フィデリティが語る『米国リート市場』の今

概 況


フィデリティ投信 マネージャー来日講演/後編(→前編)
需給バランスに妙味「商業用不動産」に着目

スティーブ・ビューラー氏

スティーブ・ビューラー氏

フィデリティ・マネジメント・アンド・リサーチ・カンパニー
ポートフォリオ・マネージャー スティーブ・ビューラー氏

フィデリティ投信は2月7日、会員向けに同社の2大旗艦ファンドをテーマにしたセミナーを開催した。「フィデリティ・USハイ・イールド・ファンド」を運用するハーリー・ランク氏と、「フィデリティ・USリート・ファンド」を運用するスティーブ・ビューラー氏が来日、ファンドの運用状況や魅力を語った。今回は、後者スティーブ・ビューラー氏による講演内容を抜粋して紹介する。

米国リート市場の現状

米国リートは2012年末時点で139銘柄、時価総額は約5,400億米ドル(約47兆円)に上る。Jリートのように小売や住宅、オフィスだけにとどまらず、ヘルスケアやホテル・リゾートなど業種が多岐にわたることから、分散化が図れる点が大きな魅力。15年、20年という長期で見ると、米国のほかの資産クラスを凌駕(りょうが)するリターンを上げている。

■環境は米国リートを後押し

2013年も引き続き、米国では財政問題など政治的不透明感が継続するだろう。一方で、足元では失業率が改善傾向にあり、GDP(国内総生産)プラス成長も期待されている。

こうして非常に緩やかながらも景気回復が顕著になった今、注目すべきなのが米国リートだ。景気や株式市場が極端に過熱したり冷え込んだりしていない環境において堅調に推移する傾向が見られる。中でも、米国リートが投資する商業用不動産の稼働率は改善が続いており、リーマン・ショック前の水準に近づいている。

米国商業用不動産の新規供給

米国商業用不動産の新規供給

商業用不動産は全般的に新規供給量が低く、足元の着工物件面積は、1984年から2012年までの平均10億平方フィートを大きく下回っている。米国では人口が毎年約0.9%増加する上、今後は経済成長も見込まれているものの、商業用不動産の増加率は約0.8%にとどまっている。

こうして需給ひっ迫による稼働率上昇、賃料安定化により、商業用不動産の収益力が向上。賃料から経費を控除したNOI(Net Operating Income)は2010年7-9月期以降にプラスに転じている。

業種別の動向

米国リートの中でも業種によって値動きや業績にバラつきがある。商業用不動産のうち、3つのセクターの動向を見てみよう。

■注目セクター(1)オフィス

雇用回復の遅れや過去にオフィスが大量供給されたことなどから、非常に緩やかな回復にとどまっている。しかし、今後も優良物件の新規供給量が限定的とみられることはポジティブ。米国のオフィス増加率は、近年では過去平均を大きく下回っており、この状況は今後数年続くと見込まれる。賃料の上昇率は昨年プラスに転じたものの、本格上昇はまだ先とみる。

■注目セクター(2)倉庫

米国では頻繁に転居する人が多く、倉庫需要の半分程度を個人の引っ越し需要が占めており、足元の住宅市況の回復は追い風。また、倉庫の建設許可件数は近年縮小気味で、新規立ち上がりの減少とともに倉庫セクターの稼働率が改善している。

■注目セクター(3)小売

中でも魅力度が高いのはショッピングモール。増加率は1995年から2011年までの平均1.5%に対して、2009年以降は1%を大きく下回る状態が続いている。新規建築は今後数年間にわたって過去平均を下回ると予想され、テナント同士の優良物件獲得競争による賃料上昇が期待される。

米国リートの今後

米国リートとその他資産の騰落率

米国リートとその他資産の騰落率

■リターンの源泉創出に期待

リート投資を検討する際、新規物件の取得・開発に欠かせない資金調達力についての分析は極めて重要だ。史上空前の低金利が続く現在、米国上場リートは過去最低水準のコストで資金調達が可能。2012年には630億ドルと過去最高額を調達し、250億ドルの物件を取得した。10億ドル超の大型の案件もあり、今後創出される新たなリターンの源泉への期待も高まる。

■バリュエーションは割高か?

リートの収益力を計る指標の1つFFO(※)に対してリートが何倍まで買われているかを示すFFO倍率は16倍と、1996年から2012年までの平均12.4倍を上回っている。しかし、米国リートの1株当たりFFOは2013年に8%の伸びが予想されていることから、現在のリート価格は力強い成長期待を反映したものと考えられる。

※Funds From Operationsの略。リートが本業である不動産賃貸業から得るキャッシュフローのうち、投資家に配分可能な金額を示す

■配当利回りは依然「魅力的」

米国リートの配当利回りと10年国債利回りの差はプラスの水準にあり(2012年末で2%ほど)、かつ、過去平均を上回る。

「フィデリティ・USリート・ファンド」概要

主として米国の取引所に上場するリートに投資を行う。2003年12月運用開始。3月26日時点の時価総額はAコース(為替ヘッジあり)が1万227円、Bコース(為替ヘッジなし)が5,818円。純資産総額はそれぞれ106億円、8,083億円。

ボトムアップ・アプローチによる個別銘柄選択を基本に銘柄を選定。2012年末時点の組み入れ銘柄は57と集中投資で保有し、足元では倉庫、ショッピングモールをオーバーウエートとする。

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