投資家行動に大きな変化見えず インベスコ・アセットマネジメント

概 況


佐藤秀樹氏

佐藤秀樹氏

投信業界の動向、6つの仮説を立てて検証

社長兼CEO 佐藤秀樹氏語る

インベスコ・アセットマネジメントは独自に昨今の投資信託業界の動向を調査して、6つの仮説を立てて検証した。その調査を通じて明らかになった投資家像とは。同社社長兼CEO(最高経営責任者)の佐藤秀樹氏が語った。以下はその要旨。

2013年という年は明らかに投信販売にとって転換点となった。10年後、20年後に振り返ったときに13年は投信販売の完全な転換点と位置付けられるかもしれない。それは証券優遇税制の終了やNISA(少額投資非課税制度)開始だけが理由ではない。販売会社の姿勢が変わっていったことが大きな動きだった。

一方で投資家の動向はどうか、よく見ていかないといけない。当社は、6つの仮説を立てて検証し、投資家像をプロファイリングした。

まず「グレートローテーションは起きたか」。投資信託(株式投信)では、13年1年間で4.6兆円のネット・フローが起きたが、そのフローはどこからきたのか。13年の資金運用・調達額はプラス30兆円で、うち現・預金は+19.7兆円、債券は-2.5兆円だが、満期償還などを含めた数字であり、これ自体はそう大きくなっていない。投資信託全体では+8.3兆円、株式・出資金は-7.4兆円など。預金を解約して投資信託へ振り向けていく動きは小さく、むしろ従来持っていた債券の満期償還や株式の利益確定から生み出された資金が投資信託に流れたと考えたほうが自然だ。それでは債券から株式に流れたのか。株式の値上がり益を取りにいく目的でのグレートローテーションという意味で、REIT(不動産投資信託)や海外株のファンドを購入したかといえば、私の見解はノーだ。

投資信託の年間資産別ネット・フローでは、国内株式は+2.6兆円と久しぶりのプラス、REITは+1.6兆円と増えたが、個人のキャッシュフローの動き方は従来と変わっていない。

国内株式ファンドをアクティブ、パッシブ、ETF(上場投資信託)別に月間残高のパターンを見ると、アクティブで13年4、5月に大量に資金が入った。これは12年11月からのアベノミクス相場の上昇を見て資金シフトしたことが明確だ。しかしそれ以降、残高に変化はない。これに対しETFは毎月コンスタントに資金が流入している。ここには機関投資家や外国人からの資金流入も含まれているので、個人投資家の動向を見ていく場合には注意が必要だが、これはアクティブというより、ETFの安い金額で収益を狙うチープベータを取りに行っていることを示している可能性がある。これはマーケットタイミングをとらえて売買することを意味する。一概には言えないが、ETFの投資家は長期投資を考えているわけではなく、安い金額で収益を狙う、ベータプレイをしたいという側面もあるのではなかろうか。もしこのような側面があるのだとすれば、グレートローテーションが起きていないことにもつながってくる。「日本株アクティブファンドは売れたか」はノーだ。

「投資信託のIPO(新規上場)市場は活気づいたか」もノーだ。13年を転換の年としたのは、次の数字がはっきりと示している。873本という驚異的な数の新規設定があったにもかかわらず、設定金額が1000億円以上となったのは、わずか3本にすぎない。それも年前半に限られている。明らかに方向転換の1年だったことを示している。こうした動きは今年も継続している。投資信託のIPOの時代が終わったと語る販売会社の方もいらっしゃる。

「高分配ファンドは好まれなくなったか」もノーだ。毎月分配型はネット・フローとして13年も強かった。NISAでも毎月分配型が売れている。13年12月に証券優遇税制が終了して、税金が20%に戻った。同じ分配金でも、受け取る金額は減ってきている。そこで14年1月から投資家は投資額を積み増している傾向がうかがえる。少なくなった分配金を埋め合わせる必要があるからだ。13年のキャッシュフローのトップ20位を見ると、毎月分配型がうち17ファンドを占めている。しかも設定5年以上のファンドが8ファンドランクインしていることは注目すべき点と考えている。これは、設定してある程度時間が経過して、分配原資があることが必要とされるからだ。昨年売れていたのは毎月分配型ということが明らかだ。外国株やREITを組み込んだファンドに投資をしていたのは、ベータの部分の値上がり益を考える以上に、分配ということをより考えたからではないか。これも日本でグレートローテーションが起こっていない根拠の1つだ。今年も変わっていない。毎月分配型が主流だ。ただし主役が変化し、分配率が高いファンドに資金が向っていることがうかがえる。ここにも足りなくなった分配金を埋めるために分配金の高いものに流れているという現状が見て取れるのではないか。

また当社は毎月分配型をスタンダート型と通貨選択型などに分けているが、通貨選択型などが1.7兆円もある点は驚いた。ここには日本株も含まれている。日本株のアクティブファンドを購入した投資家も、高い分配金が出るということを意識した上での投資だったのではないか。13年の毎月分配型ファンドキャッシュ・フローのトップ20のうち設定が5年以上経過したファンドが10ファンドランクインしている。分配原資が貯まった結果、より高い分配が可能となったからだ。設定5年未満のファンドは主に通貨選択型などに人気が集まっている。「通貨選択は下火になったか」「トラックレコードの長いファンドは日本では売れないのか」はともにノーだ。

投資行動から読み取れるキーワードは何か。現在の投資家に何が起きているのか。1つ目はよりシンプルなファンドへの回帰、2つ目はリスク回避、3つ目はより保守化する投資家像が浮かび上がった。これらのことから、投資家の投資行動に大きな変化を読み取ることはできず、「投資家の姿勢に変化の兆しが見えつつあるのでは」という一般的な認識とは相違した結論が導き出された。

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