世界最大級カジノ・リゾート建設中 「観光大国」化で世界富裕層との距離縮む

概 況


イーストスプリング・インベストメンツ フィリピン現地視察報告(後編)
営業部 商品企画マネジャー 片山なみえ氏

イーストスプリング・インベストメンツ 営業部 商品企画マネジャー 片山なみえ氏

イーストスプリング・インベストメンツ
営業部商品企画マネジャー片山なみえ氏

世界の投資家たちが熱い視線を注ぐフィリピンだが、その成長ストーリーは“ほんの入口”に差し掛かったばかり。数年内に世界最大級のカジノ・リゾートのオープンを控えるものの、こうした巨大プロジェクトの効果は、現在の株価水準にはまだ織り込まれていない。前回に引き続き、イーストスプリング・インベストメンツ営業部の片山なみえ商品企画マネジャーにフィリピンの投資魅力を聞いた。

■フィリピンの投資魅力/後編

注目セクター(1)不動産
例えばフィリピン証券取引所。現在は首都マニラの金融の中心マカティ地区に位置するが、家賃高騰を受けて、ボニファシオという開発中のビジネス地区に移転予定。ここは数十年前までジャングルだった地であり、マニラではこうした休眠地や郊外の開発が盛んに行われている。

先述した「OFW」※1「BPO」※2「観光」も不動産に欠かせないトピックだ。OFWの送金は家族の飲食に使われるというイメージが強いかもしれないが、近年は不動産にも。フィリピンでは国外居住の就労者でも定期的な収入があれば自分名義のローンを組んで土地が購入できるよう制度面が整備されたため。また、BPO拡大によりオフィスビルの建設、あるいは、観光関連施設の建設が進んでいるが、これと同時進行で社員寮や住宅などの住居、商業施設なども多数建てられている。そこで当ファンドでは、今後最も住宅が必要とされている低所得から中間層向け住宅を手掛けるフィルインベストメント社、あるいは、外国人も購入可能なコンドミニアムなどを手掛けるアヤラ・ランド社などに注目している。

実はフィリピンではこれまでローンが普及しておらず、今後クレジット市場拡大が期待される点もポジティブ。フィリピンには37の銀行があり、総預資産6.6兆ペソ(約13兆円)に対して預貸率は67%にとどまる。2011年のローン残高対GDP(国内総生産)比率は31%、住宅ローンに限って見ればわずか2%。

注目セクター(2)小売
米国統治時代から米国式大型スーパーやモールの文化が発達。小売業界自体は成熟してているが、フィリピン国民の旺盛な消費需要にこたえるためにも、ビジネスとしての成長はこれからとみる。ちなみにフィリピンのスーパーは低・中・高所得者向けにセグメント化されているものの、いずれも超大型で品ぞろえ豊富。そのほか「フィリピンのマクドナルド」と呼ばれるジョリビー社など出店拡大中の外食企業にも注目している。

注目セクター(3)娯楽施設
マニラ湾岸で開発中の「エンターテイメント・シティ・マニラ」では現在、東京ディズニーランドの2倍強の広大な敷地に4件の大型カジノ・リゾートの建設が進んでいる(表参照)。つまり、2010年にシンガポール初のカジノを備えた大規模リゾート施設「マリーナ・ベイ・サンズ」が登場したときと同じ衝撃が、再び訪れようとしているのだ。シンガポールはその後、観光立国としての地位をさらに高めたことは、記憶に新しい。

そこで当ファンドではホテルやカジノなどのレジャーだけでなく、不動産や食品飲料などあらゆる消費関連ビジネスを持つコングロマリット、アライアンス・グローバル社に注目している。同社はカジノ産業で働くカジノディーラーの専門学校も経営するなど、競合他社にはない強みを多く持つ。

先日アライアンス・グローバル社の社長にインタビューしたところ、同社がフィリピン国内で経営権を持つリゾートワールド社はラスベガス、マカオ、シンガポールなどでも展開し、圧倒的な顧客数を有するため、マニラの新施設完成後には「優待付きの招待状を贈るなどして、優良顧客には4施設を代わる代わる楽しんでもらうつもり」とのこと。世界トップクラスのリゾートとしての認知は急速に進みそうだ。現在のアライアンス・グローバル社の株価もそうだが、フィリピン株式市場全体の水準もカジノが立ち上がった場合の収益はまだ反映されていない。カジノオープンがどのようにフィリピン市場に影響を及ぼすのか。フィリピン市場の今後にますます期待が高まる。

「エンターテイメント・シティ・マニラ」プロジェクト概要
プロジェクト名 ライセンス取得企業 主な施設 開業予定時期
ソレイユ・マニラ ブルームベリー・リゾーツ・アンド・ホテルズ(フィリピン) ●ホテル(5つ星):500室
●カジノ:ゲームテーブル300台、スロット1200台
●コンベンションセンター
●大舞踏室
●ウェルネスセンター
●レストランほか
2013年第1四半期
マニラ・ベイ・リゾーツ タイガー・リゾーツ・レジャー・アンド・エンターテインメント(日本) ●ホテル:1050室
●カジノ:ゲームテーブル500台、スロット3000台
●高級レストラン:20店以上
●高級ブティック:150店以上
●富裕層向けレジデンス
●噴水ショーほか
2014年上半期
ベルグランデ SMグループ(フィリピン) ●ホテル:828室
●カジノ:ゲームテーブル350台、スロット1900台
●シアターほか
2012年下半期
~13年上半期
リゾーツ・ワールド・マニラ・ベイショー トラベラーズ・インターナショナル・ホテル・グループ(フィリピンほか) ●ホテル:2800室
●カジノ:ゲームテーブル800台、スロット5400台
●グランドオペラハウスほか
2014年~15年

■「イーストスプリング・フィリピン株式オープン」について

──9月28日に運用開始した「フィリピン株式オープン」の概要を教えてほしい。
「主な投資対象はフィリピンの上場企業ならびにフィリピンで設立された企業や事業展開する企業の株式。個別銘柄を厳選して運用し、キャピタルゲインの獲得を狙う。外貨建て資産については原則、為替ヘッジは行わない。3、9月の年2回決算で、基本的に基準価額1万円を超えた部分に関しては積極的に分配金として払い出しを目指す」

「運用は当社グループのシンガポール拠点が行う。アジア全体を俯瞰(ふかん)した運用が特徴で、例えば、セクターアナリストは特定の国にとらわれず、アジア全域〈『MSCIアジア(除く日本)』の構成国〉の担当セクターを横断的にウオッチするなど、銘柄選択における知識の厚みには定評がある」

──フィリピン単一国の株を扱うファンドは珍しい。
「既存の類似ファンドは2本。しかし、当社はアジアの成長国に着目した『イーストスプリング・グローイング・アジア株式オープン』をファンド・オブ・ファンズ形式で2007年6月に設定以来、フィリピン株へ投資を行うルクセンブルク籍外国投資法人を主要な投資対象としており、フィリピン株に関していえば長い運用実績を持つ。今回、経済状況などをかんがみて同ファンド・オブ・ファンズからフィリピンをスピンアウトさせ、単一国ファンドとして立ち上げた」

フィリピン総合指数 株価と予想PERの推移

フィリピン総合指数 株価と予想PERの推移

──具体的な投資先は?
「フィリピン証券取引所には2012年10月末現在256銘柄が上場しており、うち代表的な30銘柄でフィリピン総合指数が構成されている。『イーストスプリング・フィリピン株式オープン』はファンド・オブ・ファンズ形式で運用を行い、原則として、『イーストスプリング・グローイング・アジア株式オープン』の投資先として既に運用中の『イーストスプリング・インベストメンツ―フィリピン・エクイティ・ファンド』への投資比率を高位に保つ。2012年10月末現在の組み入れ銘柄数は41。消費関連銘柄をオーバーウエートする以外にも、インデックスと比較すると、水道や電気などの公益、生活必需品、産業用素材のウエートが高いことと、インデックスには含まれない中小型株にも投資を行うといった特徴を持つ」

※1「OFW」……OverseasFilipinoWorkersの略で、海外で働くフィリピン人労働者のこと。彼らの送金額は2011年度で約1兆6000億円と、フィリピン名目GDPの約1割に当たる。
※2「BPO」……BusinessProcessOutsourcingの略。世界各国企業がコールセンターなどバックオフィス事業の移管を進めている。同国では今後5年間でGDPの15%をBPOで稼ぎ出すとの予測も。

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