世界・アジア資産運用業界の現状と見通し(後編)

概 況


ファンド販売の新しい取り組み

PwCルクセンブルク法人 パートナー、マーケテイング・リーダー、
グローバル・ファンド・ディストリビューション・リーダー
ジョセ・ベンジャマン・ロンレ氏に聞く

 

ジョセ・ベンジャマン・ロンレ氏

ジョセ・ベンジャマン・
ロンレ氏

前編に続く、世界およびアジアの資産運用業界についての現状と今後の見通しなどについてPwC(プライスウォーターハウスクーパース)の専門家に聞いた後編は、ジョセ・ベンジャマン・ロンレ氏と、前編のジャスティン・オング氏(PwCシンガポール法人 パートナー、PwCアジア・パシフィック資産運用リーダー)が再登場。

クロスボーダーファンドの普及

ゲームチェンジャーの2つ目として、国境をまたいだファンドのクロスボーダー販売の進展が挙げられる。今日、欧州では、欧州域内の共通のファンド・プラットフォームとして、世界に先駆けてUCITSが導入されている(UCITS:EU=欧州連合=が1985年に導入した投資信託に関する統一ルール)。UCITSは制度導入から相当の期間を要したものの、投資家保護と運用の柔軟性について改善を図りながら今日の発展を迎えた。アジア地域においてもUCITSに似たものとしてオーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、韓国が進めているアジア地域ファンドパスポートの創設のほか、参加国ファンドの相互承認など、複数のクロスボーダーファンドの取り組みが進展している。アジア版のクロスボーダーファンドの普及にはまだ時間がかかると思われるが、アジアにおけるファンド普及のためにも、またUCITSなどほかの地域のファンドとの懸け橋的な役割を果たすためにも、今後ますますの取り組みが期待されている。新しい取り組みによって世界各国のプレーヤーが、構造の面で、税務の面で、規制の面で長期的な安定が期待できることが重要である。

報酬体系の変革

ゲームチェンジャーの3つ目として、大きな変革が期待されているのが、ファンドの報酬体系である。イギリスでは、2012年12月にRDRが導入され、資産運用会社から投資アドバイザー(ファンド販売業者)へのコミッション手数料の支払いが制限された (RDR:Retail Distribution Review――英国の消費者向け金融商品の販売方法に関する改革)。すなわち、投資家は、資産運用会社および投資アドバイザーそれぞれに運用報酬とアドバイス手数料を直接支払うことになり、資産運用会社から投資アドバイザーへの支払いという形での報酬の受け渡しはなくなる。これにより資産運用会社および投資アドバイザーは、従来以上に投資家の利益を最優先したファンドを提供することが期待されている。同様の取り組みは欧州各国で普及しつつあり、2020年にはおそらくヨーロッパを超えて、グローバルで普及するであろう。資産運用会社においては、ファンドの商品設計、販売戦略に大きな影響を及ぼすことが予想される。

パッシブ運用とオルタナティブ運用の拡大

ゲームチェンジャーの4つ目として、注目しているのがパッシブ運用とオルタナティブ運用の拡大である。パッシブ運用はETF(上場投信)やほかのインデックス追従型のファンドを含む。また、オルタナティブ運用は、主にヘッジファンドのほか、プライベート・エクイティ・ファンド、不動産投資などを含む。2012年における運用資産残高全体63.9兆ドルのうち、アクティブ運用は50.2兆ドル、パッシブ運用は7.3兆ドル、オルタナティブ運用は6.4兆ドルと、シェアはそれぞれ79%、11%、10%であった。2020年においてもアクティブ運用が66兆ドルと運用資産残高全体101.7兆ドルの過半を占めるものの、パッシブ運用は22.7兆ドル、オルタナティブ運用は13兆ドルとシェアにおいて、それぞれ22%、13%に膨らむと予測している。パッシブ運用の主力商品として、特にETFに関しては既存商品と比べても低コストであるということから、運用資産残高は現在の1兆8,000億ドルから2020年には6兆8,000億ドルと、著しい増加が見込まれている。

販売については、おそらく新しいファンド・プラットフォームが構築されるようになるだろうと予想している。これは販売コスト削減圧力が大きくなることが見込まれるからだ。大規模なファンド・プラットフォームはオープンアーキテクチャータイプのプラットフォームになるとみている。

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