「地味でもしっかりした企業はいずれ上がる」を経験から学ぶ ファンドマネージャーインタビュー

概 況


割安銘柄を拾って、じっくり待つを基本スタイルに

鎌田博光氏

鎌田博光氏

アムンディ・ジャパン 運用本部
日本株式ターゲット運用部長 鎌田博光氏に聞く

日本市場は5月下旬から荒っぽい展開となっている。ファンドマネージャーはこの相場をどう見ているのか。アムンディ・ジャパン 運用本部 日本株式ターゲット運用部長の鎌田博光氏に話を聞いた。鎌田氏は、追加型投信「アムンディ・ターゲット・ジャパン・ファンド」や国内外の年金基金など合計350億円を4人のチームで運用している(2013年5月31日現在)。アムンディ・ジャパンは、フランス系のソシエテジェネラルアセットマネジメントとクレディ・アグリコルアセットマネジメントの合併により10年7月に誕生した資産運用会社。

■皆が同じ意見の時は要注意

――日本市場は5月23日のザラバ高値(1万5,942円)を目先天井に高値波乱の様相。本日(28日)は一時、1万4,000円割れを見た。個別の視点から全体相場を眺めている鎌田さんの目に、今の日本市場はどう映っているのか。

「『5月下旬まで急ピッチで上昇していたのだから、多少の調整は当たり前。ある程度経てばまた上がるだろうから、ここは押し目買い好機』と市場関係者のほぼ全員が口をそろえて言っていた。私は、皆が同じ意見の時は要注意と思うタイプ。まだ皆が同じ意見のため、中間調整といっても、もう少し深く、もしくは、もう少し長く調整することになるかもしれない」

「例えば、6月にまとまる成長戦略が大したことないなど、マクロ要因か何かで、一部の人が振り落とされないと、上がらないのではないか。むろん、1万5,000円程度までは目先回復する可能性はあるが、同時にやれやれの売りも出てこよう。そうした売りを吸収し、1万6,000円以上に押し上げる買いパワーが今あるかどうかは疑問。外国人投資家も日本株に投資をしたい人は一通り買ったようであるし」

「一方、売りたがっている人は多い。5月下旬までは、企業による持ち合い解消の売りにしても、本来売るはずが、上昇基調にあったためにひとまず見送り、機関投資家にしても債券の売却で利益を確保できたため、株式の利食いをひとまず見送ることにしたところがあるとの話を聞く。こうした向きは、株価上昇が止まれば、もしくは、株価が多少持ち直してくれば、売ってくる。そうなると、調整に2-3カ月費やすかもしれない。調整が長引き、『やはりもう上がらないか』と市場が言い出すまでは上がらないのではないか」

■日本を見くだすな

――中長期の観点ではどうか。

「日本経済がバブルに沸いた1989年に発売された書籍『Rust to Riches:The Coming of the Second Industrial Revolution』(邦題・アメリカを見くだすな-日米経済の盛衰は逆転する)を最近、久しぶりに読み返してみた。その題目に倣えば、今は『日本を見くだすな』という状況にあるように思う」

「そこに描かれている『日本vs米国』という当時の構図が、『日本vs韓国』に置き換わっていると考えると面白い。その構図に中国も加わっているので日本はなかなか大変だが、中長期で見ると、日本はいい状況になってきている。あとは良い政策が出てくれば…。例えば、法人課税。法人所得課税の実効税率は、日本は35%程度だが、他国は20%台が当たり前になってきている。5月下旬からの日本株の下げは『政策催促相場』の面もあるとみている」

■資産価値から見た割安株にフォーカス

――鎌田さんといえば、資産価値から見た割安株投資で知られる。2000年夏に設定された追加型投信「アムンディ・ターゲット・ジャパン・ファンド」(旧名称:SGターゲット・ジャパン・ファンド)は、設定当初こそ基準価格(1万円)を若干割る場面もあったが、02年3月以降、一貫して1万円を上回り続けている。

「当ファンドはITバブルに沸いた00年8月に設定された。IT関連以外は割安株だらけと思っていたところに、『IT以外の中小型株にも投資したい』という投資家の要望があり、ファンド組成の運びとなった」

「運用にあたり、一番大切にしていることは『安心・安全』。安心して持っていただき、資産形成できるファンドを目指しており、地に足のついた運用を心がけている。投資先は、割安で、かつ、お金をかなり保有している企業としている。お金がある企業は、倒産リスクが低いともいえ、しかもお金があるわけだから、投資、配当、自社株買いなど、“生きたお金の使い方”をすることが可能である。生きたお金は、株主、企業の双方にメリットをもたらす」

――割安度合いを計る尺度はPER、PBR(株価純資産倍率)などいろいろあるが、同ファンドではPBR重視で資産価値から見た割安株に投資をしている。なぜPBRなのか。

「業績には山谷がある。業績は読み間違えることもあり、読み違えるとPERが変わる。また、利益はコストの掛け方で変わり、黒字と赤字は紙一重という部分がある。もろもろを勘案し、資産価値から見た方がリスクが低く、“安心・安全”と判断している。リターンの面でも、例えば、PBR0.7倍の銘柄がPBR1倍に戻ったとすると、上昇率は43%となり、大きなリターンを得られる。当ファンドの平均PBRは現在0.7倍台。そういった意味ではまだ安い」

「参考までに、5月末現在で全上場銘柄の55%がPBR1倍割れを起こしている。その中で投資家にきちんと知られていないが故、安く放置されているものがある。業績が上がれば、株価も上がるタイプならば、拾っておくのも一法。私の場合、割安になったところで拾って、じっくり待つスタイルで、平均保有期間は3年。企業が変わるには、ある程度の時間が必要と考えており、それはそれでいいのかなと思っている」

――組入銘柄にも、投資哲学が表れているように思う。

アムンディ・ターゲット・ジャパン・ファンド
組入上位10銘柄
銘柄 業種 比率
1 キッセイ薬品工業 医薬品 2.6%
2 天馬 化学 2.5%
3 東京応化工業 化学 2.3%
4 日本電設工業 建設業 2.2%
5 トッパン・フォームズ その他製品 2.2%
6 共英製鋼 鉄鋼 2.1%
7 積水樹脂 化学 2.1%
8 アルパイン 電気機器 2.0%
9 日本新薬 医薬品 2.0%
10 長府製作所 金属製品 2.0%
組入銘柄数:83銘柄 上位10銘柄合計 22.0%
※2013年4月30日現在

「4月末現在の組入上位は、キッセイ薬品工業(4547)天馬(7958)東京応化工業(4186)日本電設工業(1950)トッパン・フォームズ(7862)など(表参照)。地味だが、いずれも強みを持ち、しっかり地に足つけて事業を展開している企業だ。いくらお金を持っていても事業基盤が弱い企業はそのうち淘汰(とうた)されるかもしれないが、事業基盤の強い企業は生き延びる確率が高い。そして生きたお金の使い方をしているかどうか、無駄遣いをしていないかどうかをチェックしている。例えば、M&A(企業合併・買収)にしても、すればいいというものでもない。見誤らないように努めている」

――投資先の時価総額。

「時価総額についてはそれほど気にしていない。実際、時価総額別で見ていくと、1兆円以上(1銘柄)のものから、100億円未満(2銘柄)まで幅広い。ただ、流動性が低過ぎると思った時に売れないので、流動性については気を配っている」

■“ポンと買って10年ぐらいほっといても安心なファンド”目指す

――投資家へのメッセージをお願いします。

「本当に地味なファンドで地味な企業に投資している。『相場は、一寸先は闇』という考えをベースに地道に運用している。地味でもしっかりした企業はいずれ上がる――ということはこれまでの経験から言える。これからも“ポンと買って10年ぐらいほっといても安心なファンド”でありたいと思っている。とてもありがたいことに、10年以上保有されているお客さまもいる。数あるファンドの中から選んでくださっているわけであり、これからも襟を正していかなければと思っている。また、すべてがうまくいくわけではない。どうしても失敗はある。失敗したこともすべて話し、ありのままでありたいと思っている」

【略歴】鎌田博光(かまた・ひろみつ)氏
1983年に山一證券入社。盛岡支店(岩手県)で営業を経験した後、国際営業部に配属。そこでファンドマネージャー経験のある先輩と話をする機会を得て、その人柄、仕事に対する姿勢に引かれ、ファンドマネージャーになることを志す。86-89年に同証券のオランダ子会社へ出向、89-92年に日本株の先物・オプションのトレーダーとしてさまざまな経験を積み、93年から山一投資顧問(現アムンディ・ジャパン)で主に大型成長株や小型成長株のファンドなど、2002年からは割安株ファンドの運用を担当。13年5月31日現在、追加型投信「アムンディ・ターゲット・ジャパン・ファンド」や同様のコンセプトの国内外の年金基金など合計350億円を運用している。座右の銘は「千里の道も一歩から」
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