日本株相場の展望と投資のポイント 半年間一定レンジでボックス相場へ

概 況


「PER」「成長性」「健全性」の観点から銘柄選択

苦瓜達郎氏

苦瓜達郎氏

大和住銀投信投資顧問 苦瓜達郎ファンド・マネージャーに聞く

日本株市場は今年に入り、方向感に欠く展開。ファンド・マネージャーは現状をどうとらえているのか、どのような見通しを持って投資しているのか。大和住銀投信投資顧問で中小型株運用を中心に手掛ける苦瓜達郎ファンド・マネージャーに聞いた。

■消費増税がアベノミクス効果を打ち消す

――現状認識。

「いわゆるアベノミクス効果は、これまでは為替(円高是正)にとどまっていたが、ここにきてようやく設備投資などにも広がってきた。その効果は上期から下期にかけてもう少し加速しようが、そこからさらなる効果を挙げることは想定しにくい。消費増税や人手不足などを勘案すると、増産環境になく、設備投資もあくまでも更新や新技術対応に限られよう」

■これから半年、ボックス相場

――当面の相場展望。

「株式市場は今年に入りしんどくなっており、ここから買い上がる人はそれほどいないだろう。一方、インフレヘッジを本気で考える人が少しずつ増えてきている。インフレヘッジといっても、外国株や外国債券への投資に二の足を踏む人は多く、そういった人たちの投資対象は日本株や不動産になる。アベノミクス以前に比べるといずれも随分上がったが、少なくとも国債利回り(0.6%)に比べれば割安であり、緩やかな資金流入が続くと考えている。こうした資金が相場を下支えしよう」

「ファンダメンタルズを踏まえると、日経平均など株価指数はこれから半年間、一定レンジでボックス展開が続こう。『1月高値(1万6291円)を抜くのはなかなかしんどい。昨年6月安値(1万2445円)を下回ることはない』――こんなレンジを想定している」

■力技での物価引き上げは間違い

――インフレについてはどうみているのか。

「インフレは建設、運輸、輸入品を中心に起こっている。インフレがここからどんどん広がるかというと、給与動向を考えるとその壁は高いとみているが、本当に広がると、国民生活は大変なことになる。インフレと聞くと、『収入が増えて、お金が回る』というイメージを持つ人が多いが、年金生活者や、時給アップが制度上限定的な介護労働者など、インフレになっても収入が増えにくい人が相当いることを忘れてはならない」

「さまざまな分野でインフレ傾向が強まってくると、まずサービスの質が落ち、その次にサービスが縮小され、最後にサービスそのものがなくなり、このプロセスを経て残った事業者が値上げをすると広く浸透する。裏を返すと、このプロセスを経ず値上げしたものにお金を払う人がどれだけいるのだろうか。今のステージでの値上げは相当リスキーと考える」

「とにもかくにも、“力技”でインフレにもっていくのは間違い。物理には『静摩擦力』『動摩擦力』の原理があるが、物価に関しても力技で引き上げられ本当に動きだすと、止まらなくなる恐れがある。実際はこれが起きると修正の動きも出てこようが…」

■投資着眼点

――今年はなかなか難しい相場になりそうだが。

「今年は『アベノミクスの甘いストーリーが裏切られる年』『安っぽいテーマがすべて裏切られるテーマ裏切り祭り』。アベノミクスなどの文脈で昨年上がり過ぎたものが是正されるとみており、一般に広く知られる円安メリット株などは、慎重に降り時を考えたほうがいいのではないかと思っている。私自身はいわゆる昨年のアベノミクス相場では胸を張れる成績でなかったが、今年は銘柄選択が生きる相場。腕の振るいがいがある」

「投資は本当に安くて実態の良いものを拾うことに尽きると考えており、『PER』と『成長性』、そして『健全性』の観点から銘柄選択を行っている。健全性では、財務体質のほか、事業リスクおよび事業リスクへの対応力など“状況変化への対応力”“経営力”などを見ている。健全性はある程度の期間をもって判断する。会社の良い時、悪い時を知った上で投資先を選ぶと良いように思う」

■注目セクターその(1) 電機

――セクターではどうか。

「セクターでは、市場から最も見捨てられている『電気機器』、そして、『不動産』が面白い。電気機器については、そもそもハードはダメという風潮があり、多くの人がダメ出しをしてきたが、それは先入観にすぎないことが今年、証明されるのではないか。日立マクセル(6810)とジャパンディスプレイ(6740)の上場がその1つの契機になるかもしれない」

――電気機器は先入観から負け組セクターになっているとのこと。イメージしやすいよう参考銘柄を2つほど挙げてほしい。

「参考までに例えば、エスケーエレクトロニクス(6677・JQ)。同社は液晶パネルの製造用原版となるフォトマスクの専業メーカーで、大型液晶パネル用で世界首位。一時期はシャープ不振の打撃を受けたが、ホンハイ(台湾)によるシャープ堺工場買収後、ホンハイからの受注が舞い込み、良い時期を迎えている。中国のスマートフォン(スマホ)メーカーが、ブランドでは闘えないため、スペック勝負に乗り出し、ハイエンドスマホの開発を強化していることもプラス要因。スマホをできるだけ薄くするため、液晶側にタッチパネルを作り込むといった新たなニーズも増えており、仕事に当面困らない状況」

「京写(6837・JQ)も“残存者”狙いの戦略がピタリと当たり、いまや片面プリント基板で世界首位。片面プリントのニーズが最も多いのがLED(発光ダイオード)照明。中でも自動車ヘッドライトの需要が多い」

「日立マクセル、ジャパンディスプレイを含めてこれら4社はリーダーシップが明確であり、自分たちが不得手な分野では闘わず、悪い時は我慢してきた点で共通する。総合型の大型株は業績が悪化すると、どこに手を付ければ立ち直るのか分かりにくいものだが、その点、中小型株はやるべきことがハッキリしており、投資判断も下しやすい」

■注目セクターその(2) 不動産

――不動産関連ではどうか。

「インフレヘッジの文脈から不動産購入ニーズは非常に強いものがあり、不動産価格が上昇。6―7年前の“プチバブル”に近い状態になっている分野もある。ただ、既に不動産を持つ向きはさらなる値上がりを待っているため、取引量自体はそれほど増えていない。少ない開発用地を巡って不動産会社間での用地獲得競争が激しく、開発型企業にとってキツイ状況になっている」

「セクター全体では万々歳ではないが、資産の裏付けのある会社ならば投資を検討してよいのではないかと考えている。もう少し言うと、保有する賃貸用不動産が豊富で、PERがある程度低い銘柄などはいいのではないか」

――イメージしやすいよう参考銘柄を2つほど教えてほしい。

「例えば、京阪神ビルディング(8818)。同社は近年、データセンターに力を入れており、大阪で貸しデータセンターといえば“ここ”といわれる存在になっていると思われる。震災後盛り上がったバックアップブームは収束したが、人手不足感が強まる首都圏に比べて大阪はサーバー管理などの人材を確保しやすいことから、大阪立地のデータセンターへの需要が再び増えている」

「時間貸し駐車場の運営・管理を行うパラカ(4809)。収益が安定している割にパーク24などと比べPERがすさまじく低く、過小評価されていると判断できるのではないか。パラカも賃借型だけでなく、自社保有型も展開しており、それなりに含み益が出ていよう。規模は小さいが、安定・良質なキャッシュフローを持つ会社にしては安いと考えられる」

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