世界は「流動性の罠」に悩まされるも、投資チャンスは膨大 GAM新春運用セミナー2013/前編

概 況


GAM証券投資顧問は1月22日に「新春セミナー」を開催。スイスを拠点に運用総資産1,174億米ドル(約11兆円)を保有するGAMグループが運用するファンドのマネジャー、担当エコノミストおよびアナリストを招集し、世界経済、債券市場、株式市場における2013年の展望が語られた。その内容を抜粋して紹介する。

50 Shades of Zero / 流動性の罠における金融政策について

ジム・コンクリン氏

ジム・コンクリン氏

通貨、グルーバル・マクロ、債券戦略担当CIO兼
リサーチ・ディレクター ジム・コンクリン氏

金融危機を契機に家計や民間セクターが投資をせず、現金を持つことが有効だと考える状況が続いている。中央銀行がどれほど流動性を供給してもためこまれてしまい、インフレが起こせない「流動性の罠(わな)」に、世界が苦しめられている。

■反転迎える市場、投資機会は“豊富”

各国の中央銀行は大量の国債を購入するなどして債券市場に介入。政策金利は限りなくゼロに近い。こうして中銀が資産の流れを支配する世界において、「果たして長期的なマクロ投資の機会はあるのか?」といった質問をよく受ける。

われわれの答えはイエスだ。今後5-10年間に膨大なチャンスがあると考えている。財政不安の必然的解決は、歴史的な収益機会を提供してくれるだろう。さらに米国、欧州、日本、英国など主要先進国はそろってゼロ金利政策を実施するものの、金融政策の中身が大きく異なるため、それぞれが収益機会をもたらす。

主要国の財政状態は前代未聞の状態だ。金融危機から5年経過したにもかかわらず、米国、欧州、日本、英国ではGDP(国内総生産)に占める公的債務が拡大傾向に。もはや財政政策は持続不能な状態に陥っている。英国では戦時中に債務がGDP比で200%を超えたが、これは一時的な事象だった。現在、主要国が抱えている問題は、年金制度などセーフティーネットの構築とその結果もたらされた老齢化などによるものなどで、非常に根深い。終戦後に債務を返済という具合にシンプルな解決は望めず、今後も続く金融緩和のために債務はますます膨らむばかり――となれば、これら問題を「どの国が」「いつまでに」「どれくらいの速度で」解決するかを考えることで売買の機会が芽生えてくるだろう。「永遠に続かないもの」、それは物事の終焉(しゅうえん)を意味し、今後の反転が期待される。

■地域別の見解(1)日本

安倍政権は強い信念を持ち、積極的に政策提言を行っているが、その効果はまだ保証されていない。デフレ脱却まで無期限で資産買い取りプログラムを実施するとの方針を打ち出したが、まだインフレは見られず、期待が長期国債価格にも織り込まれていない。昨秋の政権交代に伴って円安が進行、日経平均もこれに追随したものの、日本国債と、国債と物価連動債との利回りの差である「ブレーク・イーブン・インフレ率」は昨年11月からわずか5ベーシスほどしか動いていない。

FRB(米連邦準備制度理事会)はかつてマイナスの実質金利を達成。うまくいけば日本も流動性の罠を克服することは可能ではあるが、そもそも日本の場合、低成長の真の要因は別のところにあると考える。日本はすでに高成長の国。生産年齢人口当たりの成長率を見ると、1992年から2001年まではほかの先進国を下回っていたが、直近10年間ではドイツ以外すべての先進国を上回っている。

低成長の要因は「人口動態」にあるとみる。金融緩和で企業の成長をうながしても、こうした構造的な問題は解決できない。つまり、政府がインフレ期待を高めることに成功しても、流動性の罠から抜け出すことができても、それほど大きな結果は生まれないだろう。

■地域別の見解(2)欧州

潜在的に長引く可能性のある不況を前に、欧州域内では緊縮金融政策が強いられており、政治的な不満も充満。流動性の罠に対してEU(欧州連合)中核国は的確な対応を見せるも、周辺国は引き続き緩和的な政策を続けるなどニュアンスの違いが。とはいえ、中核国との構造的な障壁があまりに高い周辺国においては、利下げが成長促進の引き金になるとも思えない。欧州は今年もマイナスあるいは低成長が続くとみる。

一方で、国の成長力を測る「財政赤字」という観点から見れば、わずかながら明るい兆しも。欧州は2012年に▲0.22%の成長にとどまったものの、財政赤字も▲3.30%と低水準。一方、米国は1.98%成長を果たすも、▲8.68%もの財政赤字を抱えている。GDPに占める公的債務の比率は日米で上昇傾向にあるが、欧州では増加幅が小さくなっている。これは他国よりも厳しい財政政策を続けてきたことの証左。

■地域別の見解(3)米国

かつてFRB議長だったバーナンキ氏は日本の事例を詳しく学び、「流動性の罠には陥らない」と固い決意を持っていた。オープンマーケットで長期資産を積極的に買い付けることに注力して金融の引き締めを図るなど、主要国の中でもっとも積極的な金融緩和を行っている。日本や欧州とは違い、多くの移民を抱える米国は老齢化の問題も抱えていない。しかしながら、今年は財政の削減もみられることから、われわれは米ドルを引き続きショートとする。

グローバル経済の見通しと有望な投資機会

ティム・ヘイウッド氏

ティム・ヘイウッド氏

GAM ロンドン Fixed Income
インベストメント・ディレクター ティム・ヘイウッド氏

GAMの債券運用では、伝統的なロングオンリーと、現代的な絶対収益型の手法をほぼ半々で活用している。しかしながら、近年は利回りのトレンドが変わり、とりわけ伝統的な手法について、低リスクといわれていた債券運用の特徴を疑問視する向きも。

今後も引き続き債券市場については弱気が想定される。1990年以降のリターンを見ても、債券の利回りは着実に低下。既に過去最低水準にあるいま、従来のペースでの価格上昇は難しいことは明らか。

■コア債券市場は過大評価されている

同僚のエコノミストやストラテジストたちは5年物の国債利回りを予想するためのドライバーを検証している。過去の経済統計などを加味して、「経済活動が高い場合には債券利回りも高い」といったストーリーが、もっとも筋が通っていると考えられている。

しかしながら過去3-4年間、この2つは連動していない。とりわけ直近1年半では、経済活動がある程度改善しているにもかかわらず、国債利回りはどんどん下がり続けている。

果たしてこのモデルは破たんしてしまったのだろうか? あるいは「利回りに歩調を合わせるカタチで経済活動が破たんする」と仮定するにも無理がある。残る選択肢はただ1つ。モデルは破綻していないし、経済活動の崩壊もない。「国債利回りはいずれ上昇しなければならない」というシナリオが導き出される。ドイツ30年物の国債利回りがこれまで17年間の平均値へ上昇し、経済活動がこれに追随した場合には30%の損失が見込まれ、これはドイツにとっての大きな問題点。

一方で、米国は経済活動が低下していないものの、2つの線の差が極めて大きいことから、債券ポートフォリオに損失が生じる可能性は、ドイツをしのぐと考える。

5年国債利回り 対 成長指標

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