グローバル投資家の投資戦略(上) 当面は戦略的というよりも戦術的な方針

概 況


岐路に立つ政策決定者たちの存在が背景に

BNYメロン銀行 マネージング・ディレクター サマルジット・シャンカ氏が語る

サマルジット・シャンカ氏

サマルジット・シャンカ氏

資産運用と証券サービス、為替サービス分野の世界的なリーダーである米国のBNYメロン銀行(本店はニューヨーク)のマネージング・ディレクターであるサマルジット・シャンカ氏がこのほど来日した。同氏はグローバルマーケッツ部門のストラテジストとして、日本を含む先進国から新興国市場まで、外国為替、現物株式、債券などについて幅広くウオッチしている。サマルジット・シャンカ氏は、普段はボストンに在勤、カストディ(証券の保管・管理)のフローについて日々、マクロの分析を行っており、おカネがどこからどこに流れているのか、どういうアセットクラスに流れているのかなどについて常にリサーチをしている。それに基づいて、今回、アジアでの現状のおカネの流れなどについて語った。

■世界の投資環境

現在、世界経済の回復は非常にデリケートな形でバランスが取れていると考えている。例えば、先進国では景気回復のスピードがそれぞれ違っている。また、新興国は課題を抱えている。全般的に見ると、政策決定者たちは岐路に立たされているということだ。こうした背景があるため、世界の投資家の方々は非常に重要な決断をしなくてはならないと感じている。債券にするのか、株式にするのか、またあるいはどの通貨にするのか、ということを決めていかなくてはならない。アロケーション(資金配分)をする際に、アメリカのQE(量的緩和)が継続していくのかどうか、また継続していくということを前提にしていけばいいのか。例えば、新興国ならどこの新興国なのか、先進国なのか。どこの国に入れていくのか。実際のトレードを見ても投資家の方々は慎重に選別を図っている。こうした状況にあることで、投資戦略も、戦略的というよりも、戦術的な方針を採っている。要するに長期的な投資決断をするのではなく、あくまで短期的に、そして柔軟性を持った決断をしていると考えられる。

■「iFlow」で知るお金の流れ

どうして、こうしたことが分かるのかというと、われわれは日々27兆㌦の資産を管理させていただいているからだ。中央銀行であれ機関投資家の動向であれ、ヘッジファンドであれ、年金であれ、企業であれ、私たちはおカネの動きを見ることができるわけだ。だからおカネを動かすとき、戦略的であれ戦術的であれ、あるいは債券に入れるか株式に入れるか、どこの通貨に入れようかといったことを実際に動かした時に、私たちは8時間のタイムラグでモニターすることができる。こうしたデータというのは質が高いということで、IMF(国際通貨基金)も、BIS(国際決済銀行)なども、世界の資本の分析のソースとしてわれわれの「iFlow」を使っていただいている。

■最近の面白いトレンド

今、市場では面白いトレンドがいくつか見られるのでそれを紹介したい。2013年5月に当時のバーナンキFRB(米連邦準備制度理事会)議長が初めてテーパリング(量的緩和縮小)という言葉を口にし始めたが、その3週間ほど前にアメリカのトレジャリーが大きく売られた。しかし、昨年後半から債券市場へとおカネが戻ってきている。海外の国際的な投資家もアメリカの株式については利食い売りに動いている。これは私たちの観察だが、コンセンサスとは違って、私たちの見解では、株式ではなく債券に投資しているのではないかと考えている。

■欧州への資金シフトが生む複雑な状況

グローバルな株式の運用者の方々は、アメリカからおカネを引き出すと、どこに持っていくかというと、普通はヨーロッパに持っていく。現在、ヨーロッパで株式相場がかなり上がっているというのは、実際の株式指数を見てもそうだが、われわれのiFlowのデータを見てもヨーロッパの株式におカネが流れていることが分かる。ヨーロッパは現在、状況がかなり落ち着いてきたし、高い流動を求めて投資家がおカネを投じていることが見受けられる。このようにヨーロッパにおカネが流れていることは、これが株式と同じように、ユーロという通貨のサポートともなっており、そうすると、ECB(欧州中銀)としては何とかデフレに対応しているというのに、彼らがやろうとしている政策に対しては複雑な状況を生んでいるということになる。

■日本は当面様子見

iFlowを見ると、非常に面白い動向が日本について見られる。トピックは先進国でも第1四半期は最悪のパフォーマンスを示していた。しかし、昨年第4四半期には日本の株式市場におカネが流れ始めていた。ドル円に関しては両方の方向に投資行動が見られており、その結果、日本の株式は上昇が止まっているといった格好となっている。また、われわれの顧客や投資家の方々に聞くと、日本に関してはもう少し具体的な改革の兆候を見たい、安倍首相の「3本の矢」すべてがうまく動いているということを見たいと話していた。

■世界の当面の展望

まとめると、アメリカについてはこれからもQEは続いていくと考えられる。少なくとも低金利は続き、15年下半期までは利上げはないと考えている。これからテーパリングが続けていくにしてもうまく管理しながら行っていくだろう。これに対してECBの場合は、彼ら自身もQEをしたいと思っている。日本に関しては4月に消費税を引き上げたこともあってしばらくは様子見ということになろうが、7月ごろには第2段階のQEがあるかもしれない。先進国全般で見ると金利は低めと考えられ、そうなると、投資家はさらに高い利回りを求めて、若干質の高い資産に移すか、あるいは新興国におカネを持っていくということになるとみている。

■日本の金融政策

日本の追加緩和の有無については、その時の経済指標がどういう状況であるのか、どういう指標が出てくるのかによる。例えば、インフレに関しては現在1.3%だが、それが上昇して、ターゲットとされている2%に向かうのかどうか、もしそうなれば、日銀としてはこれ以上の金融緩和をしないということの正当化ができるわけだ。そして、もう少し具体的に、中期的な財政改革の進捗を見ていかなくてはならないし、3つ目の矢である構造改革の進捗(しんちょく)を見ていくことになる。日銀が何をどうするかといことについては、全体を見ながら判断していくしかないと考えている。

インフレ以外に成長率がどうなるのかも重要なカギとなる。GDP(国内総生産)に対して消費税のどのようなインパクトがあるのかということを見ている。第2四半期GDPのコンセンサス予想は▲3.5%となっているが、もし、これよりもっと良い数字が出るとすれば、追加緩和をしないという正当化ができるかもしれないが、われわれ投資家、あるいは政策担当者が考えるのは当面様子見といえる。

BNYメロンの日本での取り組み

BNYメロンは1970年に東京にオフィスを設立し、日本での事業を開始しました。以来、強固なビジネス基盤を築いている。以下は2000年台に入ってからの日本での動き(同社ホームページから)。

2006年 バンクオブニューヨーク証券株式会社(現・バンクオブニューヨークメロン証券 株式会社)を設立
2006年 GWセレクト・ファンド(愛称)“ベストナイン”を大手証券会社向けに設定
2007年 トライパーティレポにおける日本初の担保管理者
2008年 日本のヘッジファンドとプライベートエクイティ会社向けに総合的な事務管理 サービスを開始
2008年 著名なグローバル・カストディアン誌の調査で、アジアにおけるグローバル・ カストディアン・ランキング第1位
2008年 日本企業35社のスポンサードADR預託銀行となり、日本でのマーケットシェアが55%に達する
2009年 日本有数の証券会社に対し、総合的な米国証券決済サービスを構築
2009年 法人信託部門(現・ニューヨークメロン信託銀行株式会社)の買収完了
2010年 初の銀行窓販用ファンド“グローバル・ハイイールド・ボンド・ファンド”を設定

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