楽天証券「新春講演会2015」開催 日本そして世界の今を知り、これからの投資を考える

概 況


楽天証券は1月18日に「新春講演会2015」をパシフィコ横浜で開催。10回目となる今年は3,000人の定員を100人以上も上回る個人投資家がつめかけた。講演内容を抜粋して紹介する。

日本経済2015年展望/アベノミクス「飛翔」への正念場

慶應義塾大学グローバルセキュリティ研究所
所長兼教授 竹中平蔵氏

今年の干支はひつじ。童話ではおおかみに襲われるなど弱い生き物の象徴とされるが、「羊」に「羽」をつければ「翔」。飛躍の可能性を秘めた年でもある。かつてナポレオンが「強いリーダーに率いられた100匹のひつじは、100匹のおおかみにも勝る」と語ったように、安倍首相のリーダーシップが大いに問われる1年になるだろう。

日本経済は今大きな交差点に立っている。安倍首相の下で良い方向に向かってはいるが、これに反対する動きもあり政策が錯綜(さくそう)。交差点は交通事故が最も起こりやすい場所だ。無事に渡りきるよう国民全員が関心を持って見守るべき。

■重点政策「地方創世」が意味すること

混同しがちだが「全体」と「全員」は違う。GDP(国内総生産)の成長は「全体」が増えることを意味するが、「全員」が良くなるという保証はない。アベノミクスは「全体」を底上げする政策であり、加えて「全員」を良くするために地方創生を掲げた。まずは「全体」が改善しない限り、「全員」が幸せになることはあり得ない。

日本株投資戦略/日経平均は2万円へ

楽天証券経済研究所
チーフ・ストラテジスト 窪田真之氏

15年3月期の企業業績は3%増益の見込みだが、当社では9%を予想。来期は11%と拡大を見込む。これにけん引されて日経平均は15年末に2万円へ達するとみるが、米利上げなどリスク要因が山積みのため、急騰急落を何度も繰り返すことになりそうだ。

中で、これまで放置されていた割安株が年後半には注目されそう。次のような銘柄群の投資妙味が高まると考える。

A.よく知られた円安メリット株
トヨタ(7203)、日本精工(6471)、三菱電(6503)、ブリヂストン(5108)

B.そのほかいろいろ円安メリット株
JFEHD(5411)、郵船(9101)、富士フイルム(4901)、JR東日本(9020)

C.好配当利回り株
三菱商(8058)、武田(4502)、NTT(9432)、三井住友(8316)

D.保有不動産の含み益からみて割安な銘柄(都心の不動産価格上昇が始まれば注目されると考える)
三井倉HD(9302)、京阪神BL(8818)、飯野海(9119)、日通(9062)

ETFから見る世界の投資家動向

ブラックロックジャパン
iシェアーズ事業部 ストラテジスト 渡邊雅史氏

現在、世界には約5,000本のETF(上場投資信託)があり、残高は326兆円。投資のいち手段として広く投資家に活用されており、最近では利回りを求める投資家が多く、債券を投資対象とするETFへの資金流入が続いている。あるいは「ある程度の割安感」が認められた資産については即座に買われるといった傾向も確認される。

■「ハイイールド債券」にフォーカス

原油安でエネルギーセクターへの懸念が広がり、関連企業の起債が多い米ハイイールド債券は価格下落・利回り上昇傾向にある。米ハイイールド債券1,000銘柄ほどに投資する「iシェアーズ米国ハイイールド債券ETF(iBoxxドル建てLHYC)」(1361)は昨年10月に価格が急落したが、「割安探し」に触発された投資家による資金が一気に流入した経緯がある。

■機関投資家の動向

日銀は昨年10月末に突如の追加金融緩和を発表したが、投資家の反応は国内外で大きく異なった。「iシェアーズ日経225ETF」(1329)は東証と米国に重複上場するが、東証上場ETFは日銀が購入するタイミングで金融機関の利食い売りが鮮明なのに対して、米国上場ETFは日銀と同方向に動くことから、海外投資家が政策に対して素直に期待感を示す姿勢がうかがえる。

勝ち残る企業の条件/新しいイノベーションの形

経済ジャーナリスト 財部誠一氏

世の中に「不変」は存在せず、近年はイノベーションの概念そのものが様変わりしている。新製品を発表して世界を驚がくさせた米アップルのようなたぐいではなく、産業の形そのものが劇的に変化することが想定される。例えばIoT(Internet of Things)。すべてのモノをインターネットにつないで情報を連携させる技術だが、これがサプライチェーン丸ごとで起こる可能性がある。1社だけが新製品を開発するのではなく、上流の素材メーカーから下流の小売業までがタッグを組んでイノベーションを起こす。あるいは、かつて小売業のファーストリテイリング(9983)やセブン&アイHD(3382)が製造業に乗り出したようなことが起こる可能性も。

絶えずコアバリューを見つめ直すことも重要だ。米GEは「ハードメーカーを卒業してソフトメーカーを目指す」と言い、これまで作った航空機のエンジンや医療機器に今後はセンサーを取り付けることで稼働状況を可視化。不具合を事前に予知したり最適な稼働環境を分析することでランニングコストを大幅に低減する仕組みの構築を目指すとしている。

ファンド勢の相場見通しと2015年の通貨戦略

ファンドマネージャー 石原順氏

原油を介した金融戦争が勃発。足元では世界の景気先行指標といわれる銅が売られ、仕手通貨といわれるスイスフランも急騰。不穏な空気が流れている。

ファンド筋も原油価格の見通しをつかみかねているようだ。そもそも原油価格は安いのか?1998年の1バレル=10ドルから、中国の高成長などを背景に2008年には150ドルまで上昇。しかし、これほどまでに高騰した商品は原油のほかに存在しない。直近100年間の平均価格は2ドル。1972年のオイルショック時の高値は5ドルにすぎない。こうして原油の値付けに株も為替も振り回されており、この混乱が続く限り金融市場も落ち着きは取り戻さない。

■原油安が引き起こす2つの危機

世界は米国一人勝ちの様相を呈しているが、ドルが上昇するほどドル建て債務を抱える新興国は追いつめられる。中で気掛かりなのがロシア。昨年末プーチン大統領は国民に「2年間の辛抱」を求めたが、世界随一の独裁者である彼自身が辛抱できるはずもなく、得意の軍事力を使ってウクライナに侵攻したり、デフォルトを発表するといった展開も想定される。

そんなロシアよりも懸念されるのがジャンク債市場のクラッシュだ。市場規模は2兆ドルと直近7年間で2倍に急拡大したが、近年はシェール分野の開発を手掛けるエネルギー関連企業の起債が全体の2割に上り、ジャンク債市場最大のセクターとなっている。

■ドル円見通し/円安継続もいったんこう着

ドル円の動く範囲はおおむね5年(60カ月)移動平均線の上下30%水準だが、足元では行き過ぎた感もあり、一段の円安は進みにくい状況に。ファンド筋の間では「8年サイクルで訪れる円安のボトムの年になるのでは」との声も聞かれる。

2015年米国経済・株式相場の見通し

ホリコ・キャピタル・マネジメント
CEO 堀古英司氏

米国の利上げ時期を市場は今年6月と予想するが、私は、低位にとどまるインフレ連動債利回りの水準などから15年中の可能性はないとみる。今年の投資対象には引き続き米国株を推したい。

米国株は依然、割安だ。国債利回りと比較して米国株の割高・割安を判断する「FEDモデル」を見ると、米10年国債利回りは低下が続いて足元では1.8%、S&P500益利回りは年初の株価下落でようやく6%台に上昇したが、その差は4%超と、これまでにない格差が生じている。両者は短期的なブレはあるものの、長期的にはおおむね同水準に収れんする傾向があり、この先は米国株価の水準訂正が期待される。

■原油安メリットは時間差で発生

マーケットには多くのリスクが存在し、直近で気掛かりなのが原油安。ただし米国経済への影響との観点から言えば恩恵も大きい。GDPの7割を占める個人消費にインパクトをもたらすことは間違いなく、とりわけ5月以降ドライブシーズンに突入すれば、その多大なプラス効果が時間差で株価にインパクトをもたらすことが期待される。確かにシェール開発の関連業者は突如の原油安・株価急落で大打撃を被ったが、一方で、シェール革命による経済貢献も始まったばかり。シェール革命が始まったのは10年ほど前だが、実際に産出量が増えたのはここ数年のこと。

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