2015年第1四半期(1-3月)の見通し JPモルガン・アセット・マネジメント

概 況


重見吉徳氏

重見吉徳氏

グローバル・マーケット・ストラテジスト
重見吉徳氏

JPモルガン・アセット・マネジメントは2月5日に報道関係者向けセミナーを開催した。世界はデフレに陥るのか、米国の景気拡大は続くのか、実質賃金の上昇は日本経済にとってプラスかなどの注目トピックと、2015年のグローバル経済および金融市場の見通しが語られた。

2015年 金融市場の見通し

とりわけ今年は「訳知り顔」は禁物だ。「分かること」「分からないこと」を素直に区別して投資に臨むべきだろう。

確かなことは「高ボラティリティ」継続

この先も日銀とECB(欧州中央銀行)による流動性拡大が続き、投機筋にさらなるリスクテイクを促す局面が続くだろう。そしてゼロ金利下の流動性の供給は実体経済には効かず、資産インフレを引き起こすことは歴史が証明している。例えば日本ではリーマン・ショック以降、日銀のバランスシートが164兆円拡大したが、名目GDP(国内総生産)は13兆円減少。一方で株式の時価総額は125兆円増加している。

米利上げ「初めて」多く、影響は不透明?

米国が利上げに転じることは誰もが想定済みではあるが、実は「初めて」も多く、その影響は「よく分からない」と言うべきかもしれない。そもそも、潜在成長率がこれほど低い状態での出口は経験がなく、最近の事例をなぞれば、QE(量的緩和)1、QE2を実施したものの「やっぱり出られない」という事態と同様のことが再発する可能性もある。いざ実行となった場合でも、米国経済は堅調であるにもかかわらず、ほかの市場参加者の反応を気にして利食いやポジション解消の動きが連鎖するかもしれない。

スイス中銀が見せた「政策の限界」

スイスの中央銀行は1月、過去3年間続けた為替ペッグ政策を突然停止した。中央銀行をもってしても市場の圧倒的な力に対応できなかったことを示したわけだが、「当局者の理性」も大きく影響したと考えられる。同様に、日銀についても「財政健全化のためには新規国債発行額を減らすべき」との理性から、国債買い入れの限界が意識され始めている。ECBは先月、月額600億ユーロにも及ぶ国債買い入れを表明したが、これらについても“スイスの二の舞い”が起こらないとの保証はどこにもない。

とはいえ、こうして政策の限界が広く意識されたとしても、以前のように「世界経済が危機だ!」と叫ばれるわけではなく、市場が「やはり無理」とあきらめて今まで通りの低成長・低インフレの世界が続くだけかもしれない。

実体経済の見通し 米国:「1人勝ち」続く

世界経済はこれまで通り米国経済にけん引されるだろう。米国はGDP成長率の5年移動平均線が10年移動平均線を上回ったばかり。過去の例を見ると、反転後5年程度は高成長が続いたことが確認される。

懸念された雇用環境も改善している。非農業部門雇用者数(直近12カ月移動平均)の前月差は24万6000人増と、2000年以来の高い伸びを示した。加えて、昨年後半からの原油安の影響がこれから鮮明化することも好材料。ガソリンの代わりに個人支出が向かったサービス業で雇用が増加することが期待されており、米国では雇用の3分の2をサービス業が占めることから、その効果は絶大とみる。

景気後退局面はまだ遠い。これまでそのタイミングを正しく言い当ててきたのが国債利回りのスプレッドであり、2年物と10年物とが反転すると2年以内に必ず景気後退が起こったのだが、現在のペースが続けば18年までは反転が起きない公算。

利上げは「緩やか」、長期金利上昇トレンドは期待薄

利上げ時期は6月か9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)との見方が多勢。その後は前回の半分のペース、FOMC2回に1回0.25%ずつとの非常に「ゆっくり」な利上げが続くとみる。賃金の伸びはまだ緩やかで、インフレ期待率は目に見えて低下が続いている。これにドル高が加わってしまうと、かつての日本のように企業業績が目減りする上に、シェール革命の恩恵で製造業にみられた国内回帰の動きが滞って中間層の雇用が鈍る可能性がある。さらに、ドル高は輸入物価を押し下げて国内賃金の下押し圧力となり、物価が下落。インフレ目標達成が遠のくとの懸念も。

ユーロ圏:デフレ本格化が視野に

CPI(消費者物価指数)は1月に前月比マイナス0.6%とデフレに片足を突っ込んだ状態にあるが、ゼロ金利下でのデフレ脱却は非常に困難だとみる。ECBは先ごろ巨額の国債買い入れを表明し、12年7月のピークを目指してバランスシートを拡大するとしたが、マイナス金利のため市中銀行がECBに国債を売却するインセンティブが存在しない。加えて日銀とは異なり、対象国債が複数あることも実行を難しくしている。

日本:景気回復鮮明

企業部門を中心に景気は回復基調にある。輸出数量や鉱工業生産は過去最高水準には達していないが、直近ボトムからの改善が鮮明だ。

日本企業ROEに倍増余地あり

日本企業の資本効率の悪さが指摘されている。ROE(自己資本利益率)は1990年代を境に平均値が20%程度から10%程度へ縮小しており(図1)、20%台とする欧米企業と大きな隔たりがある。しかしながら、ROEと同様に「資産から得るリターン」を図る尺度であるROA(総資産利益率)はおおむね4%程度を維持。このことから、ROEの低迷は景気循環や企業収益性によるものではないことが分かる。

ROEの低迷は負債が資本に代わったことが主な要因だ。90年代にはバブル崩壊など危機モード下で企業には「備え」が必要だったこと、そして、デフレ下で積極的に債務を減らしたことなどから、ROEの分母に相当する純資産は90年から直近までに2.7倍増加した(図2)。分子の利益が堅調に伸びている上に(図3)、近年はコーポレート・ガバナンス(企業統治)の強化が注目されて資本の縮小が期待されることから、今後はROEが欧米並みの水準に切り上がる可能性がある。(本紙2月27日付12面)

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