新興国経済・投資 2013年展望 リスク資産回帰が本格化

概 況


HSBC投信 代表取締役社長 松田宇充氏

HSBC投信 代表取締役社長 松田宇充氏

出遅れ気味の中国、ロシアに投資妙味あり
HSBC投信 代表取締役社長 松田宇充氏

2012年は欧米など先進国経済の不透明感がぬぐえず、日本では債券を投資対象としたファンドが多数設定されるなど、インカムゲインを指向した債券投資がにぎわった。対して2013年は「リスク資産の価値が見直され、株式投資について強気になるべき年」と語るのが、HSBC投信代表取締役社長の松田宇充(まつだ・しょうへい)氏だ。同社は既に2011年11月、新興国株式全般について投資戦略を強気に転換している。松田氏に新興国投資における2013年の相場展望と投資戦略を聞いた。

2013年の投資戦略

昨今、新興国の株式がスポットライトから遠ざかっている。マーケットには「リスク資産を回避せよ」といった風潮が見られたが、事実は指数が示す通り。中国など新興国全般の株価指数は年初から2ケタ上昇を果たしている。HSBCでは2011年11月、新興国株式全般についてニュートラルからオーバーウエートへと戦略を転換しており、いま振り返ると、まさにここがボトムのタイミングだった。

こうして新興国経済の底堅さが確認された今だからこそ、2013年は株式を買いにいくべき。これまで多くの投資家の目は債券に向いていたが、金利が歴史的低水準にある先進国の債券は金利上昇の可能性をはらんでおり、一方で新興国の債券は堅調ではあるが厚みがなく、今は活発な機関投資家の売買もそう長くは続かないだろう。

円安で本来価値を見直し
ちょうど1年前のインタビューで私は、新興国経済の2012年の見通しを『4-6月には世界経済の安定性が見えてきて、年後半には大きなリターンが期待できるだろう』と解説した。しかし今は、これが遅れて本格上昇が2013年にズレ込んできたという感覚だ。確かに新興国市場の回復は遅れたが、同時に、欧米の問題解決も遅れた分だけ世界経済の透明度が上がったという利点もあり、現在、投資家は大いにリスクをとりやすい環境にある。

日本の投資家にとっては円安進行も新興国株投資の追い風に。これまで円が身分不相応の価値で高止まりしていたため、外貨建て資産の価値を弱めていた。新興国の資産は米ドルベースで見ると好リターンが続いていたものの、これを日本の投資家は実感できずにいたのだが、本来の価値を見直す好機がようやく訪れた。

注目国(1)「中国」の出遅れA株に妙味

GDP(国内総生産)規模世界第2位の中国の景気浮揚が世界経済回復の大きなドライバーであることは衆目の一致するところ。そんな中国株の中でもわれわれはA株に注目している。2012年にはH株が円ベースで年間35%ほど上昇したのに対し、A株は20%程度にとどまっており、今年は調整が期待される。

実際、A株には“再騰”の兆しが感じられる。一時は2000を割り込んでいた上海総合指数が、2300近くに急回復を見せている。各種景気指標の好調も伝わっており、購買担当者指数は11月、13カ月ぶりに分岐点となる50を回復している。

HSBCでは中国は今年も8%台の成長を続けるとみており、となると現在の株価水準は割安。日本人は領土問題などを気にして投資の目を向けていないが、なるべく早く投資を開始すべきだろう。

中国国内ではとりわけ不動産に関する規制について今後の方向感がつかめないなど不透明感が嫌気され、資金が株式から流出気味。直近では個人投資家の資産が「金」に流れている。しかしながら、過去の例を見ても中国国内のバブル崩壊は往々にして繰り返されており、今後は金からA株などへの資産分散が起こるとみる。

注目国(2)出遅れ本命「ロシア」に注目

ロシアは2012年の年初から円ベースで20%ほど上昇しているが、これはわれわれが考える“実力”を下回る。そもそもロシアは資源供給国であり、世界経済が底入れして復調の兆しが見えた段階で初めて見直される、という性質を持つ。株価の動きにタイムラグがあり、ほかの新興国が3割、4割と上昇する中で2割ほどの上昇にとどまるロシアの投資妙味は高い。

注目国(3)「ブラジル」は為替動向を注視

ブラジルへの投資はタイミングさえ見極めれば面白い結果が得られそう。2012年は円ベースで年間10%超の上昇にとどまるも、これは為替の弱さが原因。政府が強引にレアル安に誘導しているため、現在は1米㌦=2.05レアルほどだが、今後は2.2-2.3レアルまで下げる可能性も。HSBCではブラジルの実態経済にかんがみて1米㌦=1.8-1.9レアルあたりが妥当水準とみている。一方、ボベスパ指数は6万3000に急回復してきているが依然割安、為替がさらに弱含むような場面があれば絶好の投資タイミングに。

注目国(4)人気の「インド」も目が離せない

若年層が厚く、労働・消費人口の増加とともに中間所得層の大幅な増加が確実視されているインドは、長期的な潜在成長余力が最も高い国の1つ。投資家からの人気も依然として高く、故に、いったん弾みがついた株価は外部要因をものともせず、一方通行に大きく動く傾向が見られる。2012年は世界経済が相対的に厳しい状況にあった中でも年間25%ほどのリターンを上げた。インド国内のファンドマネジャーも強気の姿勢を崩しておらず、引き続き注目しておきたい。

そのほか/「メキシコ」「トルコ」は引き続き注目!

2012年の年初からの比較でメキシコは円ベースで4割、トルコは7割も上昇。しかしながらトルコはPER10倍程度で、環境の改善を考えれば、なお割安だ。かなり調整が入ったため今年は昨年ほどの上昇は見られないかもしれないが、さらに上値を追う可能性は高い。

最近、米国経済の復調が聞かれるが、その恩恵を受けるのがメキシコだ。メキシコは今や世界最大の液晶ディスプレー製造拠点であり、これらは米国向けに輸出される。両国の経済規模を考えると米国の経済成長がメキシコで増幅されることも魅力。

アジアの存在感高まる
新興国の中でも最近、インドネシアやフィリピンなどアセアン諸国の注目度が高まっている。われわれは流動性の面から両国ともに株式市場をフォローしていないが、フィリピンの株価指数は年間3割超上昇していることなどからも、投資家のアジアへの関心の高さがうかがえる。
インドネシア債券については、当社は日本最大級のファンド「HSBCインドネシア債券オープン」(2012年12月25日時点の純資産総額211億円)を運用しており、こちらも引き続き良好とみる。今後は世界3大格付け会社の中で最後となる、S&Pによる投資適格級への引き上げが期待されるほか、現在の為替水準は購買力平価からみて3割程度割安。

先進国経済は1ケタ成長続く

先進国は今後も0-1%ほどの低成長が続くだろう。ただしこれは、例えば米国が「財政の崖」問題にしっかり対応するなど、新たなトラブルが発生しないことを大前提とした数字。順当にいっても日本の「失われた20年」に追随することは免れない。投資においては、こうして成長力が限られた先進国よりも新興国を見るべきだ。

中国の指導部交代など多くの新興国では主要イベントを終えて不透明要素が相当に低減していることからも、リスク資産が買われやすい環境にある。この先は細かいトピックで動くというより、値動きが買いを呼ぶといった雰囲気が醸し出されてくるだろう。欧米がさらなる危機に陥るシナリオも描きにくいが、それでも多少の紆余(うよ)曲折はあり、その都度リスクオン・オフといった局面が生じるだろう。リスクオフはむしろ押し目買いの好機とのスタンスで臨めば、今年1年間の投資成績は非常に満足いくものになるのでは。

※本文中のデータは取材日2012年12月21日時点のもの

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