ファンドマネージャーに聞く レオス・キャピタルワークス 藤野英人CIO(最高投資責任者)

概 況


金融相場から業績相場への移行に対応したポートフォリオ構築へ

レオス・キャピタルワークス 藤野英人CIO

レオス・キャピタルワークス
藤野英人CIO

レオス・キャピタルワークス 藤野英人CIO(最高投資責任者)

日本株市場は5月下旬から地合い一変。ファンドマネージャーは現状をどうとらえているのか、どのような見通しをもって投資しているのか。独立系運用会社レオス・キャピタルワークスの藤野英人CIO(最高投資責任者)に聞いた。

■現状認識

――昨年末にスタートした「アベノミクス相場」は、4月4日の「異次元緩和」導入決定を契機に上昇に拍車が掛かるも、5月23日のザラバ高値(1万5,942円)を目先天井に失速。現状の相場についてどうみているか。

「4月4日にいわゆる“黒田バズーカ砲”が放たれ、これをきっかけに想定を大きく上回るペースで上昇していった。あそこまで金融緩和をしなくてもよかったのではないかと思っているのだが、ともかく、相場は大きく上ブレていった。“上げ過ぎの反動”は相場につきもので、何かの拍子に調整するとみていたが、5月下旬からの下げ幅は想定以上のものとなっている。調整への準備が甘かったと反省している」

「一方、あのまま日経平均が1万7,000円、1万8,000円へ上げていったとすると、“上げ過ぎの反動”はとてつもなく大きなものになっていたと思われる。マーケットの寿命を長続きさせるという意味では、相場が若いうちに調整に入ったことは不幸中の幸いととらえている」

■当面は1万2,500-1万4,500円のもちあい相場

――当面の見通し。

藤野CIOの相場イメージ

藤野CIOの相場イメージ

「戻り待ち売りを考える向きが多く、当面、日経平均は1万5,000円ラインをなかなか抜けないとみる。一方で、1万3,000円割れといった下値では実需の買いが入る展開を想定している。従って、今後3カ月から6カ月間は、1万2,500-1万4,500円のレンジでのもちあい相場が続くとみている」

「『もちあい相場』から『上昇相場』に復帰するための“トリガー役”は、企業業績か為替。マーケットのことがワイドショーなどに登場しないなど、世間の関心が少し落ち着いたころ合いから再上昇するのだろう」

■これからは銘柄選別が物言う局面

――投資戦略。

「昨年末から5月下旬までの“アベノミクス相場”では、とにかく相場に付いていく戦略をとり、マーケット並みのパフォーマンスを目指した。裏を返すと、狂暴化し、何でもかんでも上がっていたアベノミクス相場で、マーケットをさらに上回るパフォーマンスを出すのはなかなか大変で、個人的には割と辛かった。上げ相場、下げ相場、横バイ相場と、どの相場でも運用していくのにそれぞれ大変なことがあるが、どちらかというと、私は銘柄選別眼が物を言う横バイ相場が得意」

「一方、これからはしばらくもちあい相場が続く。銘柄選別が物を言う局面だ。ファンダメンタルズの裏付けが重要になってくるとみており、金融相場から業績相場への移行に対応したポートフォリオを作っていく」

■製造業の洗い出し作業進める

――銘柄の選別ポイント。

「アベノミクス相場の前はサービス業が買われ、アベノミクス相場では流動性の高い大型銘柄が上がった。これからは製造業がくるとみており、景気回復の恩恵を受ける設備投資関連を含め、製造業の洗い出し作業を行っている」

「ただ、グローバル経済の先行きにやや判然としないところがある。グローバル経済は、世界をけん引する4つのエンジン『欧州』『中国』『米国』『日本』のうち、3個が動くと絶好調、1-0個だと不景気になる。ここ欧州と中国の具合が悪く、米国と日本だけ動いているが、米国も足踏みとなる可能性もある。このため、製造業についてもグローバル景気の先行きをにらみ、慎重に銘柄選択している」

「このほか、どのような相場であっても魅力的な輝きを放つニッチ・グロース銘柄や、成長企業はやはり外せない」

――そのほかのセクターはどうか。

「バイオ関連は、よっぽど割安か、新しい魅力的な技術を持っている銘柄以外は、PERが高いため、しばらく様子見。REIT(不動産投信)やノンバンクも相場の“旬”を過ぎた感がある。これらは長期金利が若干上がっただけで株価が崩れた。マーケットが金利上昇を気にしていることは明らか」

■シクリカル銘柄の投資手法

――成長企業とひと口に言ってもいろいろある。

「(1)半導体関連や機械株などシクリカル(循環)銘柄、(2)セリア(2782・JQ)など安定成長銘柄――をそれぞれとっていこうと考えている」

「シクリカル銘柄への投資手法として比較的有名なものに、『過去最高1株当たり利益ベースのPERが5倍以下の時に“買い”、PERが10倍になると“売り”』という手法がある。先日、過去最高益ベースのPER10倍以下の銘柄を数えてみたところ、その数は上場銘柄の56%に当たる2,000銘柄に及んだ。この基準でのPER10倍割れは、(1)株価が割安水準にある、(2)過去最高水準に業績が回復しない――という2つのメッセージを示唆していると考えられるが、過去最高水準に業績が回復しなかったとしても、株価が割高でなかったら暴落はしない」

「過去最高益ベースのPER10倍以下銘柄がこんなにもあるということは、現状の相場は決してバブルではないことを表している。株価に業績が反映されていない銘柄はとても多い」

藤野英人(ふじの・ひでと)氏
1990年から野村投資顧問(現・野村アセットマネジメント)、ジャーディンフレミング(現・JPモルガン・フレミング投信投資顧問)、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントと国内外の運用会社で活躍。特に中小型株・成長株で抜群の運用成績を残し、伝説のカリスマファンドマネジャーとうたわれる。2003年に独立し、レオス・キャピタルワークスを創業。公募投信「ひふみ投信」を運用している。同投信は2年連続で「R&Iファンド大賞2013」にて入賞。
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