第5回ETFコンファレンス/前編  日本のETF市場は5倍に拡大

概 況


アジア各国ではクロスボーダーETFが活況

S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは4月4日、今年で第5回目となる「S&P ETFコンファレンス」を帝国ホテルで開催。国内外からETF(上場投信)の専門家を招き、7時間超にわたって講演やパネルディスカッションが行われた。今回は、東京証券取引所の小沼泰之執行役員による基調講演と、有識者6人が「世界市場におけるETF市場の動向」について議論を交わした第1部パネルディスカッションでの発言内容を抜粋して紹介する。

基調講演 日本におけるETP市場の動向

小沼泰之氏

小沼泰之氏

東京証券取引所
執行役員上場推進部長 小沼泰之氏

世界経済に目を向けるとあらゆる産業で熾烈(しれつ)な競争が繰り広げられている。取引所も例外ではない。東証はエクイティの調達金額やIPO(新規上場)件数でアジアのほかの取引所に引けをとらない存在だが、今後は、豊富な国内金融資産がアジアに向かって各国の経済成長を支える、アジアの金融ハブを目指す。

そのためにも投資家層の拡大に注力するが、ETFとETN(上場投資証券)(以下ETP)は極めて重要なツールだと考える。ETPは商品性が分かりやすく、個々の投資判断が不要。ラインアップも豊富で、株や債券、コモディティなどさまざまな資産に投資したのと同様の効果が手軽に得られる、今世紀最高の投資商品だと考える。

商品そろうも「売買頻度」が課題

近年ETP市場は世界で拡大の一途をたどり、足元の残高は190兆円ほど。一方で日本の残高は5兆円ほどにとどまることから、われわれは国内ETP市場の拡大余地はまだまだ大きいとみる。

日本のETPの歴史は浅い。しかし2007ー08年あたりから金融庁のイニシアチブの下で細かいルールづくりに着手するなど、東証ではETPの「新ステージ」創設に力を入れてきた。昨年はレバレッジ型・インバース型ETFの上場制度が整うなど、現在では世界のおおよその国と並ぶような商品範囲を網羅するまでに。

昨秋より日本株式市場は活況で売買金額が2倍以上に膨らんだが、ETPはそれを上回る4―5倍に(※)。しかしバイ&ホールドの投資家が多いようで、さらなる活性化が課題だと考える。保有銘柄情報「PCF」や1口当たり推定純資産額「iNAV」といった投資情報の拡充に引き続き注力する。

※コンファレンス後に発表された4月月次概況では、ETF立会内売買代金が市場開設以来最高の1兆2903億円を記録。2012年の月間平均売買代金2204億円の約6倍もの大商いとなった。

デイビッド・クア氏

デイビッド・クア氏

パネルディスカッション 日本を含むアジア各市場の動向

香港取引所
グローバルマーケット部門
発行機関・クライアントサービス
部長補佐 デイビッド・クア氏

「香港取引所はここ1―2年でETFを含めた人民元取引のプラットフォームを構築。中国本土の投資家が自国通貨のまま香港でトレードできる仕組みを整えた。今後は中国と海外とを結びつける中継地点としての役割を目指す。最近は中国株を対象とした3つのインデックスを作った。国境を越えたインデックスとして注目されるだろう」

マイケル・シン氏

マイケル・シン氏

シンガポール取引所
シニア・バイス・プレジデントおよびデリバティブ部門代表
マイケル・シン氏

「小さなマーケットなので中立性が重要。自身のインデックスは持たない。一方で、中国やインドなど、ほぼすべてのアジア内取引所と提携している」

「シンガポールはデリバティブ市場の流動性が高く、例えばインドなど他国企業への理解も進んでいる。機関投資家が、アクセスが簡単ではないインドなどへ投資する機会も多く、その際にはETFが活用されている」

「例えばアジアの債券ETFを複数の通貨で上場するなど、今後はアジア各国の通貨を扱うことを視野に入れている。アジアは欧州とは異なり経済的な融合がまだ起きていないが、今後はシンガポールを中心にこれが進むと考える」

ヒュンジョー・チャイ氏

ヒュンジョー・チャイ氏

韓国取引所
証券化商品開発チーム長
ヒュンジョー・チャイ氏

「韓国取引所には現在137本のETFが上場。売買代金の35%を個人投資家が占めるが、今後は多くの機関投資家を引きつけたいと考えている。昨年には商品拡大を目指して上場基準の改正を行った。海外ETFは未上場だが『新興国』『高利回り』などに着目した商品を実現すべく現在協議中」

東京証券取引所
上場推進部課長
木村亮太氏

木村亮太氏

木村亮太氏

「3月26日に発表した中期経営計画の中で、ETPの商品多様化と販売促進、アジア各国取引所との連携を掲げている。東証には現在149銘柄のETPが上場。うち26銘柄が重複上場で、その数は増加傾向にある。ルール改定により、世界で上場する著名なETPが東証にも上場できるようになったため。今後は重複上場の誘致活動にいっそう注力する。投資家が希望する商品へすぐにアクセスできるようにすることが、取引所の使命」

ブラックロック・ジャパン
iシェアーズ事業部長
上坪淳一氏

上坪淳一氏

上坪淳一氏

「ETPは既に、各種資産を組み合わせる『マルチ・アセット運用』の一手段として国内の年金基金が活用している。例えばアジアのエクスポージャーをとる際には『アジア株』といった大分類ではなく、国や業種、中小型、高配当などのテーマ性にまで利用の範囲が広がっている。そして世界に目を向けると、高配当、ミニマム・ボラティリティといった付加価値を持つ商品が注目を浴びている」

「一方でリテール顧客については、例えば2012年はUSリートのETFを使って組成されたファンドの人気が高まった。従来であれば中身のリートに1つずつオプションをかけるという作業が発生するが、ETFはそれを解決してくれる上に、流動性の面でも安心」

ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ
証券営業部長
中岡寛晶氏

中岡寛晶氏

中岡寛晶氏

「当社はこれまで米国と香港から3つのETFを東証に重複上場させている。投資家の選択肢を増やすためで、重複上場ETFの使い方はいくつかのパターンが想定される。

●日本円&日本語での取引を望む投資家:開示資料も日本語で用意されるので、商品への理解が進み、認知度も高まる。中には日本円でのみ投資ができる機関投資家も。

●海外市場クローズ時に利用:当社の「スパイダー ゴールド・シェア(コード:1326)」は東証のほかメキシコ、香港にも上場しており、それぞれ取引時間や通貨が異なる」

「ETFは投資の民衆化を促す商品だ。今や投資マネーは世界のどこにも自由に向かうことができ、言い換えれば、取引所はマネーから選んでもらう存在に。日本株がアベノミクス効果で盛り上がる中、興味を抱いた外国人投資家が日本上場ETFではなく米国に上場するETFに注目するという状況は問題だろう。制度やインフラを改良して、アジアのフラッグシップのプロダクトを本気で目指すべきだと考える。アジアには欧米のようなフラッグシップのETFがいまだ存在しない」

後編に続く

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