14年度下期に向けたグローバルマクロ投資環境 JPモルガンAM 記者ブリーフィング

概 況


榊原可人氏

榊原可人氏

RDP運用本部 投資調査部エコノミスト
エグゼクティブ・ディレクター 榊原可人氏

予想外に低水準が続く米国長期金利と好調な米国株式市場との間に調整リスクはあるのか。大幅な資金流出後にいったん流入に転じた新興国、あるいは日本株市場の見通しなど、2014年度下期の内外経済・金融市場の注目ポイントを、JPモルガン・アセット・マネジメントの榊原可人氏が解説。8月25日に開催された記者ブリーフィングの内容を抜粋して紹介する。

グローバル投資戦略:金融政策の転換を視野に入れつつもリスクテイクを増やす局面

リスク資産については引き続き「ポジティブ」。ただし、昨年のように「目をつぶってでも買う」といった状況からは、その度合は少し低下している。分散を重視するなど、以前よりもやや保守的なポートフォリオを構築すべき局面にあるだろう。

「グレートローテーション」継続中

fig1リーマン・ショックを契機に起こった安全資産への資金流入が一転、一昨年よりリスク資産への回帰が鮮明に。現在もこれが継続している。

ところが安全資産の代表ともいえる債券についても資金流入が続いている。グレートローテーションといえば債券から株への資金シフトがイメージされるが、実は、現金から株または債券へといった流れが確認される。ただし高リターンで人気を呼んだハイ・イールド債券は資金流出に転じるなど一巡感も。

株式への資金フローを地域別に見ると、米国への比較的安定した流入を確認。一方で、日本、欧州、新興国について“ローテーション”している様子がうかがえる。足元では昨年の流出でポジションが軽くなった新興国への資金流入が続く。

米国債券:予想外に低下傾向が続く長期金利、どう解釈するか?

米国長期金利は年初からさらに低下。しかしながら7月以降は、それまで長期金利と同様に低調だったドル指数だけが急激に切り返すなど、米国市場には変化の兆しも見られる。

そもそもFRB(米連邦準備制度理事会)が来年にも利上げ開始との見方が多勢を占める中、なぜ債券が買われ続けているのか? 要因は「地政学リスク回避のため」など多々浮かぶが、なにより「FRBの買い支え」によるところが大きいと考える。量的緩和を縮小しているとはいえ、4月に300億ドル、5月も250億ドル購入。こうして流通量が減少して変動性が抑えられている債券市場だが、いったん金利見通しに修正が生じれば状況が変わってくる可能性も。

fig2米国株:「弱気」は適切ではない

最高値近辺にあるが今後も安定推移が期待される。企業は潤沢な資金を使う局面に入っており、配当や自社株買いなど強い株主還元傾向を鮮明に。これが投資家心理に好影響をもたらしている。

欧州:景気改善もデフレリスク残る

緩やかな景気改善も確認される欧州だが、コアCPIインフレ率は低下傾向が続いている。インフレ期待の低下は実質債務負担を増大させ、景気悪循環を招く危険性も。

新興国:引き続き米国の金利動向を注視

数年にわたる低利の与信で債務残高(対GDP比)が急拡大。ソフトランディングというシナリオを見込むのは容易ではない。

日本株市場:長期上昇トレンドを志向

日本株市場は今まさに、バブル崩壊以降続いた下げトレンドからの大きな転換期を迎えている。この先はデフレ脱却の進展に伴ってトレンド転換を果たすだろう。

fig3日経平均やTOPIXは長年続いた上値抵抗線の突破を年初に試してはね返されたが、各種マクロデータの中にも「バブル崩壊以来初めて」という改善度合いを示すものが表れており、実現も近そうだ。日銀短観の13年12月調査で中小企業の業況感DIが、1992年以降初めて製造業と非製造業ともにプラスとなった。有効求人倍率は今年5月に1992年以来の最高水準に上昇。建築着工の工事予定額単価は今年3月以降、こちらも92年以来の水準を回復している。

なぜ割安に据え置かれているのか?

例えばTOPIXのPERは80年以降で初めて欧州株を下回っている。日本株は「消費増税の影響を見極めづらい」「企業業績が減益予想からスタートしたため買いづらかった」などの理由で年初より軟調が続いた。企業の業績予想の上方修正が相次ぐなどモメンタムは良好。にもかかわらず上値が重いのは、これまで海外投資家による短期売買が主流だったことに起因するだろう。彼らは日本のファンダメンタルズの詳細よりも、グローバル規模でのマクロ経済によるセンチメントに反応しやすいとの日本株の特徴を利用して、リスク・オンの際には出遅れ気味の日本株に短期資金を振り向けるといった行動を続けてきた。

海外依存から「国内投資家」主体へ

そんな日本株だが、今後は長期投資家のための市場へと変化することが期待されている。安倍政権が取り組むコーポレート・ガバナンスの強化は、日本の「稼ぐ力」を取り戻すことを目的とする。企業と投資家が望ましい関係を構築することで、資本効率と企業価値の向上を実現。投資家が株式市場でバイアンドホールド(買い持ち)によって運用益を上げられるような市場の構築を目指す。

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