ない」との声も。しかしながら、将来的に制度が認知されて資産形成のすそ野が広がれば、大きなマーケットが誕生する可能性を秘める。既存の投信保有者については、大部分がNISA口座開設につながるとみる。またNISA口座の使い勝手を向上させるため、さまざまな改正も既に検討されている。

改正の可能性(1)口座の移管

現行法ではいったんNISA専用口座を開設すると同じ勘定期間(当初4年間)の金融機関の変更は不可だが、投資家の利便性向上のためにも早期改正が期待されているようだ。

改正の可能性(2)対象商品拡大

早ければ2016年にも公社債が対象に入ってくるとの報道もある。ちなみに証券税制では2016年分から株式/株式投信と債券との損益通算が可能になる予定。

改正の可能性(3)制度の恒久化

少額非課税制度を既に導入済みの英国では7年経過後に恒久化された。日本もNISA口座の活用が広がっていけば、制度は拡充される方向に向かうと考えられる。

戻る