「不易流行」のスタンス重視 ベアリング投信投資顧問 和田浩己新社長に聞く

概 況


和田浩己社長

和田浩己社長

■運用会社の特徴

当社の商品ラインアップにはデリバティブ(派生商品)を使ったものはない。原資産を買う、いわゆるロングオンリーの商品だ。コンサバティブ(保守的)な運用会社と言うことができよう。公募投信の世界を見てみると、数年前までブラジルレアル建てやトルコリラ建てなどの通貨選択型の商品が多数登場して人気を集めたが、当社には、お客さまにリスクの所在をきちんと説明できない商品に関しては、たとえ人気商品であっても提供すべきではないとの確固たる考え方がある。社長に就任してまだ1カ月半の私だが、この考え方は、私の信条とも合致するものだ。この基本線については、今後も続けていきたいと考えている。

■商品・運用戦略

当社の公募投信は、「ウインドミル」という愛称がついた「BAMワールド・ボンド&カレンシー・ファンド(毎月決算型)」が設定・運用を開始して以来16年を超えている。世界の投資適格の公社債を投資対象に通貨配分の変更を機動的に行い、為替変動リスクを管理する運用戦略のファンドで、これが長期な投資に向いている。あくまで過去のデータであり、将来を保証するものではないが、16年の運用期間の中で、どの期間から数えても5年間投資していただいた方は、投資した元本を下回らない。つまり5年以上持っていただいた方に損を出された方がいないという実績があって、今年1月からNISA(少額投資非課税制度)がスタートしたが、銀行預金しか興味を示さなかった方々にも非常に向いている戦略といえる。大手地方銀行や証券会社が販売の中心だが、「ウインドミル」としてなじんでいただいている。昨年は「BAMワールド・ボンド&カレンシー・ファンド(1年決算型)愛称ウインドミル1年」も投入しており、今後も幅広い投資家に提供していきたい。

もう一つは、さまざまな投信を持っている方にウインドミルを分散投資の一部として持っていただけると中期的な分散効果が表れるという結果が出ており、実際にそうした取り組みをされている販売会社もある。例えれば、非常に地味だが、栄養の要素として不可欠な、白いご飯のような炭水化物をやはり取り続けていかなければならない。脂っこいものだけを食べていると健康にはよくないから白いご飯をとって、バランスのある食事が必要なように、資産運用でもリスクとリターンのバランスを考えたポートフォリオ運用のお手伝いができればと考えている。投資信託では、このような2つの観点から取り組んでいる。

機関投資家や年金基金、金融機関の自家運用向け商品については、お客さまのニーズがあって力を入れているのが「グローバル・ターゲット・リターン戦略」。最近注目を集めているアンコンストレインド──制約をかけない債券運用の戦略だ。投資適格のソブリン──先進国とエマージングの健全な国で、信用格付けの相対的に高い国に投資をする戦略で、非常に安定した運用成果を収めており、大手年金基金や金融機関の自家運用、コンサルタントの方々から高い評価を得ている。当社の基本はロングオンリーだが、その中で配分を変えることでリスクを回避していこうというものだ。デリバティブ運用手法を取らない良い点は、お客さまにとって運用の内容が可視化できることで、非常に分かりやすくなる。安心していただける戦略として人気が高まっている。これは、個人投資家にとっては、ウインドミルとは違うタイプのお客さまのニーズがあるのではないかとみており、今後は個人向けにも投入を検討していきたい。機関投資家、個人投資家を問わず、今後、当社の商品の中心になっていくと期待している。

自社で設定していく商品に関しては経営資源をいくつかの中心的な戦略に集中していくことが必要と考えており、単に本数を増やしていけばよいとは思っていない。また、来年はサブアドバイザー・ビジネスの分野に本格的に取り組み、パートナーになっていただける日本の委託会社と関係を構築できればと考えている。TPOに合わせて自社設定の公募投信で直接販売会社とコンタクトするケースと、国内委託のお力を借りてパートナーと一緒にやっていくケースと、最終的には受益者さまにとってどちらがいいのかという観点から考えていきたい。経営的にも、効率的なリソースの配分ができて、さらに最終的にはお客さまのお役に立てる可能性が高いのはどちらかを判断して選択したい。

■ロングセラー投信に持ち味

当社の特徴として、一つのファンドを作ると長く提供し続けるというのがある。運用実績が、ウインドミルは16年、「アジア製造業ファンド」は18年を数える(ほかに「アジア製造業ファンド(3カ月決算型)」がある)。ともに外部評価機関から運用評価でも数々の賞を受賞している。単純に売れるから売る、売れないから売らないという姿勢ではなく、運用会社としての責務をきちんと果たせるかにあり、その意味では取り扱い本数は少ないが、歴史のある、年輪のあるファンドをそろえているということだ。「不易流行」ということであり、不易の部分は非常に強い。一方で、流行の中では、例えば、通貨選択型のファンドは、当社の基本的な考え方から取り扱うことは難しいが、取り入れられるものは取り入れて新旧のバランスを良くしていきたい。今後の商品戦略については、お客さまのニーズに従って投入するのが基本だ。しかもお客様にきちんと説明できるものを徐々に広げていきたい。

最近、販売会社が増えつつある「ベアリング欧州株ファンド」についても、長期にわたって高いパフォーマンスを上げている(「リッパー・ファンド・アワード・ジャパン・2014」株式型欧州株(評価期間5年)で最優秀賞を受賞)。日米の株式相場がかなり上昇してしまい、一方で、中国などエマージング株が現在の経済環境から資産クラスとしてそれほどパフォームしにくい中で、一定のマーケット規模があり、それなりのバリュエーションがあるとすれば、投資対象として、おそらくそう遠くない将来に欧州が見直される時期が必ず来るとみており、当社はそのポジションニングはしっかりしていきたい。非常に自信のある分野の一つだ。欧州株の良さを多くの人に分かっていただけるように努力していきたい。欧州は一つではない。ユーロ圏だけでなくイギリス、北欧、東欧もある。欧州はモザイクのようにさまざまな面がある。株式では、ユーロ圏でもユーロ圏の内需に依拠した銘柄や、ユーロ圏外の需要に依拠した国際銘柄も数多い。欧州にはさまざまな特徴があることや通貨ユーロを含めた市場環境などについて、販売会社の方に分かりやすくお伝えすることが重要な責務と考えている。

■今後への抱負

ベアリング・アセット・マネジメント・グループとしては250年の長きにわたる歴史を持っている。東京でも30年以上を経過しており、いわば老舗の運用会社といえるが、歴史があるというだけでなく、古いものの良さを生かした上で、新しいものを取り入れる柔軟性をベースに、お客さまのために分かりやすい商品を提供し続ける、これ以外にないと考えている。運用は、当社のフレームワークできちんとした安定したパフォーマンスを出している。例えば、ウインドミルで5年間投資すれば損をしないというものも大きな実績であり、そうした点をご理解していただきながら公募投信への参加者を増やしていきたい。現在の投資家がリスクを取り過ぎている感じがしているところに分散効果を提供していくことが一義的に私どもに与えられた命題ではないかと考えている。それをやりながら、先ほどの「流行」の部分で現在の新しいコンセプトでサービスの肉付けをしたい。

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