HSBC 新春セミナー  2013年のマクロ経済・市場の見通しと投資戦略

概 況


「超低金利」継続でリターン低迷も、新興国株式に長期投資の妙味あり

フィリップ・プール氏

フィリップ・プール氏

HSBCグローバル・アセット・マネジメント
マクロ・投資戦略グローバル責任者 フィリップ・プール氏

HSBCは1月16日、毎年恒例の「新春セミナー」を開催。2013年の年頭に当たり、「厳しい運用環境は今後も継続するのか」「グローバル経済が克服すべき課題は何か」「投資家はいま何に投資すべきか」など、投資のヒントが語られた。(※本文中の数値など内容はセミナー開催時点のもの)

今後2年間、あるいはそれ以上の期間にわたって、先進国では「超低金利」が継続するだろう。FRB(米連邦準備制度理事会)はFFレートを2015年中盤まで超低水準に据え置くことを表明。さらに、雇用市場への好影響が確認できるまで、不動産担保証券(MBS)や国債の買い入れを通じて市場への流動性供給を継続することを表明している。そのほかの先進国の中央銀行も政策金利を歴史的な低水準に据え置いたままで、流動性の供給は継続する見込み。

今回は、このような低リターン環境下において有望だと思われる投資テーマを探りたい。

■長期保有では債券<株式に軍配

今後、実質リターンが見込まれるアセットクラスは? まずは資産クラス別の長期リターンを見てみよう。過去10年間では、先進国の資産は債券が株式をアウトパフォームするものの、20年、50年、75年と超長期で見ると、株式が債券を大きく上回る。米国債のトータルリターン(米ドルベース、以下同)は10年で年率6.1%、20年6.0%、50年3.3%、75年1.9%であるのに対し、米国株式はそれぞれ1.8%、5.6%、5.2%、6.2%となっている。

実質リターンについて、われわれが想定する今後10年ほどのベストケースを見ると、キャッシュは、多くの国はデフレではないためマイナスが続き、米国債の実質利回りはゼロに。プライベートエクイティのリターンが最も高いのだが、流動性が低く、そういった極端なアセットクラスを除けば、新興国を中心とした株式、米国不動産、欧州や米国のハイイールド債券などで魅力的なリターンが期待される。

バリュエーション面から見ても、株式の投資妙味が高く、主要国の国債は割高。先進国債券は利回りが極めて低いために価格上昇余地は小さく、ダウンサイドリスクは極めて大きい。昨今の各国の超低金利政策で国債利回りが低下したことに加えて、企業の収益力が高水準を維持しているため、多くの市場で株式配当利回りと国債利回りの格差が広がっている。

■株式/新興国の一般消費財に注目

新興国のセクター別バリュエーション(PBR/ROEベース) 以上の理由から、われわれは株式に着目している。PBR(株価純資産倍率)、ROE(株主資本利益率)をベースにセクター別のバリュエーションを見ると、先進国では生活必需品や一般消費財、ヘルスケアなどのディフェンシブセクターが相対的に割高で、金融や公共、素材などの景気循環セクターが割安といった傾向が見られる。

新興国にも同様の傾向が見られるが、こちらは一般消費財のPBRが2.5倍以下と割安。国別では、中国、ロシア、インドが割安だ。

新興国通貨の大半は先進国通貨に対して割安で、この事実はとりわけ、最近まで円高に悩まされていた日本の投資家にとって大きな意味を持つ。購買力平価に基づく理論為替レートから通貨の割安度を見ると、インドが63%と最も割安で、次いで台湾47%、フィリピン38%、マレーシア36%、南アフリカ34%などとなっており、これらは長期的な価値上昇が見込まれる。

■債券にまだ投資価値はあるか?

先進国の国債は割高で、リスクに見合ったリターンは期待しにくい。投資家が常に課題とするのが、元本を確保しつつリターンを得ることだが、超低金利下では想定したリターンを得ることは難しく、中には、利回り向上のために債券ポートフォリオのデュレーションを長期化している投資家や、あるいは、短期債を中心に運用することで将来的に利回りが大きく上昇することによるキャピタル・ロスを避ける投資家も。米国債の利回りは今後上昇していき、2.6―2.7%に近づいていくとみる。

新興国の米ドル建て国債についても、巨額の資金流入が起債額を吸収し、米国債とのスプレッドは縮小傾向に。しかしながら、依然として2007年の水準を上回っており、国の信用力改善が継続していること、スプレッドはさらに縮小余地が見込まれることから、投資妙味は大きいとみる。

先進国の投資適格、ハイイールドおよび新興国債券のスプレッドは縮小したが、依然、国債と比較して魅力的な水準にある。中でも、高格付け欧州ハイイールド債と、米国ハイイールド債を選好する。

何より企業セクターには良いニュースがある。米国、欧州において銀行の貸出姿勢は安定しており、企業のデフォルトは低水準。ハイイールド債券発行体のEBITDAは引き続きプラスの伸びを維持しており、このような局面で企業が破たんするのは極めてまれ。一方で、低格付けハイイールド債はシクリカル性が強い上、資金調達に疑問が持たれるためアンダーウエートとする。

■為替相場の見通し

購買力平価に基づく通貨の割安/割高度(対米ドル、%) まずはドル円について。年末にかけてさらに円安が進むと考える。新政権が目指すのは、日本人の「心理」を変えること。ショック療法が必要で、そのためにも円安を達成しなければならない。

次に、日本人になじみの深い豪ドルについて。コモディティの代替としての価値、あるいは、ファンダメンタルズなどを考慮しても、かなり割高。しかしながら、これは日本円にも言えることだが、現在は景気サイクルが改善の最中にあり、これが為替を下支えするとみる。豪ドルにとってのリスクは中国の成長減速とコモディティ価格の下落。しかしながら、オーストラリアはいまだに格付けAAAを維持しており、これは、長期にわたって持続的な成長を続けてきたことに対する信頼感でもあることから、当面、豪ドルの魅力は揺るがないだろう。

戻る