再び脚光を浴びる日本株市場 フィデリティ投信 日本株セミナー

概 況


アレキサンダーR.トリーヴス氏

フィデリティ投信 運用部長
アレキサンダーR.トリーヴス氏

海外投資家の見方と今後の展望

フィデリティ投信 運用部長 アレキサンダーR.トリーヴス氏

フィデリティ投信は5月21日、報道機関向けに日本株セミナーを開催した。国内のポートフォリオマネジャーを統括する、運用部長のアレキサンダーR.トリーヴス氏は「足元では海外機関投資家の日本株に対する見方が変わりつつある」と前置きして、日本株の現状と展望、海外投資家の見方について語った。

海外の機関投資家はこれまで構造的な面から日本市場を弱気に見ていた。換言すれば、日本株市場を「長年の間、懐疑的に見てきた」のだが、そんな状況が足元で変わり始めている。昨秋、円相場と日本株は政策期待から反転。以降、海外投資家の目が、再び日本と日本株市場へ向かい始めた。

日本株市場の見通し

なぜ今、日本株なのか?

日本では国内の景況感に改善が見られるのみならず、クレジットと消費が好循環で拡大している。企業収益も着実に増大しており、足元の企業ファンダメンタルズはしっかりしている。一方、日本株のバリュエーションも世界比較では割安な水準に。

ポイント(1)消費拡大・景況感は改善傾向に

景気ウォッチャー調査が昨年10月を底に反発するなど、国内の景況感は現在、各種指標の正当性をもって改善傾向を示している。クレジット・インパルス(民間債務の対GDP=国内総生産=比率での伸び率)も急伸。今は横ばいが続く実質民間消費もこれに追随して、この先上昇するとみられる。

ポイント(2)世界比較で割安なバリュエーション

直近の株価上昇を経てもなお、日本株のバリュエーションは魅力的。PER(2014年度予想)は12倍ほどで欧米、アジアとほぼ同水準だが、1株益成長率(2013年度予想)が20%ほどと、欧州の2倍、米国の3倍ほどの水準に。

ポイント(3)「人口減少」は大問題にならない

人口増加と経済成長は必ずしも比例しない。過去30年間における世界184カ国の人口増加率と実質GDP成長率を見ると、どんなに人口が増えても、成長率は4%あたりに集中しており、双方に相関性は見られない。

重要なのは人口の大きさではなく生産能力だ。もしも日本企業が世界で競争できる水準の生産能力を確保できるのであれば、人口問題は心配材料とはならない。

日本企業の将来

日本企業の問題点の1つは「国際競争力」だ。例えば携帯電話メーカーの世界シェアを見ると、国内最大のソニー・エリクソンが2%ほどで、他社は1%未満。世界の競合サムソン、ノキアは20%ほど、アップルは5%ほどと大きく水をあけられており、日本陣営は厳しい情勢に立たされている。

一方、例えば自動車メーカーなどはその強靭(きょうじん)な体力と創造力で10年、20年先には今と違った姿を見せてくれるだろう。また、一般的には広く知られていない分野だが、今後はとりわけ医療、介護やヘルスケアなどの分野で日本の製造業の成長が期待される。

海外投資家による「日本株」現状判断

投資マネー、呼び水は「再教育」

これまで、海外で会う多くの投資家からは、「中国は度々訪問したことがあるが、日本には一度も行ったことがない」「長らく訪問していない」という答えが返ってきていた。ところが最近、彼らから「日本の状況についてもっと知りたい」との声が聞かれるようになった。

今後、世界の余剰資金が日本を目指すようになるかどうかは、政策がどのように実施されるかにかかっている。だからこそ、大手の海外機関投資家などに対しては、日本の動向や日本株への投資シナリオについて、きっちりと「再教育」していくことが重要だ。私が彼らに、アベノミクスが目指しているもの、それに応じて取られた日銀の政策の持つ意味など日本のストーリーを説明すると、多くの投資家は驚くほど受容的で、ネガティブな反応はそれほど見られない。日本株市場が現に堅調に推移してきている点も、彼らの受容的な姿勢を後押ししているようだ。

「アベノミクス」への評価

デフレからインフレへの転換を図る日本の動向を、海外投資家たちは静かに見守っている。安倍首相が掲げる2%のインフレターゲットは極めて野心的だが、この実現の成否よりも、デフレからの脱却の成否がより重要であり、それが多くの海外投資家の共通認識となっている。

なお、これは海外投資家に限った話ではないが、今は皆がアベノミクスという政策ばかりに注目し、過大に期待を寄せるようなムードがある。しかし、当然ながら安倍首相1人が日本の成長をけん引できるわけではない。投資家の立場で言えば、個々の日本企業の成長戦略にこそ注目していくのが本筋だ。

海外機関投資家の着目点

「アベノミクス」が何をやろうとしているのか? その点については海外投資家の間でも広く認知されているようだ。問題は、アベノミクスが掲げている改革に向けた指針が本当に実現していくか否かだ。

安倍政権が進める金融緩和や財政出動の効果を、もしも「官僚支配」が妨げるようなことがあれば、マイナス要因として海外投資家の目に映るだろう。また、今夏から本格化する政治・制度改革、7月の参院選や安全保障問題の動向などにも注視したい。また、日銀が債券市場をコントロールできなくなった場合なども、海外投資家は落胆するだろう。

円相場と東証株価指数

円相場と東証株価指数

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