「高分配」「低リスク」2極化広がる投信ラインアップ

概 況


投信業界動向と最新の見通し
ドイチェ・アセット・マネジメント ファイナンシャル・ストラテジスト 藤原延介氏

ドイチェ・アセット・マネジメント ファイナンシャル・ストラテジスト 藤原延介氏

藤原延介氏

依然として個人投資家からの支持が厚い毎月分配型ファンド。高い分配金利回りを目指す通貨選択型の人気が継続する一方で、昨今の不安定な相場を経験した投資家の中には低リスク商品への関心を高める向きも。ドイチェ・アセット・マネジメントは1月11日に「投信業界動向」に関する報道関係者向け勉強会を開催。ファイナンシャル・ストラテジストの藤原延介氏が語った投信業界の足元の動向と今後の見通しを抜粋して紹介する。

投信資金動向/分配金引き下げで流出加速

公募投信全体の資金流出入状況は、2010年は6兆円の純流入、11年は夏以降の相場環境悪化の影響もあり3兆円の純流入にとどまったが、12年はついに1000億円台の純流入と大きく落ち込んだ。ただし12年10月以降は相場が改善。基準価額が1万円を超えるファンドを中心に分配金を引き上げるものが出始めている。

人気ファンドの分配金引き下げ相次ぐ

2012年の失速の要因は、依然として個人投資家からの支持が厚い、毎月分配型ファンドの分配金引き下げにあるようだ。

公募の追加型株式投信のうち、毎月分配型ファンドは約1200本。欧州危機の深刻化を受けて11年夏ごろから分配金を引き下げるファンドが目立ち始め、12年春には危機再燃とともに再び分配金を引き下げるファンドが増加。7月には残高2000億円を超えるようないわゆる売れ筋ファンドでも引き下げが見られるようになったのだが、これが投信からの資金流出を加速させたとみる。

毎月分配型ファンドの分配金動向分配金を引き下げたファンドは、とりわけ翌日から1週間ほどの間に大幅な解約が続く傾向が見られる。毎月分配型ファンドに限って見ると、純資産残高の上位30本中14本が昨年7月以降に分配金を引き下げており、うち7本が当月あるいは翌月の設定額が流入超から流出超に転じている。

中には大きな流出が見られない、あるいは、数週間経っても流出拡大が止まらないファンドもあるが、これは分配金の引き下げ幅の大きさだけでなく、直近では豪ドル関連ファンドのように、為替の上昇で基準価額が値上がりしたため利益確定するといった要因も。引き下げ後の利回り水準も重要で、例えばリート・ファンドの場合、引き下げ後もなお分配金利回り20%ほどを維持したため、販売の回復も早い。

「通貨選択型」人気の一方で、低リスク望む声も

09年に入って残高が急拡大し、一時は9兆円に達した通貨選択型ファンド。昨年も人気は継続し、12年の資金流入額上位30本のうち半分程度がこうした商品に該当する。株や債券など本来の投資先に為替取引を付加することで金利差分の上乗せを狙う商品で、上乗せ分は分配金に充てられるケースが多く、高い分配金につながっている。

その一方で「貯蓄から投資」を本格化させるべく、リスクを抑えた商品に目を向ける動きも。銀行を中心に5%程度未満の分配金利回りを安定的に提供することを目指した「国内債券ファンド」や「ヘッジ付き外債ファンド」を取り扱う販売会社が増えている。ちなみにヘッジ付き外債ファンドは欧州危機後も資金流入を続ける数少ない商品で、12年1月に純資産残高が1兆円を突破し、11月には2兆6000億円ほどにまで膨れ上がっている。

「高利回り志向」は揺るがず

投信を選別する上で「利回りか、安定か」という議論は既にあり、以前は9対1ほどの割合だったものが、12年は後者の安定ニーズを求める声が高まり、資金流入における両者の割合が半々に近いところまで変化したと感じる。

とはいえ、個人投資家の「高利回り志向」は揺るがない。12年の資金流入額ランキングを見ると、上位30本中半分程度を通貨選択型ファンドが占めており、分配金利回りは20%程度となっているものも少なくない。一方、低リスクを目指す国内債券またはヘッジ外債ファンドは6本あり、こちらの分配金利回りは5%程度のものが大半だ。

ちなみに、昨年12月にはあれだけ円安が進んだにもかかわらず、ヘッジ付き外債ファンドは3000億円以上の資金流入超となった。円建てで資産価値が上昇する円安局面で同ファンドに投資することは躊躇(ちゅうちょ)されると思われるのだが、昨今の個人投資家は、投信を利用する際には為替などの相場環境にさほど影響されず、例えば「これは分配金をもらうための投資」といった具合に目的をいったん決めると、これをとことん貫くといった姿勢がうかがえる。

2013年の投信業界見通し

(1)通貨選択型ファンド/新規設定の減少と既存シリーズの活用

通貨選択型ファンドについては11年夏に説明義務が強化されるなど、販売体制を見直す流れが生じたことから、新規設定は減少傾向にある。

その一方で“既存ファンドを大切に育てる”といった動きが広まりそうだ。通貨選択型ファンドは信託期間を5年とするケースが多く、そろそろ信託期間の終了を迎えるものが見え始めている。一部ファンドでは既に信託期間を延長する動きも出てきている。ちなみに通貨選択型ファンドは昨年12月末時点で101シリーズ・585本あり、残高は9兆9410億円。昨年後半からの円安伸長に伴う相場環境好転によって、残高は過去最高水準に膨れ上がっている。

通貨コース別に見ると、12年12月末時点ではブラジルレアルコースの残高が4兆4616億円と最大で、通貨選択型ファンド全体に占める割合は45%にも達する。次いで豪ドルコース1兆5732億円、日本円コース1兆5347億円となっており、この3通貨の人気は今後も続くとみる。足元では投資先を1つに絞らず、相場環境を見ながら機動的に入れ替える仕組みのファンドも登場。昨今の不安定な相場を経験した投資家のニーズに十分応え得るものであり、市場拡大の余地は大きいとみる。

(2)カバードコール戦略を活用したファンドの市場拡大

カバードコール戦略ファンドはヘッジ外債付きファンドとともに12年の売れ筋ファンドの1つ。現資産の値上がり益が限定される代わりに、オプション・プレミアム(上乗せ金利に近い性格)を定期的に受け取ることができる「カバードコール」と呼ばれる戦略を用いたファンドで、今後も拡大する可能性が高いとみる。

11年夏ごろから大手証券会社が積極的に手掛けはじめ、12年末には残高が1.5兆円にまで拡大。大手証券会社を中心に急速に残高を増やしている。一方で、銀行は取り扱いに慎重な姿勢を見せているものの、「リスク低減」という商品特性の認知が進むにつれて、今後状況が変わる可能性も。

(3)既存ファンドの分配金の変動が大きくなる可能性

先述したように昨夏以降、分配金を引き下げるファンドが増えた一方で、相場好転に伴って昨年末から基準価額が上昇していることから、分配金を引き上げるファンドも出てきている。こうして「運用状況によって分配金が変動する」という事実を投資家が再確認することは、投資信託において正しい姿といえる。

(4)目標払出し型の商品に拡大の可能性

一方で(3)の動きを嫌う投資家も存在するため、分配金額をあらかじめ決定したファンドを好感する動きも起こりそう。しかしながら、足元では20%といった高水準の分配金を継続して出しているファンドも多数あることから、このタイプが売れ筋になるまでには一定の時間を要すると思われる。

(5)投資対象資産の利回りが高い商品に拡大の可能性

欧州やアジア、新興国のハイ・イールド社債など、投資対象資産そのものの利回りが高い商品に注目が集まる。

(6)ヘッジ外債ファンド/引き続き市場拡大の余地

(1)から(5)までは高利回り追求の動き。これに対して、ヘッジ付き外債ファンドのような低リスク商品へのニーズも引き続き高まる。

(7)日本版ISA関連ファンドの準備がスタート

預金代替資産に育てるべく、あらかじめ信託期間を限定した単位型やターゲットマチュリティ型が拡充される可能性も。

戻る