家計マネー、リスク回避志向が鮮明  投信トレンドは移ろいやすく「乗り換え」頻繁 三菱UFJ投信「投信セミナー2012」  投信リサーチ&コンサルティング室 大木文雄氏

概 況


投信リサーチ&コンサルティング室 大木文雄氏

投信リサーチ&コンサルティング室
大木文雄氏

近年、家計におけるマネーフローは激変。不動産など「非金融資産」から、預貯金など「金融資産」へのシフトは明らかで、投信業界も大きく変貌を遂げてきた。三菱UFJ投信は先ごろ、販売会社向けに「投信セミナー2012」を開催。今回は、過去のデータを元に投信業界の現状などが語られた、投信リサーチ&コンサルティング室・大木文雄氏による講演内容を抜粋して紹介する。

投信において個人投資家の毎月分配型志向が指摘されて久しい。本セミナーではその背景をなぞりつつ、近年の投信業界の動向についてレビューを紹介する。

日本の家計「金融資産」シフト進む

日本の家計部門における「金融資産」と、不動産など「非金融資産」の残高を見ると、2010年末時点では非金融資産1000兆円強に対して、金融資産が1500兆円ほど。かつては非金融資産が金融資産を大きく上回っていたが、投資信託の窓口販売が解禁された1998年に両者が逆転。以降は金融資産が一貫して増加基調を維持している。

金融資産へのシフトが進んだ要因には、人口減少による地価下落で非金融資産が縮小したことと、利子所得の減少が挙げられるだろう。言うまでもなく、背景には「人口動態の変化」が。日本の生産年齢人口は1995年の8726万人をピークに下降の一途をたどり、2011年10月現在では8100万人にまで減少。この15年間で600万人と、神奈川県の人口がすっぽり消滅したカタチ。

しかしながら今はまだ助走期間。今年は団塊世代の先頭集団、昭和22年生まれが65歳を迎える。2025年には生産年齢人口は7084万人と、大阪万博が開催された1970年代の水準にまで縮小することが予想されている。

このような人口動態の変化はダイレクトに「地価」に表れる。公示地価指数はバブル崩壊が表面化しつつあった1991年にピークを打ち、足元では既に半値、1980年代の水準にまで落ち込んでいる。

預金金利の推移と投信分配金支払額

分配金志向の背景/減少続く利子所得

家計部門の利子所得についても、1991年の年間37.5兆円をピークに、2010年には7.4兆円と、わずか2割ほどにまで減少している。預金金利は1999年以降ほぼゼロが続き、いくら預貯金に励んでも利子がつかない状態。その一方で、投信では分配金の支払額が2005年を境に急激に増加。足元では4.9兆円に達している。

貯蓄率も低下。可処分所得に占める貯蓄の比率は1980年には17.5%あったのだが、2011年には2.5%にまで低下。この先高齢化が進展すればマイナスに転じる可能性も。一方で、金融資産が可処分所得に占める割合は1980年の2.3倍から、2011年は5.3倍にまで膨らんでいる。これは、資産運用において「貯める」から「殖やす」へ興味が移ってきた可能性をも示唆する。

キャッシュ志向、リスク回避が鮮明

資金はどこに向かったのか? 直近10年間の累積で120.9兆円が金融資産に流入。半数の61.7兆円は流動性預金に、48兆円が投信に向かっている。一方で、ゆうちょの集中満期を受けて定期性預金は32.1兆円の流出となった。ただし、2011年度単年で見ると、金融資産流入額18.8兆円のうち、流動性資金への流入額が17.4兆円と断トツに多く、投信は2.4兆円にとどまる。

投資信託のトレンド

トレンド(1)商品別

日経平均株価が1万円を超えると投信全体が活発化するといったおおまかな特徴が認められるが、売れ筋商品の傾向は、長期で見るとダイナミックに変化している。
2006―07年 新興国ブームで「海外株ファンド」が人気
2007―08年 金商法施行後「外債ファンド」が注目集める
2008―11年 リーマン・ショック後に登場した「通貨選択型ファンド」が不動の地位を築く。多いときには5割、少ないときでも2―3割ほどのシェアをキープ
2011年―現在 マーケットの状況が読みづらく「海外リート」「外債ファンド」が志向されている

意外と進まぬ「国際分散投資」

投信業界では外貨建てタイプの注目度が高いが、実態は、家計の国際分散投資はさほど進んでいない。家計が保有する外貨建資産の残高は12年3月末時点で42.8兆円で、総資産に占める割合はわずか2.8%にとどまる。ちなみに、42.8兆円の約半数に当たる24.6兆円が投信経由。投信における通貨別では米国ドルが39.4%と断トツに多く、次いで豪ドル21%、ブラジル・レアル9%、ユーロ8.1%と、高金利通貨の人気の高さがうかがえる。

トレンド(2)販売チャネル別

公募株式投信の設定額を証券と銀行の販売チャネル別に見ると、リーマン・ショック前までは同程度だったものが、2009年の通貨選択型ファンドの登場以降、証券の立ち上がりが早い。足元では銀行9312億円に対して、銀行は5447億円と、2倍近くの差が。一方、解約率についても証券が4%、銀行が2.4%と、証券のアクティブさが際立つ。

証券も銀行も、最近の解約率には豪ドルレートが多大に影響しているもよう。豪ドル・円で85円程度まで円安が進むと解約が多くなる傾向が。また、解約が膨らむと販売が増えるという状況も確認される。

トレンド(3)資金流出入の状況

リーマン・ショック以降、マーケットはボラティリティの高い状態が続いているが、月間資金増減額(設定-解約)は総じて流入超が続いている。しかし、分配金支払額を考慮すると、足元では2011年8月から13カ月連続で流出超が続いている。

月間資金増減額と分配金支払額の推移

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