アジア債券投資「見直し好機」到来 HSBCアジア債券セミナー

概 況


ファンド良好&低ボラティリティも、高利回り続く

セシリア・チャン氏

セシリア・チャン氏

HSBCグローバル・アセット・マネジメント(香港)
アジア・パシフィック債券運用部門責任者 セシリア・チャン氏

HSBCは4月8日にアジア債券セミナーを開催した。景況感回復で債券から株式への資金シフトが聞かれるが、同社でアジア・パシフィック債券運用部門責任者を務めるセシリア・チャン氏によれば「確かに個人レベルでは鈍化しているが、アジア通貨建ての債券は純流入超が続いている」とのこと。バランス型ファンドへの資金シフトが、アジアのクレジット需要を大きく下支えしているという。今回は、同氏が語った「アジア債券の相対的な魅力(リラティブ・バリュー)」を抜粋して紹介する。(本文中のデータなどはセミナー開催時点のもの)

アジア債券、好パフォーマンス続く

アジア債券は2009年以降、良好なパフォーマンスが続いている。「HSBCハードカレンシー建アジア債券指数」の利回りは2008年に付けた10%をピークに、足元では3.6%にまで低下。「JPモルガン・アジア・クレジット指数(JACI)ハイイールド社債指数」の利回りは25%から6.8%へ低下している。2012年のパフォーマンスは前者が12.7%、後者が25.4%で、同時期の「シティグループ米国国債インデックス」は2%、「シティグループ豪州国債インデックス(豪ドルベース)」は5.5%にとどまる。

ハードカレンシー建アジア債券指数の平均格付けの推移

ハードカレンシー建アジア債券指数の平均格付けの推移

投資機会はさらに拡大

2012年はハードカレンシー建アジア債券市場が大きく成長した。「HSBCハードカレンシー建アジア債券指数」の時価総額は前年比44.8%増の3,460億米ドルと、2000年から12年までの年平均伸び率22.5%を大きく上回った。

ハードカレンシー建アジア債券市場は引き続き拡大が予想されている。投資適格社債、ハイイールド社債の新規発行額は、2012年実績で合計1,203億米ドル。うち300億米ドルほどがハイイールド債券だった。今年は少々減速して合計1,050米億ドルの発行が予想されているが、ハイイールド債券の発行額が年間予想390億米ドルなのに対して、2月末時点で既に145億米ドルに達していることから、上ブレするとみる。

ファンダメンタルズは良好

アジア・クレジット債券とアジア株式のボラティリティ

アジア・クレジット債券とアジア株式のボラティリティ

ファンダメンタルズは良好だ。アジアにおけるデフォルト率は欧米など他地域に比べて低水準で推移している。一貫して2%を下回っており、0%という年も。

さらに、2013年後半には世界景気の改善が予想されており、格付けを押し上げるとみられることもプラス材料。現在、アジア諸国のソブリン格付けは平均でシングルAといったところ。フィリピンを除くすべてが投資適格だが、フィリピンも間もなく投資適格に格上げされるだろう。

ちなみにアジアの株式は2012年のリターンが4.8%だったのに対して、債券は8.1%と大きく上回っている上に、ボラティリティは株式を大幅に下回っている。

セクター別の見通し

■ソブリン債:アンダーウエート。インドネシアと、格上げが期待されるフィリピンはバリュエーション面で割高。

■準ソブリン債:中立―ややアンダーウエート。インドネシア、フィリピン、韓国はソブリン債に対して高い利回り。当社ではソブリン債の代わりにこちらのウエートを高めている。

セクターアロケーション

セクターアロケーション

■投資適格社債
香港/不動産:オーバーウエート。信用力が高く、中国本土の二級都市に進出する不動産ディベロッパーに高利回り追求余地が。
韓国/銀行:アンダーウエート。信用ファンダメンタルズは良好だが、韓国の準ソブリン債に比べて割高。
インド/銀行:中立。当面は格下げの可能性は低く、比較的利回りが高い。
中国/資本財:オーバーウエート。大半が国有企業だが信用力はまちまち。香港社債に比べて利回りが高い。
中国/石油・ガス:中立。信用力の高い国有企業。

■ハイイールド社債
中国/不動産:オーバーウエート。不動産需要は旺盛だが政策リスクが残る。流動性が向上した発行体が多い。中国の資本財セクターに比べて透明性が高い。
中国/資本財:中立。企業により信用力はまちまち。新規発行の少なさと中国経済の安定がプラス材料。
インドネシア/石炭:中立。業界見通しは楽観できないが一過性の要因が多い。

現地通貨建アジア債券の投資戦略

ハードカレンシー建および現地通貨建債券の利回り推移

ハードカレンシー建および現地通貨建債券の利回り推移

ハードカレンシー建アジア債券と同様に、現地通貨建アジア債券もアジアへの資金流入の恩恵を享受するだろう。現地通貨建債券は大半が国債で、ハードカレンシー建債券に比べて利回りが低い傾向があるが、債券価格は比較的に安定している。ハードカレンシー建債券よりも総じて高い信用力を有しているにもかかわらず、現在の利回りは同水準に。

戦略(1)通貨/他地域より上昇率が低く出遅れ感

「HSBC現地通貨建アジア債券指数」の2001-2012年の年平均リターンは8.3%で、1.5%が通貨からの寄与。今後は人民元の国際化が進むなど、為替差益の寄与度が高まる見通し。

アジアの金融当局は輸出競争力を高めるため意図的に自国通貨安を誘導してきた。しかし、当局がインフレ抑制を優先させる必要性から、こうした状況に変化が見られる。2000-2012年ではアジア通貨は対米ドルで12.7%上昇したが、直近5年間(2008-2013年)はわずか3.1%にとどまっている。

戦略(2)デュレーション/金利は据え置き

欧州問題はいまだに解決せず米国の成長もまだ不確定なため、アジア新興国については、インフレよりも成長性に焦点が当てられると考える。おおよそのアジア諸国では政策金利は据え置かれるとみるが、マレーシア、フィリピン、インドネシアでは年末までに0.25%の利上げの可能性がある。例外はインド。さらなる金融緩和で政策金利を0.25-0.75%程度引き下げる可能性が。

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