アライアンス・バーンスタイン セミナー 年金運用の新潮流「マルチアセット戦略」現状と課題

概 況


投資環境が目まぐるしく変化する中で、一部の年金基金が関心を寄せる「マルチアセット戦略」。幅広い分散や機動的な資産配分を通じて安定的なリターンの獲得を目指す運用戦略だが、年金運用の世界ではまだまだ認知度は高くないようだ。米国本拠の資産運用会社アライアンス・バーンスタインは4月4日に東京丸の内で「マルチアセット戦略」セミナーを開催。事前に行われた調査結果を踏まえて、年金基金の導入状況や活用例などが語られた。

マルチアセット戦略の評価とその活用例

後藤順一郎氏

後藤順一郎氏

アライアンス・バーンスタイン未来総研
ディレクター/DC推進室長
後藤順一郎氏

「マルチアセット戦略」とは

当社の定義に基づけば、マルチアセット戦略とは「複数資産を、基本的にはロングオンリーで運用し、リスク管理目的での機動的な資産配分を行うことで、安定的な収益を追求すること」。つまり、年金基金が日ごろ実施している戦略である。

日本ではまだ歴史が浅い戦略だが、英国では2000年のITバブル崩壊を契機に認知が広がった。市場環境の悪化を受けて、年金基金の債務について時価評価が導入されて以降、運用部分についても見直し機運が高まったことが背景。年金基金のバランスシートを「収益追求部分」と「負債対応部分」とに分類、収益追求部分に対するソリューションとして、規模が小さく分散投資が困難な年金基金を中心に普及した。

「リスク重視」で高効率投資を実現

ところがマルチアセット戦略はその後、リーマン・ショックを乗り越えることができなかった。分散が効いているはずが、フタを開ければ株式との連動性が高い商品に投資していたため、想定以上にボラティリティーが増大してしまったのだ。

これら経験を踏まえて、平均分散アプローチの欠点を補い、実質的に分散できる「リスク重視アプローチ」が出現。当社では変化に強いツールとして注目している。

ただしリスク配分をパリティー(均等)とすると効率的ではない可能性がある。シャープ・レシオが低い資産へのリスク配分を少なくするといった「意図的なリスク配分」とすることで、全体の投資効率が改善する傾向が見られる。

「機動的な資産配分」は有効か?/ダウンサイドリスク回避の重要性

マルチアセット戦略でいうところの「機動的資産配分」は、リターンの獲得ではなくリスクの引き下げを目的とする場合が多い。ボラティリティーはいったん高まるとその後少なくても12カ月程度は持続する傾向が見られることからも、リスク予測のほうがリターン予測よりも容易だといえる。

図1

図1

なにより、大きなマイナスを減らすことの効果は絶大だ。ほかの条件を維持したまま過去のテール・イベント発生頻度を3分の1、2分の1に減らしたと仮定すると、資産額はそれぞれ7倍、20倍に拡大する(図1)。

今後の課題

リスク配分は結果的に債券の割合が高くなる傾向があるため、過去の金利低下局面における実績は良好だった。ところが現在は金利が最低水準に近く、債券の株に対するクッション性が低下してしまった。
とはいえ、相関係数が正に近づいたとしても、相対的には株より債券の方が下落幅は抑えられる。無論、過去の実績に基づく“期待”は多少割り引く必要はありそうだが、「マルチアセット戦略」は今後も引き続き有効と考える。

年金運用にとってのマルチアセット戦略
 「2014マルチアセット戦略についてのサーベイ」からの考察

矢野高文氏

矢野高文氏

アライアンス・バーンスタイン未来総研
エグゼクティブ・アドバイザー
矢野高文氏

問1「マルチアセット戦略を採用しているか?」
……肯定派と否定派が均衡

「採用する予定はない」との回答が53%だったのに対して、「採用している」が31%、「採用を検討している」は15%だった。「採用している」との回答者のうち4分の3が13年度中に開始。最も早いケースでも11年度中だった。

問2「採用した(検討する)理由は?」
……「機動的資産配分に期待」が最多

図2

図2

「機動的資産配分に期待」との回答が26%と最多だった(図2)。リーマン・ショックで大きな危機を経験するも、株式などのリスク資産ウエートを思うように引き下げられなかったなどの理由から、この先も大きな市場変動を予測して適時対策をとる必要性を感じている年金基金が多いようだ。次いで「絶対収益志向だがヘッジファンドと比較して投資しやすい」が18%とのことで、「低報酬」「情報透明性」「流動性の高さ」なども好感されているようだ。

「債券代替で安定収益確保」との回答も14%あった。金利が歴史的な低水準から徐々に上昇に転じることが想定されるなど不安定な環境にもかかわらず、債券投資を維持したいとのニーズが依然として高いといった状況が読み取れる。

問3「配分比率はどの程度(予定)するか?」
……「5%未満」が3分の2、現在は「お試し期間」

効果を上げるにはある程度のウエートが必要だが、マルチアセット戦略の配分比率を「0―5%」とする回答が63%と圧倒的だった。「5―10%」17%、「10―15%」8%と続き、「20%以上」はわずか1社にとどまった。

問4「採用しない(やめた)理由は?」
……「仕組みが複雑」「年金運用にはふさわしくない」

「仕組みが複雑で理解できない。説明責任が果たせない」との回答が16%、続いて、バイアンドホールドを基本とする年金基金にとって「機動的資産配分はふさわしくない」との回答が14%だった(図3)。当社が定義するマルチアセット戦略が、売り持ちも活用するヘッジファンド的運用ではなく、基本的には、年金運用と同様に、買い持ち主体で、機動的に資産配分を変更し、収益安定化を狙う運用であるにもかかわらず、別の質問でマルチアセットの定義を聞いたところ、買い持ちのみにとどまらないヘッジファンド戦略についてもマルチアセット戦略だと考えている年金基金が40%程度存在しており、顧客側でも、マルチアセット戦略の定義が固まっていないことがうかがわれる結果だった。

「採用する金額が小さいとポートフォリオ全体に与える効果の有無が疑問(11%)」としながらも、一方では「採用する金額が大きいと、1つの運用会社に依存しすぎる(7%)」との回答も。中には「昨年採用したが期待した成果が上がらずやめた」との回答も1件あった。

サーベイまとめ:戦略普及のための課題

図3

図3

実績期間不足もあり、機動的資産配分の重要性などマルチアセット戦略の根幹ともいえる投資手法について、いまだ納得できていない年金基金が少なくない。まずは低いウエートから実験的に導入、といったケースが現時点では主流のようだ。

加えて、マルチアセット戦略をどのアセットクラスに分類すべきかで頭を悩ませるケースも多い。当然ながら株式や債券といった既存のアセットクラスにはなじまず、現在は大半がオルタナティブ枠に分類するものの、従来の政策アセットミックス(資産配分計画)とは整合性がとれず社内の説得が難しいとの声も聞かれた。

「2014マルチアセット戦略についてのサーベイ」調査概要
対象:約150の基金や団体
時期:2014年2―3月
回答者数:59
回答者の属性:企業年金基金46、厚生年金基金5、各種団体8

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