2013年不動産投資戦略 ラサール インベストメント マネージメント

概 況


不動産マーケットへの資金シフト続く
グループ・リサーチ担当者などが語る

世界有数の不動産投資顧問会社、ラサール インベストメント マネージメント インクは2013年の不動産市場をどう見ているのか。先に同社が開催した「グローバル不動産投資戦略セミナー」での講演ポイントを紹介したい。同社は、私募、公募、デット、エクイティのあらゆる不動産投資活動を世界中で展開しており、総運用資産残高は約477億ドル(12年12月末現在)。主要顧客は世界の公的年金基金、企業年金基金、保険会社、政府関連、そのほかの基金(大学基金など)、個人投資家など。

ジャック・ゴードン氏

ジャック・ゴードン氏

【グローバル不動産市場】

ラサール インベストメント マネージメント
グローバル投資戦略・リサーチ責任者 ジャック・ゴードン氏

「先進国は、GDP(国内総生産)、金利、インフレ率のどれをとっても低い(LOW)『ロー・ロー・ロー』の状態にある。この局面では安定利回りへのニーズが強まり、不動産に資金が流入する。13年も超金利とリスク回避姿勢を背景に、安定稼働の優良不動産に投資資金が集中し、低い調達金利が購入価格上昇によるリターンの縮小を相殺しよう」

「ただ、『ロー・ロー・ロー』もいつかは終焉(しゅうえん)を迎える。金利や物価が上昇に向かうと、リスク回避姿勢が緩和され、投資対象となる不動産が広がり、不動産市場は様変わりする。こうした変化は15年までに起こり得る。有望エリアもこれまでは世界6、7都市と考えられてきたが、それも変わってくる。インフレ対応を兼ね、安定的にインカムを得られる賃貸不動産にもう少し目を向け、また、そのほかのセクターについてもやや“リスク・オン”の姿勢をとった方が良いと考えている」

高野靖央氏

高野靖央氏

【日本の不動産市場見通し、投資戦略】

ラサール不動産投資顧問
日本投資戦略・リサーチ担当 高野靖央氏

■投資戦略

「日本は金融危機後、回復が遅れていたが、昨年からようやく回復の兆しが出てきた。(1)国債利回りが上昇するまで、インカム重視の投資が続くとみられること(2)“人の一歩先行く投資”“先を見据えた投資”がより大きなリターンにつながる環境になりつつあること――から投資対象を広げていきたい。物流施設、地方の賃貸不動産などを含め、『投資セクター、投資エリアを広げる』ことが13年の投資戦略」

■安定的かつ高い利回りの不動産は?――物流施設と住宅、郊外型商業施設

「物流施設はインカムリターンが相対的に高い。住宅もインカムリターンが高く、地方のキャップレートは6%台にある(東京都心は5%前後)。このほか、郊外型商業施設は、投資家の需要が最も低いが、利回りは一番高い。正しく選択し、アクティブに運用すれば、高いリターンを得られると考えている。こうしたところに先駆けて投資することが、好リターンにつながろう」

「投資対象として、コア投資では『物流施設』『郊外型商業施設』を推奨したい。高リターン投資では、『近代的物流施設の開発』『ホテルの改修』『流動性が少なくコア並みのインカムを生む不動産』を推奨する」

■主なセクター別動向

(1)物流施設

「物流施設は、日本においてはこれまでマイナーなセクターだったが、強いテナント需要と、極めて安定したキャッシュ・フローを背景に、ここ脚光を浴びている。物流効率化・コスト削減を背景に大型施設へのテナントの移転が続いており、需要増に伴い新規供給が増えているが、今後3年間、需給が崩れる心配はないとみている」

(2)郊外型商業施設

「郊外型商業施設は、テナントの需要は安定しており、特に生活必需品主体のテナントの出店意欲は旺盛だ。一方、コア投資家であるREIT(不動産投信)は、昔は大型ショッピングセンター(SC)に投資していたが、SCは人口の変動やeコマース市場の影響を受け続ける業態であり、最近は大型ショッピングセンターへの需要は縮小し、単一テナント型、専門店型、強い商圏があるものを選び始めている」

(3)オフィス

「オフィスは賃料が回復に向かおう。ただ、東京では今年は新規供給が減るが、来年、再来年と再び増加してくる」

「同セクターは、リーマン・ショックで大きく需給バランスが崩れたが、都心のグレードAの物件は相対的にまだ割高である一方、賃料低下でキャッシュ・フロー、利回りは低下した。中で、グレードBの物件は安定的なパフォーマンスを挙げるとみている。理由は、20億―100億円の物件はポートフォリオの分散に適し、実需もターゲットに入ってくるためだ。長期的に安定したキャッシュ・フローを望む投資家にはもってこいと思っている」

中嶋康雄氏

中嶋康雄氏

【日本の物流不動産市場の動向】

ラサール不動産投資顧問
代表取締役兼CEO 中嶋康雄氏

「日本のキャピタルマーケットの中で、物流不動産が非常に注目されている。昨年後半にはIPO(新規上場)も相次いだ。(1)安定したインカム、(2)タイトな需給、(3)キャピタルバリューの上昇――が人気の背景」

「特に大型物流倉庫の需要は、物流の外注拡大、物流拠点の統合・集約、不動産のオフバランス化、耐震構造・免震構造物へのニーズの高まりなどにより増加している。また、eコマース市場の拡大は、商品の保管スペースを小売店舗から物流施設へ移転させる動きといえ、こうしたことも需要拡大を後押ししている。エリアで見ると、従業員やパートの確保が大きなテーマになっていることから、通勤がしやすく、消費地にアクセスしやすい大消費地に需要が集中している」

「一方で、投資に適する近代的大型物流倉庫は、倉庫全体の2%にすぎず、首都圏の大型物流倉庫は15年まで需給タイトな状態になるとみている。倉庫はほかの不動産に比べ工期が短く、需要に早期に対応できることも需給タイトとなる一因。大阪圏については、供給が少なく、空室は限定的、賃料上昇は東京を上回ろう」

■アベノミクスについて

「多くの投資家は不動産に関しても、株式、債券と同様、分散投資が肝要と考えるようになってきている。今後10年程度は、海外投資家による日本の不動産投資が増えるだろう」(ジャック・ゴードン氏)

「アベノミクスの効果はまだ判断できないが、少なくとも資本市場では歓迎ムードが高まっている。投資の機会は間違いなく増えよう」(ポール・ゲスト氏)

トッド・カンター氏

トッド・カンター氏

【グローバルREIT市場】

ラサール インベストメント マネージメント
アジア太平洋地域CEO兼グローバルストラテジスト
トッド・カンター氏

「グローバルREITは12年に力強い上昇を見せ(+24.6%)、グローバル株式(+11.8%)を上回るパフォーマンスを見せた。グローバルREITの力強いパフォーマンスは、少なくとも数年間は続くと見ており、13年から16年までの4年間の収益成長率平均としては+7.3%と予想している。地域別の今後4年間の収益成長率平均は、米国の+10.0%を筆頭に、英国+7.3%、香港+6.3%、シンガポール+5.9%、カナダ+5.7%、オーストラリア+4.0%、欧州大陸+2.5%、日本-1.4%と予想している。日本については、オフィス賃料のギャップが依然大きい。賃料、価格、ファンダメンタルズなどを総合的に勘案してアンダーウエートとしている」

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