アバディーン投信投資顧問 新春セミナー グローバル投資環境見通し  良質な銘柄の選別投資を

概 況


アバディーン投信投資顧問はこのほど、「グローバル投資環境の見通し」と題する新春セミナーを開催した。第1部のパネルディスカッションでは、北米株式運用チーム責任者のポール・アトキンソン氏が「北米株式」、英国・欧州株式運用チーム責任者のジェレミー・ホイットリー氏が「欧州株式」、アジア債券運用チーム責任者のアンソニー・マイケル氏が「アジア債券」について、それぞれ見通しを語った。第2部の「アバディーンの日本株式運用戦略」では取締役運用部長の郭征岳(クオック チャーン イェ)氏が「世界的・長期的視点からの日本株式運用戦略」について組み入れ対象である個別銘柄を交えて説明した。それぞれの主な発言内容は以下の通り。

<北米株式>

ポール・アトキンソン氏

ポール・アトキンソン氏

「米国経済の質向上が進む」
ポール・アトキンソン氏

リーマン・ショック後の米国の経済成長は大きく鈍化した。あまりにも債務問題が大きかったためだ。過去と比較してもGDP(国内総生産)の回復ペースは鈍いが、一方で、企業の収益性の水準は高く、持続可能だと信じている。過去5年間、家計、企業とも着実に債務を減らし、企業の積み上げたキャッシュは2兆ドルとも言われる。住宅ローン金利が記録的な低水準となったことなどから、住宅市場も回復傾向を示している。もちろん公的債務は、あまりいい状態にはなく、失業率が依然、高水準にある点などに不確実性を残すが、米国経済の質は、かつてより向上している。持続可能なビジネスモデルを持ち、キャッシュを投資や増配などに有効活用している米国企業が投資対象になる。

<欧州株式>

ジェレミー・ホイットリー氏

ジェレミー・ホイットリー氏

「グローバル企業を選別投資」
ジェレミー・ホイットリー氏

欧州経済はこれまで、危機に際して(1)首脳会合などを開催し何らかの改善策を発表して株価が上昇、(2)数カ月後、それらの効果がなかったことが判明して再び株安――を繰り返してきた。これまでにも「EFSF」「ESM」「LTRO」「OMT」など、対策に関する数多くの略語が登場した。欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁の「どんなことをしてでもユーロを守る」発言などで当面、危機は沈静化しているが、これだけの負債を抱えている中では、成長も抑制的になる。ドイツなど中核国が低成長にとどまり、周縁国はマイナスが続く。もっとも、欧州主要企業はグローバル化が進み、海外売上比率が高まっている。例えば、ロレアルやネスレなどは、5年、10年の単位で同社を必要とする顧客層の基盤が厚い。欧州は今年も、政治・経済両面で“国難”とも言える状態が続きそうだが、早くからグローバル展開してきた企業で、しっかりキャッシュを生み出し、株主に還元してきた企業のトータルリターンは魅力的。競争力のある企業を見極めていきたい。

<アジア債券>

アンソニー・マイケル氏

アンソニー・マイケル氏

「先進国市場をアウトパフォーム」
アンソニー・マイケル氏

昨年の債券市場は素晴らしいリターンを生んだが、今年は多くを望めないだろう。投資家はグローバルな視点が必要だ。そうでなければ高いパフォーマンスを得るのは難しい。円安進展で日本の投資家の外債投資のリターンは高まったが、国債利回りは世界的に低下。主要各国で量的緩和が続いているためだ。こうした環境下で、ある程度の実質利回りが期待できるとしたら、エマージング市場だろう。例えば、昨年12月12日現在の10年国債利回りは、米国1.7%、英国1.8%、ドイツ1.3%などに対し、ブラジル9.2%、南アフリカ6.9%などとなっている。

エマージング市場において、ソブリン・クレジットの質改善も見逃せない。ちなみに、アジアの中央銀行は自国通貨の割高是正に向けた為替介入を実施しており、その結果、例えば中国は3兆ドルの外国為替を保有している。インドネシアの格付けは、既に投資適格級となり、フィリピンも今年か来年に投資適格級になるとみられるなど、国債のクオリティー向上が進んでいる。こうしたことも背景に、アジアなどの新興国債券には、先進国債券市場に対するアウトパフォームが期待さててこよう。

<日本株式運用戦略>

郭征岳氏

郭征岳氏

「ボトムアップでの長期投資は不変」
郭征岳(クオック チャーン イェ)氏

日本株式の運用については、よりミクロな視点で、ファンダメンタルズに基づいた良質な銘柄を発掘して長期投資するのがわれわれの「哲学」だ。(1)事業内容、財務、ガバナンスなどの点から企業の“質”を見極め(2)バリュエーションが適切である銘柄に投資し③しっかりしたモニタリングを続けていくことが基本。日本企業の中には、世界的にも良質な銘柄が存在する。

アバディーングループの株式運用体制において、日本担当は5人だが、例えば、シンガポールのスタッフがトヨタの経営陣に現地で取材したり、インドネシアの事業展開を調べたりなど、グループ全体で対応できることは当社の強みと言える。

これまで東京市場は20年に及ぶ低迷が続いているが、われわれがボトムアップで発掘してポートフォリオに組み入れてきた銘柄で、例えば大東建託(1878)は、ファンダメンタルズの改善が進み、配当や自社株買いによるキャッシュの還元にも積極的なことから、市場に対するアウトパフォームを続けている。ほかの組み入れ銘柄で、シスメックス(6869)も、血液検査用品などの世界ナンバーワンで、安定成長を続ける優良企業だ。次は、ピジョン(7956)。国内ばかりではなく海外、特に10年前から進出している中国での事業展開に強みを持つ。中国には1500万人の乳幼児がいる。中国で成功し、優秀な実績を出している数少ない企業とも言えるだろう。

ファンダメンタルズ、ビジネスモデル、そして、それらが持続可能かといった基準に適した企業は、やはり株価動向にも反映されるもの。ファンダメンタルズ面は数字で判断するだけではなく、実際に、随時、工場を回り、経営陣とも話している。ベンチマークとしての株価指数の動向も意識はするが、「長期的なバイ&ホールド(買い持ち)」という運用スタンスのため、途中、どうしてもアンダーパフォームとなる時期が生じる。しかし、それが1、2年といった短期間であれば、(他社のように)「責任を問われてクビ」ということはない。長期運用重視の当社の企業文化でもある。

ここ2カ月、東京市場は政策への期待感から大きく値上がりした。インフレ脱却期待から不動産株などが好反応を示し、円安進展で、為替感応度の高い輸出関連などが大きく買われた。当社のポートフォリオ構成銘柄も、為替の影響度合いなどのチェックは行っているが、最近の変化に伴って、特に銘柄入れ替えをしたかと言えば、そうではない。経済環境として、確かにインフレ要素は生じつつあるが、それらによって企業体質が大きく変わるものでもない。質が高く、安心して投資でき、バリューの妥当な銘柄を選別投資するという点で、運用方針に変更はない。

当社のモデルポートフォリオ(2つの表参照)を業種別で見ると、「消費財」は、ベンチマークの22.2%に対して33.8%。ヘルスケアも、6.0%に対し12.9%と、それぞれウエートが大きい。逆に、金融などの比重が小さくなっている。これは、別に「日本経済の先行き」を読むなど、マクロ的なテーマを設定して構成比率を決めているわけではなく、あくまでもボトムアップで銘柄選定した結果として、このような比率になったものだ。もちろん、経営環境の厳しい業種の中で頑張っている企業も組み入れられている。

相対的にウエートの大きい業種で、「ヘルスケア」(薬品など)であれば、新薬パイプラインが充実して、キャッシュを還元しているほか、いわゆる“特許の崖”をしっかり乗り越えてきた企業が組み入れ対象となっている。「消費財」も、ホンダ、トヨタや自動車部品メーカーのほか、ユニ・チャーム、ピジョン、アシックス、JTなどさまざまな銘柄が入っている。

モデルポートフォリオ:日本株式
順位 上位保有10銘柄 コード 比率 ベンチマーク ポートフォリオ保有年数
1 キヤノン 7751 6.5% 1.8% △4.7 10年以上
2 信越化学工業 4063 6.3% 0.8% △5.5 5年
3 ファナック 6954 5.6% 1.4% △4.2 5年
4 キーエンス 6861 4.5% 0.5% △4.0 5年
5 ホンダ 7267 4.5% 2.2% △2.3 10年以上
6 ナブテスコ 6287 4.1% 0.1% △4.0 5年
7 中外製薬 6268 3.8% 0.2% △3.6 3年
8 トヨタ自動車 7203 3.5% 4.4% ▲0.9 10年以上
9 JT 2914 3.5% 1.0% △2.5 1年
10 アステラス製薬 4503 3.4% 0.8% △2.6 10年以上
10銘柄合計 45.7% 13.2%
モデルポートフォリオ:日本小型株式
順位 上位保有10銘柄 コード 比率 ベンチマーク ポートフォリオ保有年数
1 ピジョン 7956 5.5% 0.3% △5.2 2年
2 ナブテスコ 6268 5.2% 0.0% △5.2 5年
3 武蔵精密工業 7220 4.4% 0.1% △4.3 7年
4 キヤノン電子 7739 4.2% 0.1% △4.1 1年
5 アシックス 7936 4.0% 0.0% △4.0 4年
6 朝日インテック 7747 3.9% 0.1% △3.8 2年
7 関西ペイント 4613 3.8% 0.0% △3.8 1年
8 リゾートトラスト 4681 3.7% 0.2% △3.5 7年
9 FCC 7296 3.7% 0.2% △3.5 10年以上
10 マンダム 4917 3.5% 0.2% △3.3 9年
10銘柄合計 41.9% 1.2%
戻る