「インド」セミナー開催 モディ新政権誕生、改革の期待高まるインドの現状と今後 イーストスプリング・インベストメンツ

概 況


クリシュナ・クマール氏

クリシュナ・クマール氏

イーストスプリング・インベストメンツ(シンガポール)リミテッド
クリシュナ・クマール氏

日本最大級のインド株式ファンド「イーストスプリング・インド株式オープン」の主要投資対象である「イーストスプリング・インベストメンツ・インディア・エクイティ・オープン・リミテッド」のファンドマネジャー、クリシュナ・クマール氏がこのほど来日。インドの経済や株式市場の見通しなどが語られた。

インドの代表的な株価指数であるSENSEX指数はナレンドラ・モディ新政権の誕生を受けて、6月5日に終値ベースで2万5,000ポイントの大台を突破した。確かに足元では急激な上昇が続いたが、世界はインド株式市場にアベノミクス相場の再来を期待している。今はまだ、大きな上昇相場の入り口にすぎない。

加えてモディ首相は8月に来日を予定しており、その際には多方面でのメディア露出が想定される。先んじてインドの現状を理解することは今後の投資戦略の策定に有効だろう。

10年ぶりの政権交代が意味すること

インドでは4月から5月にかけて実施された総選挙の開票が5月16日に行われた。結果、モディ氏が率いる最大野党のインド人民党(BJP)が圧勝。総議席数545議席の過半数を超える280議席以上を獲得した。単一政党が過半数議席を獲得するのは1984年以来30年ぶり。

世界が注目する安定政権の誕生は2つのことを意味する。1つは「若者の支持」。もう1つは「公約実現性の高さ」だ。

今回の投票率は66.4%と過去最高を記録した。そして有権者数約8億1,400万人のうち3分の1が29歳未満の若者だった。前回選挙以降で1億人が新たに有権者(18-22歳)となり、彼らが変化を求めたことが強い政権の発足につながった。モディ政権が掲げる公約が支持された結果であり、公約は多岐にわたるものの強力な政権の誕生により、前連立政権時代に滞っていた多くの改革が、今後は急ピッチで進むことが期待されている。

国民はモディ首相の手腕に期待

主な公約は「インフレの悪循環を断つ」「インフラ整備」「雇用創出」など。そしてモディ首相は「最小限の政府による、最大限の統治」を目指しており、インド国民は彼の手腕に期待している。

グジャラート州首相を2001年から13年間努めたモディ氏。大胆な経済改革と大規模なインフラ整備を行った結果、同州の1人当たり実質GDP(国内総生産)成長率は全国平均を大きく上回る。インドの公的セクターは大部分が赤字なのに対して、同州の公営企業は01-02年に270.2億ルピーの損失を出したものの、12-13年には404.1億ルピーの利益を出せるまでに再生した。

モディ首相は経済成長のためにインフラ整備が欠かせないと考えている。グジャラート州首相時代には電力セクターの改革を進め、発電所建設にかかわる許認可をスムーズに進めることに成功して、発電能力は01年の8,756メガワットから12年には2万2,257メガワットへと2.5倍に拡大した。インド全体で深刻な電力不足が続く中、同州では24時間供給を可能にしている。

マクロ面の支援/インフレ抑制

インドはここ数年、不況にもかかわらず物価が上昇するスタグフレーションのような状況にあえいでいたが、インフレ抑制傾向が鮮明に。これまで10%前後で推移していたCPI(消費者物価指数)上昇率が足元では8%程度に急低下している。政府は玉ねぎやじゃがいもの輸出価格を上げて国内消費に向くよう仕向けたり、備蓄を放出することで、国民の「インフレ期待」を抑えることに注力している。

インドの高成長を日本が享受

インドが次の成長の波に乗るにあたって、日本がカギになる可能性は高い。デリーとムンバイとの間に貨物専用鉄道を敷設して周辺に工業団地や発電所、道路、港湾、商業施設などを整備するデリー・ムンバイ間産業大動脈(DMIC)など、インドでは第12次5カ年計画により16年度までに総額約100兆円規模のインフラ投資が計画されている。中でもDMICは日本が提案したプロジェクトということもあり、資金調達においてもその大部分を日本が担うほか、実作業では多数の日本企業の参画が期待される。

インド経済/株式市場の見通し

先述したように単一政権が過半数議席を獲得するのは30年ぶり。前回は総選挙前と比較し株式市場が8カ月で100%を超えて上昇した経緯があり、今回も同様の大幅上昇が期待される。加えて2月以降は海外機関投資家の資金フローに増加が見られるなど、投資マネーのインド回帰が確認されている。

インドの今年、来年のGDP成長率は6%ほどが予想されているが、これにはモディ首相の改革は含まれていない。モディ氏が進める改革により長期的には2ケタ成長が期待されており、当社では、当面はディフェンシブ銘柄に押されていた景気敏感株に投資妙味があると考える。

短期的リスク/7月予算案に注目

7月10日にも予算案が提出される予定(セミナー開催6月20日現在)で、世界の機関投資家たちはこの内容に注目している。インドは財政赤字を抱えている上にGDPの伸びがまだ低いことから、政府は歳入を増やす方策を打ち出すことが予想される。短期的な痛みを耐えることで中長期的な成長を享受できるわけだが、予算が想定以上に厳しいものとなった場合には、一時的にボラタイルな展開も。

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