日本FP協会「投資信託お役立ちサイト」を開設 中立的立場から生活者の生活設計の視点でより実際的に

概 況


投信協会のサイトと一体で活用期待

伊藤宏一専務理事

伊藤宏一専務理事

専務理事・CFP(R) 伊藤宏一氏に聞く

特定非営利活動法人 日本ファイナンシャル・プランナーズ協会(日本FP協会)はこのほど、CFP(R)・AFP(ファイナンシャル・プランナー)が中立的立場から、Q&A形式で分かりやすく解説する「投資信託お役立ちサイト」を開設した。投資信託の利用・選択に関して中立的な立場から実践的に指南するウェブサイトとなることを目指している。今回立ち上げに至った経緯や意義、サイトの特徴などについて、日本FP協会専務理事・CFP(R)の伊藤宏一氏に聞いた。

■開設の経緯と背景

2008年のリーマン・ショックの後、日本国内では金融教育は下火になった。ところが、国際的に見るとリーマン・ショックで多くの人がお金で被害を受けたため、金融教育を強化しなければならないとの声が世界中から上がった。そこで、OECD(経済協力開発機構)/INFE(金融教育に関する国際ネットワーク)は、12年4月に「金融教育のための国家戦略に関するハイレベル原則」を作成し、同6月G20ロスカボス・サミットで承認された。これを受けて、金融教育を国のレベルで実現していくという流れができた。日本では12年10月から金融庁金融研究センターが金融経済教育研究会を立ち上げ、日本の新しい金融経済教育の骨格について私や日本FP協会も参加して半年間議論を行い、その結果、13年4月30日に「金融経済教育研究会報告書」として公表された。これは、最低限身に付けるべき金融リテラシー4分野15項目を中心に構成され、日本の金融経済教育をレベルアップするための質的な転換点となる内容となっている。金融経済教育は、2000年代になってから「貯蓄から投資へ」と言われたが、実際はどうかというと、知識ベースでの投資教育に焦点が当てられていた。ところが今後は、金融知識と共に適切な金融行動を重視する視点を基本に4分野15項目が基本的な金融経済教育の枠組みとなる。4分野は「家計管理」「生活設計」「金融知識及び金融経済事情の理解と適切な金融商品の利用選択」、相談など「外部の知見の適切な活用」となっている。まず家計管理をしっかりと行い、中長期の生活設計を立て、次に金融取引の法律的理解やインフレ・デフレ・複利などの基礎知識を身に付け、保険、ローン、資産形成といった分野の知識をしっかりと理解する。最後にFPに相談することも含めて外部の知見を活用することで、適切な金融行動が図れるようにする。つまり単に知識だけでなく、実際の金融行動が適切になるようにすることが目的である。こうした枠組みに基づいて、昨年6月に金融経済教育推進会議が金融広報中央委員会を事務局として設置され、当協会を含め、金融庁、消費者庁、文部科学省、全国銀行協会、日本証券業協会、投資信託協会等の団体と有識者が参加して、実際にこれを推進していくことになった。それまでは金融広報中央委員会で金融関連団体が年1回、懇談や情報交換をする場はあったが、具体的に連携して行動することはなかった。今回初めて一堂に会して連携することになり、実際に金融経済教育を前進させるための会議体が生まれたことになる。この会議の重要な柱の一つとして、投資初心者向けの「投資信託のサイト」を日本FP協会のサイト内に作ることが決まり、日本FP協会、投資信託協会、金融庁が全体の方針に沿った形で作業を進めてきて、本年3月26日に当サイトを開設した。それ以外にも、国民版の金融経済教育スタンダードを作ることも決まり、今年6月ごろまでに発表される予定だ。

■設置の意義

投資信託に関する中立的なサイトを解説することにはいくつか意味がある。その一つは長期的な資産形成が国民にとって必要になっているということが挙げられる。そのためには、一定のリスクをとって一定のリターンを得られるような金融商品で運用していくことが求められている。背景には少子高齢化、公的年金や公的医療保険など社会保障制度が財政的に厳しく削減傾向にあり、自ら資産形成を行っていくことが今の日本国民にとって非常に重要となっているということがある。そこで、4分野15項目の中では、資産形成として位置付けられ、その際、投資対象が分散され積立で時間分散も可能な投資信託が、生活者にとって資産形成の入口の商品としてふさわしいという見方で一致したため、今回、投資信託を紹介しようということになった。

■独自性と強み

投資信託の紹介サイトはさまざまにあるが、1つ目として、民間で運営しているサイトは、金融機関の広告掲載などの関係から必ずしも中立的とは言えない場合がある。2つ目としては、投資信託に関する知識は解説され、投資信託を選ぶ際の評価基準も示されているが、実際に生活者が選んだり、保有したりする時の具体的な疑問に答えるようなサイトの作り方にはなっていない。その点も今回サイトを作った理由の一つになっている。日本FP協会にはライフプランをベースに資産形成の相談に乗っているCFP(R)やAFPが大勢いるので、こうしたプロの過去のさまざまな相談事例の中で典型的に多いものを選りすぐって、Q&A方式で分かりやすく説明する。単に「投資信託とは」や「投資信託の種類は」「リスクとリターン」などいった知識の習得ではなくて、あくまで実際の生活者の間で起こり得る問題に答える形で質問を設定している。一つのポイントは、投資信託を購入・保有した後、自分は3%や5%のリターンを目標にしているものの、実際どうなのかを検証できるサイトはなかなかない。今回作ったサイトは、投資信託協会の「投信総合検索ライブラリー」とリンクしており、このライブラリーで検索すると、リターン計算ができるようになっている。リターン計算とは、いつ投資信託を購入して、現在まで保有していると、その期間のリターンはどのくらいかが表示されるようになっている。ただし一括投資の場合のみなので、今後はできれば毎月積立ベースのリターンが分かるようになれば良いと思っている。いずれにしても、保有している間のリターンの検証もでき、どう購入するか、手数料はどうか、保有中のある時期に売却した方が良いのか、保有した方が良いかといった判断に関する基本的な考え方などについて、さまざまなアドバイスが展開されているので、この点はほかのサイトにはない特色と考えており、ぜひ活用していただきたい。

いずれにしても、投資信託を初めて購入する人や既に購入して持っているが、何となく不安感を持っている投資ビギナー向けに中立的な立場からFPが実践的なアドバイスをしている。Q&A形式というのは、目の前にFPと生活者が座っていて質問に答えているというイメージで受け止めてもらえればいいと思う。単に勉強ということではない。より実際的な内容といえる。

一般の投資信託サイトは、大半がどの投資信託がいいか、どれを選ぶかという点にとどまっていると思う。それぞれの生活者はリスク許容度も違うし、教育資金が必要か、老後資金が必要かなど資金ニーズも違う。当サイトには、生活者の生活設計からみて、どういう考え方で投資信託を選び保有するかというという基本的観点で書かれてある。その意味でこのサイトは、一般の方に見ていただくのと同時に、金融機関で投資信託を販売している方々にも、コンサルティングをする上で役立てていただけると期待している。

■改良を重ねて一層いい内容に

投資信託は、購入した時から値動きが始まる。そこからさまざまなことが起こり、心理的・感情的にさまざまな疑問がわいてくる。そこをクリアして説明できないと、金融機関のFPの方々の信頼性が弱まる場合もあると思う。投資信託の購入・保有・売却という全体の流れの中で、特に保有についての質問は実際に結構多い。NISA(少額投資非課税制度)も始まったが、税務署のチェックもあり口座を開設するのに時間がかかりその間に株が下がってしまったとか、運用し始めたら下がってしまったとか、消費増税がスタートして運用はどうなるのかなど、絶えず疑問が起きるだろう。本当はそうしたことに答えられないといけない。ある程度チャレンジングだが、当サイトを作って、見ていただく意義はあると思う。投資信託協会のサイトには、ライブラリーの中でリターンの計算ができるほか、分配金など各種データを見ることもできる。投資信託の基本的知識の解説や動画なども入っており、当サイトと両方一体で活用していただければより効果的であると考えている。また今後も改良を重ねて一層いい内容になるよう図っていきたい。

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